amazarashi/NHKホール

amazarashi/NHKホール - All photo by Victor NomotoAll photo by Victor Nomoto
※以下のテキストでは、演奏曲のタイトルを表記しています。ご了承の上、お読みください。

全国ツアー「未来になれなかった全ての夜に」。ツアー終盤、12本目にあたるNHKホール公演。1曲目は、2014年リリースの2ndフルアルバム『夕日信仰ヒガシズム』の収録曲“後期衝動”だった。地下のライブハウスで芽が出ず、もがいていたミュージシャンが《誰かの言葉で話すのやめた 誰かの為に話すのやめた》と自分の意思を掴み取るまでの道程を歌ったこの曲は、元々フェスへの出演が決まった際に作られた曲であり、当時の視点から「amazarashiとはどういうバンドなのか」が端的に語られている曲でもある。《一体全体、誰だお前は?》という自身への問いかけを経て、「未来になれなかった全ての夜に! 青森から来ました、amazarashiです!」といつもの挨拶へ。そうしてライブは始まった。

amazarashi/NHKホール

amazarashiのソングライター・秋田ひろむ(Vo・G)は内臓から抉り取るようにして曲を書く人であり、彼の綴る言葉には「リアル」という言葉では片づけられないほどの生々しさがある。今回のセットリストでは、なかでも特に彼自身の体験をノンフィクション的に綴った曲が要所要所に配置されていた。言い換えると、amazarashiというバンドの芯に迫るようなライブであり、その生々しさの濃度が過去最高レベルだったということだ。秋田自身はこのツアーのことを「昔を振り返るライブ」、「昔では歌えなかった言葉を歌っている」と表現。また、“ヒーロー”までの3曲を終えたあと、「今日に至るまでいろいろな夜があったはずです。いろいろでは済まされない一つひとつを詳らかにするために歌いに来ました」とも話していた。

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例えば中盤では“さよならごっこ”、“それを言葉という”、“アイザック”と最新シングル収録曲が続けて演奏されたが、それらの間に配置された“光、再考”も強い存在感を示していた。“光、再考”はインディーズ期の作品にも収録されている、amazarashi黎明期から存在する曲。秋田と豊川真奈美(Key・Cho)の二重奏に始まり、途中で加わるバンドサウンドが彩りを添え、アウトロでは秋田の絶唱を機にアンサンブル全体が一層白熱し――というアレンジが、「0から1になるために音楽と言葉を用いた」、「地元の仲間の支えによって1から10になった」、「10から100になる頃には気づけば理解者がいた」と語られたamazarashiの成り立ちそのものを表現しているようで思わずグッときてしまった。

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“季節は次々死んでいく”ではツインギターが同時に鳴らすコード、それをきっかけにして巻き起こる嵐のような音の渦が、この日秋田が繰り返し言っていた「始めるために終わらせる」ことを体現していた。“命にふさわしい”では「心さえ」のリフレインがどんどん力強くなっていった。「若くして死んだ彼は僕にとって青春の象徴です」(秋田)と紹介された、秋田がかつてのバンドメンバーに向けて書いた曲“ひろ”は映像演出なし。やわらかなバンドサウンドとともに紡がれる美しいメロディはまるで私たち一人ひとりのすぐ隣に寄り添ってくれるみたいだ。

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そして“空洞空洞”、“空に歌えば”を経ての“ライフイズビューティフル”、《人生は美しい》である。以前東京でバンドをやっていた頃、会場正面の通りで路上ライブを行ったことに触れながら、「今もいるんですかね、ミュージシャン。わいが言うのもおかしいですけど観ていってください」と穏やかな口調で話す秋田。その直後には、昨年秋の武道館公演では物語内の人物の叫びとして演奏された検閲解除バージョンの“独白”が、彼が歌う理由そのものとして鳴らされた。

amazarashi/NHKホール

「amazarashiとは」という核の部分に迫る内容であったこの日のライブは、結果、切実で壮絶である以上に、そのままでいいのだと聴き手を肯定する強さや、あの場にいた一人ひとりを包み込むような温かさに満ちた一夜となった。それは彼らが、生易しい言葉を提供することを避け続けてきたからであり、絶望からも孤独からも目を逸らさずに「それでも」という希望を描き続けてきたバンドだったからだ。振り返ればこの日は、その事実を、そして「秋田ひろむにバンドがあってよかった」、「私たちにamazarashiがいてくれてよかった」という感慨をじっくりと噛み締めたくなるような場面の連続だった。そういう意味で感動的なツアーだったのだ、「未来になれなかった全ての夜に」は。

「あの夜言いたくても言えなかった言葉! 未来になれなかった全ての夜に!」という叫び。ギターを掻き鳴らす秋田のシルエット。それを追いかける怒涛のビート――。この日ラストに演奏されたのは、まだ音源化されていない新曲“未来になれなかったあの夜に”。スクリーンいっぱいの流れ星が美しい光景を生み出すなか、かつての自分から今の自分へ宛てた手紙のようなその曲が演奏された。

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「言いたいことは言うべきです、どんな状況においても。だから最後に今言うべき言葉を……ありがとうございました!」(秋田)とステージを降りたメンバーへ送られた拍手の音量から察するに、おそらく、私が抱いたのと同じ種類の感動を噛み締めていた人の数は少なくなかったように思う。素晴らしいツアーだった。(蜂須賀ちなみ)


●セットリスト
1.後期衝動
2.リビングデッド
3.ヒーロー
4.スターライト
5.月曜日
6.たられば
7.さよならごっこ
8.それを言葉という
9.光、再考
10.アイザック
11.季節は次々死んでいく
12.命にふさわしい
13.ひろ
14.空洞空洞
15.空に歌えば
16.ライフイズビューティフル
17.独白
18.未来になれなかったあの夜に
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