菅田将暉/Zepp DiverCity(TOKYO)

菅田将暉/Zepp DiverCity(TOKYO)  - All photo by 上飯坂一All photo by 上飯坂一

●セットリスト
1.ソフトビニールフィギア
2.ロングホープ・フィリア
3.クローバー
4.あいつとその子
5.りびんぐでっど
6.まちがいさがし
7.キスだけで feat. あいみょん
8.見たこともない景色
9.風になってゆく
10.いいんだよ、きっと
11.つもる話
12.7.1oz
13.スプリンター
14.TONE BENDER LOVE
15.ドラス
16.さよならエレジー
(アンコール)
EN1.ベイビィ
EN2.ゆらゆら
EN3.ピンクのアフロにカザールかけて


菅田将暉/Zepp DiverCity(TOKYO)
7月に発売となったアルバム『LOVE』のリリースツアー最終日。この9月6日はテレビ朝日系列『仮面ライダーW』の放送から丸10年を迎えた日、つまりはこの作品でデビューを飾った「菅田将暉」という人間が俳優としての歩みを進めてから丸10年が経ったということだ。ライブ中盤で彼自身、「感慨深い」と口にしていたように、「菅田将暉」が自分の声と想いを歌に乗せ、こうして大勢のオーディエンスの前でステージに立っているだなんて、誰が想像できただろうか。でも、会場に浮かび上がる彼の影は、終始、完全なるミュージシャンのそれだったのである。彼は、この『LOVE』というアルバムの意味と、自身が抱いた愛の意味を落とさないよう、それらを音楽とこのツアーとこの夜に確かに刻んだのだ。

菅田将暉/Zepp DiverCity(TOKYO)

定刻になり客電が落ちると、会場には「10!9!8!……」とカウントダウンの声が響く。その声たちが「0」を示した頃、ステージに現れた菅田。オープニングに鳴らされたのは、“ソフトビニールフィギア”。「よろしくお願いしまーす!」という軽い挨拶を挟みつつ、曲終盤には身軽にジャンプをして歌ってみせた。続く“ロングホープ・フィリア”では泥臭い希望を放出し、ギターを弾きながら“クローバー”を歌い上げる。“りびんぐでっど”を終えると、菅田は自身が俳優デビュー10周年を迎えたことを報告。楽曲プロデュースやプライベートでの交流も多いという米津玄師との出会いについて笑みを浮かべながら話し、そして訪れた静寂のなかで菅田が大きく息を吸う。“まちがいさがし”だ。この曲に置かれた「間違い」と「正解」の果てを結んでみせるその過程、見事としか言いようがなかった。曲の最後の一音が消えると同時に白い布がステージ前面にかけられる。映し出されるのは“キスだけで feat. あいみょん”のMVの世界観をモチーフとしたリリック映像、菅田の姿はその奥にある。本来であれば歌詞が女口調である1コーラス目を菅田が、男口調である2コーラス目をあいみょんが歌うという構成の曲だが、この日歌うのは菅田ひとりだけだ。囁くような声色で女性のしなやかさを醸し出したかと思えば、曲の主人公が「男」となった途端に、逞しさをかじった芯を声に含ませる。器用、と言ってしまえば簡単すぎる表現だが、この曲に描かれた女と男をまるで別人が演じているようにして歌い上げたのである。これは、俳優として磨き上げた力と、ミュージシャンとして伸ばした自身の音楽での表現が地続きであることの現れだったようにも思う。

菅田将暉/Zepp DiverCity(TOKYO)

アルコ&ピース・平子祐希が意識高い系のバンドプロデューサーと扮し、リハーサルスタジオで菅田に向けて“見たこともない景色”の歌い初め一節にダメ出しをしまくる、というコントのような映像が映され、会場の空気が砕けたところで再びメンバーが登場。ステージでちゃんと“見たこともない景色”が演奏されたことに安心したのも束の間、ついさっきまでよりも、喉の開き具合といい、筋肉が緩んだような朗らかな顔といい、菅田が心の底からこの空間を楽しみ、音楽に身を委ねていることに気付く。その後に挟まれたMCでもバンドメンバーに話を振ったり、ツアーの思い出に触れたりと、このツアーがほんとうに楽しかったのだなと、彼のなかに生まれたミュージシャンとしての喜びを感じることができた。「こっから後半戦!」と言って“7.1oz”へと繋げ、“TONE BENDER LOVE”、“ドラス”と自身も作詞作曲を手がけた曲になると、ステージから身を乗り出したり、歌っている途中でバンドメンバーを見て笑い出したり、一層リラックスしている様子も窺えた。それは、彼が長年インプットしてきた自由さを、自身の楽曲に宿した瞬間でもある。

菅田将暉/Zepp DiverCity(TOKYO)

ギターピックを咥えながら、おもむろにマイクスタンドをもう一本自身の横に立てた菅田。「次でさいぎょの曲です!」とおちゃめに噛みつつも、その曲は「ある男がドラマ主演をやると決まったときに作った曲」であり「僕と(曲を作った)ひゅーいくんにとってはそいつのための曲」なのだと喋り始める。「でもまさかそいつが来るわけ……そんなまさか山﨑賢人なんか来るわけないよ~」と続け、巻き上がる大歓声のなか山﨑が登場し、ステージで抱擁を交わした2人。山﨑のタイトルコールから、もちろん始まったのは“さよならエレジー”である。曲の最後に《光れ君の歌》で重なる2つの声。宙を舞ったその言葉は、確実に煌めきを帯びていた、歩いた道も不確定な未来も全てを照らすかのようにして。

菅田将暉/Zepp DiverCity(TOKYO)

アンコールでは、菅田がアコースティックギターを携え、ひとりで登場。“ベイビィ”を歌い始め、声とギターだけで会場を満たす。オレンジと青白い2本の灯りを照らされたったひとりで歌うその姿と、静かに燃えて昇華されるほんの少しの孤独がとてつもなく美しいのだ。“ゆらゆら”を放ったのち、「もう一曲やっていいですか!」と言って“ピンクのアフロにカザールかけて”へと流れ込み、《自由に自由にやらせてよ》と歌う。しっかりと自分の声で、自分の言葉で「僕の人生は僕だけのもの」なのだと最後に証明してみせる姿は、なんというか、どこまでも正直だった。彼の立つステージには、偽りの笑顔も、音も、言葉も存在しない。ただただ広がるのは菅田が手にした自由、それ自体が彼の歌う理由なのだと納得させられる瞬間がいくつもあった。まずは「菅田将暉」という人間が歩んだ10年を祝福したい。同時に、彼のなかで今までの10年を生き抜くために音楽が鳴っていたこと、そして明日とその先まで彼が音楽を鳴らしていくことに、嬉しさを感じずにはいられない。音楽のなかでしか生きることのできない「菅田将暉」が、今確かに存在しているのだ。(林なな)

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