10-FEET/Zepp Tokyo

10-FEET/Zepp Tokyo - All photo by HayachiN All photo by HayachiN

●セットリスト
1.VIBES BY VIBES
2.1 size FITS ALL
3.JUST A FALSE! JUST A HOLE!
4.Fin
5.super stomper
6.SHOES
7.2%
8.123456789101112
9.火とリズム
10.JUNGLES
11.hammer ska
12.heart blue
13.夢の泥舟
14.1sec.
15.quiet
16.goes on
17.蜃気楼
18.太陽4号
19.ハローフィクサー
20.RIVER
21.FELLOWS1.5
22.4REST
23.STONE COLD BREAK
24.その向こうへ
25.ヒトリセカイ


ライブが終わってしまうのが名残惜しかった。無二の親友と過ごした時間が楽しければ楽しいほど、別れ際にとてつもない寂しさに襲われてしまうもの。それと似たような感情が胸に去来した。10-FEETはそんな気持ちにさせてくれる唯一のバンドかもしれない。

今年7月にリリースされた18thシングル『ハローフィクサー』に伴うレコ発ツアー「10-FEET "ハローフィクサー" ONE-MAN TOUR 2019」は12都市12公演すべてがワンマンとなり、既に全公演ソールドアウト。そのツアー初日にあたるZepp Tokyoは変わらず幅広い層の観客が詰めかけていた。

10-FEET/Zepp Tokyo

19時10分にSEが流れると、まずは“VIBES BY VIBES”でスタート。TAKUMA(Vo・G)、NAOKI(B・Vo)、KOUICHI(Dr・Cho)のメンバー3人はどっしりと構えた演奏でフロアを焚き付けていく。《日々精進の心精神に刻み肝心なとこで奮迅!》、《傷ついた分だけ心が温かさ/解るようになるなら傷ついて めっちゃ泣いたらええやん!》と、10-FEETの歌詞は聴く者の心に寄り添う内容が多い。観客もその内容に共感した上で騒いでいるに違いない。イントロからジャンプする光景が広がると、次は“1 size FITS ALL”に突入。中盤のジャジーなパートも効果的で、歓声はさらに大きくなるばかりだ。それから豊かな歌心で疾走する“Fin”を挟んで、“super stomper”、“2%”などアッパーな楽曲を序盤に連発。

そして、最新シングルのカップリング曲“123456789101112”がここで炸裂。曲名通りにほぼ数字を順番に歌い上げるおフザケ曲だけれど、こうした遊び心を忘れない10-FFETが僕は大好きだ。ポップな歌メロとラウドなギターのギャップもライブで一段と映えていた。“火とリズム”をやり終えると、「休憩! お前らのペースでやったら、死ぬわ!」とTAKUMAが観客の異様な熱気を受けてMCすると、NAOKIは今ツアーのためにベースを新調したことを告げ、気合いの入りっぷりをアピール。すると、「俺もパンツ替えてきた。下半身、違うやろ!」とKOUICHIが言ってのけ、場内は爆笑に包まれる。

10-FEET/Zepp Tokyo

ここでTAKUMAは満杯の膨れ上がった会場を眼前に、昔の思い出を振り返る。10-FEETのライブはせいぜい友達が10〜15人ぐらい観に来てくれる程度で、ライブ後はみんなで居酒屋に行くようなノリだったらしい。その流れから「久しぶりにやる曲」と言うと、7thアルバム『thread』収録の“JUNGLES”をプレイ。こちらも好リアクションで受け入れられると、最新シングルのもうひとつのカップリング曲“heart blue”を披露。はっきりと耳で聴き取れるストレートな歌詞、無駄を極力削ぎ落としたシンプルな演奏が実に新鮮であった。この曲をプレイした後に「どんな時でも俺はお前の味方やでって曲」と“heart blue”の曲解説を入れた後、“夢の泥舟”へと繫ぐ流れにグッと来た。《何度も 何度も また元の場所に戻って》という歌詞は夢を諦めずに追い続けることの大切さを説いているようで、10-FEETの愚直な人柄が滲み出ている気がしてならなかった。

「お前らが生きてる意味、3人はめっちゃ感じてます!」とTAKUMAが言うと、“goes on”を投下。ライブで何度も聴いている曲にもかかわらず、《人が海のように大きくなれたら 人が波のように優しくなれたら》の歌詞が胸に突き刺さる。「隣の知らない人とハイタッチや!」とTAKUMAが呼びかけ、観客同士がハイタッチし、歌詞が持つメッセージ性とリンクした光景にも感動した。その後にプレイされた“蜃気楼”では輪唱のように観客が歌詞を追いかけて大声で歌い、バンドとフロアは完全に固い絆で結ばれていた。

10-FEET/Zepp Tokyo

後半戦も佳境に入る頃、最新シングル表題曲“ハローフィクサー”をプレイ。この曲は音源発表前の今年5月に、バンド史上最大キャパとなる野外ワンマンライブ・長崎県長崎市稲佐山公園野外ステージで初披露したナンバーだ。その時にも前代未聞のミクスチャーサウンドに驚愕したものの、この日も浮沈激しいダイナミズムで観客を揺らしまくり、ライブで体感するたびに精度を上げているように感じた。

それからライブ必須の名曲“RIVER”を挟み、今日はアンコールがない代わりに、メンバー3人が好きな楽曲をプレイするという意外な展開へ。“FELLOWS”(1stアルバム『springman』収録!)、“4REST”、“STONE COLD BREAK”と懐かしい初期曲を含む3連打に場内も大興奮。

10-FEET/Zepp Tokyo

さあ、ライブは残すところ2曲のみ。TAKUMAは唐突に「好きやで!」と言い放ち、「応援してくれて、贔屓にしてくれるから。友達みたいに盛り上がってくれ!」と付け加えると、“その向こうへ”、“ヒトリセカイ”と畳み掛け、特に後者では自然にハンドクラップが起き、なんとも温かい空気に包まれてライブは終了。

バンドと観客、送り手と受け手、そんな境界線を木っ端微塵に粉砕して、心と心で共鳴し合う濃密な時を刻み付けた10-FEET。彼らはここに集まった観客を家族のように抱きしめ、親友のように励ます。だから、観ているこちらも別れが辛くなり、ライブにまた足を運んでしまうのだろう。改めて、10-FEETの人間的魅力に惚れ直した一夜だった。(荒金良介)

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