あいみょん/横浜アリーナ

あいみょん/横浜アリーナ - Photo by 永峰拓也Photo by 永峰拓也
※以下のテキストでは、演奏曲のタイトルを一部表記しています。ご了承の上、お読みください。

ただ「いい歌」がそこにあれば大丈夫――そんな潔さで作られた空間だった。

あいみょんの全国ツアー「AIMYON TOUR 2019 -SIXTH SENSE STORY-」21本目となる横浜アリーナ公演1日目。ステージに大掛かりなセットなどはなく、いたってシンプル。照明も映像もあくまで楽曲の世界観を広げたり、聴き手のイメージを刺激するために存在する。ステージの両脇には十字型のLEDモニターが設置され、時に縦型、時に横型のモニターへと形を変えていく。その縦横比はスマートフォンの画面と近く、ふだんの生活で彼女の音楽や映像を楽しむときの感覚がその場に壮大に立ち上がっているようでもあった。

あいみょん/横浜アリーナ - Photo by 永峰拓也Photo by 永峰拓也
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あいみょん本人は肩肘張らず、フラットな状態でそのステージに立っているように見えた。13,000人を前にしてそんな平常心でいられて、なおかつ音楽を丁寧に届けられるのは、どんなに激しい煽りを受けたとしても一寸たりともぶれることがない、強く太い芯やポリシーを持っているからだろう。風格のある佇まいは隅々まで健やか。どんなに華やかな演出や照明よりも、観る者の心を奪ってしまうのだ。

“ふたりの世界”は歌詞が明確に伝わるような歌い方で、主人公の女の子の気持ちがダイレクトに伝わってくる。はたまた“愛を伝えたいだとか”は歌のリズムや節回しがクールに響き、楽曲が孕んだ妖しさに艶や激しさを加えていた。意識的なのか無意識的なのかは定かではないが、彼女はとにかく楽曲が最も引き立つ歌唱方法と奏法を取る。自己顕示欲は微塵も感じさせないし、自分が観客からどう見えているか、どう見せたいかなどは気に留めていない様子だ。

そんな彼女の立ち振る舞いは、聴き手に音楽を楽しむ自由を与えてくれる。彼女の歌を入り口に自分の記憶を泳ぐこともできるし、彼女の描く物語を旅することもできる。大仰な抑揚がない彼女のボーカルは楽曲の良さを堪能するには申し分ないし、彼女の声に心酔する楽しみ方だってもちろんアリ。音楽の根本的な魅力を再確認する。

あいみょん/横浜アリーナ - Photo by 鈴木友莉Photo by 鈴木友莉
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“二人だけの国”では暗闇のなかでマイクスタンドを握り、淡々と沸々と歌い上げる。今にも溢れだしそうな情熱をコンパイルする演奏と歌声に集中できたのは、間違いなく暗闇のおかげだ。彼女が弾き語りで披露した“生きていたんだよな”や“tower of the sun”は、こちらの心に刻みつけるようにギターの音と歌声がひりひりと響いてくる。彼女を照らすスポットライトも相まって、彼女の姿が闇のなかで小さくも炎を燃やす蝋燭の明かりのように見えた。絶望に包まれても微かに、確かに光を灯すように歌う姿はひたすらに切実であり誠実。彼女の深淵を垣間見た瞬間でもあった。

MCは「横浜アリーナ2Daysできるなんて思ってもみいひんかった。ありがとう~」、「うれしいなあ、こんなにおんねや」、「みんな誰と来たん?」など、友達相手に会話するように飄々と繰り広げていく。ナチュラルに笑いを組み込んでくるところも関西人らしい。暗くもなければ底抜けに明るいわけでもないテンションも、聴き手をフラットな状態にさせる。“マリーゴールド”ではイントロが鳴った瞬間に客席から一気に「待ってました」と言わんばかりの空気が溢れ、楽曲も愛をしっかりと受け止める度量ができていた。名実ともに「みんなのもの」になったヒット曲だからこそ成し得る幸せな景色。歌詞と音が描いているやわらかな色味と同じ空間が目の前に広がっていることに心が満たされてゆく。

あいみょん/横浜アリーナ - Photo by 鈴木友莉Photo by 鈴木友莉
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“夢追いベンガル”では曲中で上手と下手に伸びたステージへとハンドマイクで走り、ステージ真横の観客とハイタッチするなど走り回りながら歌唱。終盤は息切れを隠し切れない様子で、定位置に戻った瞬間に一瞬ステージで土下座のように地面にべったりぶっ倒れる。その飾らないスタイルが微笑ましくもあり、だがすぐに起き上がって「ありがとう~!」と笑顔を見せるストイックさにも感心させられた。

「会場が広くなるほど会える人が増えて、みんなとの距離が近くなったなと思ってます。今回のツアーは行ったことのないところにもたくさん行けたんですよ。それってめちゃくちゃ近くなったってことやないですか?」と言い、「SNSでしょうもない写真上げても、みんないっつもありがとうって言うてくれるやんか? 目の前にみんながいる時に言うときたかったんです――ほんまにありがとうございます」と語ると、彼女は深々と頭を下げた。彼女の人柄や音楽にある、するりと聴き手の懐のなかに入ってしまうあの感じは、心地のいい晴天のやわらかい日差しのよう。“GOOD NIGHT BABY”の伸びやかなメロディと歌声の包容力は格別だった。

観客からのあたたかい歓声と拍手、笑顔を受けて、喜びをかみしめる彼女は「ワンナイトにはしたくないので、必ず会いに行きます。みんなも会いに来てください」と笑顔を浮かべ、投げキッスを残してステージを後にした。爽やかながらに濃密な約2時間。歌を介して想いを交換する、音楽の醍醐味を味わった。(沖さやこ)

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【速報】あいみょん「AIMYON TOUR 2019 -SIXTH SENSE STORY-」横アリ公演を観た
10月11日の三郷市文化会館を皮切りにスタートした、あいみょんの全国ツアー「AIMYON TOUR 2019 -SIXTH SENSE STORY-」。全公演ソールドアウトという快挙で、ツアー21本目である横浜アリーナ公演1日目も超満員だった。 なによりも曲が主役であることを重んじたシンプル…
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