●セットリスト
Overture
1:世界には愛しかない
2:手を繋いで帰ろうか
3:青空が違う
4:太陽は見上げる人を選ばない
5:アンビバレント
6:バレエと少年
7:制服と太陽
8:バスルームトラベル
9:結局、じゃあねしか言えない
10:Nobody
11:危なっかしい計画
12:僕たちの戦争
13:Student Dance
14:避雷針
15:AM1:27
16:I'm out
17:キミガイナイ
18:語るなら未来を…
19:風に吹かれても
20:サイレントマジョリティー
欅坂46が7月5日~7月7日の3日間にわたり、富士急ハイランド・コニファーフォレストにて「欅共和国2019」を開催した。
「欅共和国」は、欅坂46にとって夏の風物詩とも言える恒例の野外イベント。今年はあいにくの雨模様だったが、大雨や強風などで中止になることもなく、無事に全公演を完遂した。もう初夏だというのに肌寒くもあり、メンバーの体調を心配する声もあったが、彼女たちはそんなことお構いなし。「もっとずぶ濡れになってしまえ!」と言わんばかりに水鉄砲や水風船を使って客席に水をばら撒き、さらには高さ70mまで水柱が上がる放水マシン・ウォーターショットや、ウォータースクリーンを使ったスケールの大きい演出も展開された。そんな今回の共和国より、7日に行われた最終日の模様と、ライブを観ながら感じたことを記していきたい。
会場に入りまず目に飛び込んで来たのは、巨大な船の形をしたステージ。そして客席の至る所に大きな櫓が設置されており、これから始まるライブへの期待にますます胸が膨らんだ。2期生の関有美子、松田里奈、森田ひかるによるマイクが割れるほど元気いっぱいの開演前アナウンスを経て、まずは水兵風のセーラー衣装を身に纏った小隊長・尾関梨香が登場。悪戯っぽい表情でバケツに入った水を撒く愛らしい姿に客席が沸いたところで、デッキモップや旗を手に持ったメンバーたちが次々と現れ、出航前の船上をイメージしたダンスパフォーマンスを繰り広げる。そこに船長・平手友梨奈が堂々とした佇まいでステージに入ってくると、歓声は一段と大きくなった。
まるでテーマパークのショーのような賑やかなオープニングでライブの幕が上がり、制服姿に着替えたメンバーが1曲目に披露したのは“世界には愛しかない”。続く“手を繋いで帰ろうか”からはステージを飛び出し、筏の形をした移動式ステージや櫓の上から客席に向けて放水攻撃を開始。メンバーも観客もなりふり構わず夢中で水を浴び、頭に泡をつけたキャプテン・菅井友香のキュートな姿がモニターに映し出される場面も。序盤にして肌寒さも忘れてしまうほどの熱狂に包まれ、“太陽は見上げる人を選ばない”では大きなシンガロングが会場の空気を震わせた。今回のセットリストは天候に関係する楽曲が多く、パラパラと振る小雨さえもライブのコンセプトにリアリティを足す演出のように思える。
「みなさん、欅共和国へようこそ!」菅井の挨拶にはじまったMCでは、「何と言ってもですね、今回のライブから葵ちゃんが復帰しました!」と原田葵の活動再開を改めてアナウンス。「おかえり!」の声が飛び交う中、原田は「久しぶりにステージに立つのに、こんなに沢山の人の前で凄い緊張してるんですけど、精いっぱい頑張るので一緒に盛り上がってください!」とひたむきな意気込みを語った。そしてこの日、7日7日は土生瑞穂の誕生日ということでバースデーサプライズも決行。「ハッピーバースデートゥーユー」の大合唱に合わせ、苺のケーキがステージに運ばれてくると、土生は驚きながらも笑顔を浮かべ「もっとみなさんに幸せになってもらえるように、今後もみんなと一緒に欅坂をもっと広めて頑張っていきたいと思っていますので、応援よろしくお願いします」と22歳の抱負を口にした。
「共和国のみなさん、これからもっと盛り上げていきましょー!」副キャプテン・守屋茜の煽りから始まった“バレエと少年”では、ステージがロマンチックな豪華客船に変わり、少し大人びた原田にスポットが当たる。ライブ中盤は、会場にいる全員が雨を吹き飛ばす勢いでタオルを回した“危なっかしい計画”、炎が燃え上がる迫力満点のステージングを見せた“僕たちの戦争”などが披露され、その中でもハイライトとなったのが“Student Dance”。イスとスマートフォンを使った演劇チックなパフォーマンスに加え、中央ステージで水飛沫を飛ばしながら一心不乱にダンスを踊るメンバーの姿は、まさに「圧巻」の一言だった。
辺りはすっかり暗くなり、会場には雷の音が響き渡る。荒れた海の映像をバックに“避雷針”へ突入し、ここからはシリアスなナンバーを畳み掛けた。“語るなら未来を…”では、いよいよスイッチが入った平手のセンターの貫禄、それにしっかり付いていく2期生の気迫が一際光る。欅坂46の世界観は最初から備わっていたわけではなく1期生全員で創り上げたものと言えるが、2期生はその世界観に憧れて入ってきたメンバーたち。だからこそ2期生の表情やパフォーマンスからは、その世界観を守ろうとする気合いがビシビシ伝わってくるし、そんな彼女たちに心強ささえも感じる。
ラストスパートに向けて会場のボルテージはぐんぐん上昇していき、“風に吹かれても”ではこの日一番の大きなかけ声が起こった。ウォータースクリーンに映し出された巨大なポセイドン神の動きに合わせ、ウォータショットから大量の水が噴射するというまるでアトラクションのような演出を挟み、最後は“サイレントマジョリティー”を披露。サビの振り付け「モーセの十戒」では平手を先頭にメンバーが勇ましく花道を行進し、曲が終わると夜空に綺麗な花火が打ち上がった。≪夢を見ることは時には孤独にもなるよ/誰もいない道を進むんだ≫デビュー当時この呼びかけは、これから孤高の道を歩んでいく欅坂46へ向けられたものだったように思う。しかし、それはすでに彼女たち自身の主張として世の中に轟き、この曲を聴いた誰かの背中を押すメッセージになっている。この日の“サイレントマジョリティー”はそんな確信と、欅坂46の成長を改めて実感させた。
エンディングは再び出航準備のパフォーマンスを繰り広げ、欅坂46の新たな船出を予感させつつライブは幕を閉じた。シリアスな世界観、パフォーマンスの表現力、楽曲のストーリー性、そしてメンバーの無邪気な素顔といった今の欅坂46が持つ全ての魅力がギュッと濃縮されていた今年の共和国。これからのグループの成長がまた次の共和国に繋がっていくと思うと、来年は今年以上に凄いことになりそうだ。(渡邉満理奈)