WANIMA/横浜アリーナ

WANIMA/横浜アリーナ - All photo by 瀧本JON…行秀All photo by 瀧本JON…行秀
※以下のテキストでは、演奏曲のタイトルを表記しています。ご了承の上、お読みください。

昨年11月に新木場STUDIO COASTからはじまったWANIMAの「COMINATCHA!! TOUR 2019-2020」が、いよいよアリーナ編に突入した。昨年10月23日にリリースされ、オリコンウィークリーチャートでは2作連続1位を獲得した2ndフルアルバム『COMINATCHA!!』を引っさげた今回のツアーは、もともとライブハウスで生まれ育ったWANIMAだからこそ、まずはライブハウス編からスタートを切った。そこから、東北3公演、故郷・熊本に新しく完成した熊本城ホールでの公演を含むホール編を経て辿り着いたのが、1月29日の横浜アリーナ公演だ。ここから12都市のアリーナ会場を2Daysずつまわる。動員数は25万人。またも「バンド史上最大」を更新するかたちとなった今回のツアーでは、初めて生のピアノやストリングスの演奏を取り入れるなど、バンドとして新たな表現の可能性にも挑んだ。決して同じ場所に留まらない。そんなロックバンドとしての気概を見せると同時に、「負けてほしくない。生きることを諦めてほしくない」と切なる願いを訴えたこの日のライブは、目の前にいるお客さんに自分たちの想いを間違いなく伝えるという、彼らの信念も貫かれていた。

「カミナッチャツアー、開催しまーす!」。KENTA(Vo・B)による高らかな開催宣言が告げられると、アルバム『COMINATCHA!!』でもオープニングを飾る“JOY”でライブがはじまった。ドラマーとして一段と存在感の増したキレのあるFUJI(Dr・Cho)のビートにのせて、KENTAの真っすぐなボーカルが横浜アリーナの隅々まで響きわたる。会場から自然と大合唱が起こった“アゲイン”では、髪色を赤と青に染めたKO-SHIN(G・Cho)がステージのセンターに立ち、堂々としたギターソロを見せると、その横でKENTAが「コーシン! コーシン!」という掛け声で煽った。軽やかなメロディが弾んだ“BOUNCE”、ステージと客席の距離をゼロにする大切なナンバー“THANX”。新旧ナンバーを織り交ぜてライブは進む。初っ端からスタンド席のいちばん後ろまで総立ちだったが、その最後列まで目線を投げかけて歌うKENTAは、いつものようにくしゃくしゃの笑顔だった。生きていれば、悲しいこと、つらいことがあるのは百も承知。それでも、この場所だけは楽しい時間にしなければいけないというWANIMAの覚悟のライブを目の当たりにすると、何度でも、ああ、来てよかったと思わせてくれる。

WANIMA/横浜アリーナ

“THANX”でダイバーが続出したフロアを見ながら、「すごくライブハウスの匂いがします」と、KENTA。WANIMAのライブは、アリーナ規模の会場でも、一部を除いてフロアは座席なしのスタンディングエリアで構成される。ライブハウスの熱気や一体感にこだわり続けているのだ。ステージ上で「女の子」を呼ぶ遊び心を見せた“サンセットストリップ”から“渚の泡沫”へ。エロ系のナンバーを畳みかけた中盤は、ルフィによるタイトルコールが口火を切った“GONG”で会場はひときわ大きな歓声で湧いた。お客さんの頭上をレーザーの光が飛び交い、巨大なLEDスクリーンでは1曲1曲に全力を注ぐメンバーの表情を逃さずに捉える。アリーナらしい演出も盛り込みながらも、この日はこれまでの大規模会場に比べると、大掛かりな演出は控えめだったと思う。そのぶん、これまで3人が培ってきた剥き出しの人間力、ライブバンドとしての地力で勝負する、そんなライブだ。

恒例のリクエストコーナーでは、センターステージへと移動しながら、「誰がいちばん速いか、競争しよう」と突然走り出したり、「FUJIくんに触られたら腐る(笑)!」と、まるで小学生のようなやんちゃなやりとりで会場を和ませるメンバー。KO-SHINはフロアにTシャツを投げ込み、KENTAは直接フロアに降りて、リクエストするお客さんを選んだ。そして、4名のお客さんをステージに上げると、その場で、このあとに披露する楽曲を決める。この日は“HOME”、“いいから”、“ともに”の3曲。なかでも、これからひとり暮らしをはじめるというお客さんのリクエストで久々に披露された“HOME”は、「大事な歌やけど、歌詞が……。でも、歌詞とか関係ないやん。俺たちはここ(心)でつながってきたやん(笑)」と、KENTAは自信なさげな素振りを見せたが、あえて音源とは異なる歌い出しで、ライブだけのメッセージを届けた。それは、かつてバンドのために、故郷・熊本から上京し、それでも帰る場所があるから戦い続けることができた、WANIMAだからこその歌だ。

WANIMA/横浜アリーナ

再び正面ステージに戻った後半戦では、KO-SHINが奏でる大人っぽいギターがリードした“Baby Sniper”、パーカッシブなリズムが心地好いミディアムテンポの“シャララ”へと、最新アルバム『COMINATCHA!!』のなかでも、WANIMAの新しい一面を感じる楽曲が続いた。メジャー進出から約2年、新しいフェーズに向かうWANIMAの進化が刻まれた楽曲たちだ。そして、「新曲やります」と言って“春を待って”を初披露。「この曲ができたときに、真っ先にいま苦しいところにいる人に届けばいいと思った」と伝えたその楽曲は、やがて美しい花を咲かせるために、長い冬を耐え抜く私たちの人生を包み込むような、大きな包容力を持った曲だった。かつて「Everybody!! Tour」の頃、お客さんと共に“りんどう”という曲を育てたように、“春を待って”もまた、こうしてライブという場所で歌い続けることで、大切な曲になっていきそうな気がした。続けて、母親代わりだった祖母への想い込めた“Mom”へ。その曲を歌い終え、KENTAが「ばあちゃんがおらんくなってから、向き合うまでにすごく時間がかかったけど、これからも生きていこうと思いました。おらんくなるのはいつも急やから。もうWANIMAは失いたくないです。これからもWANIMAと共に生きていってください」と叫ぶように伝えたシーンは、すべてが全力投球のライブのなかでも、とりわけ忘れられないハイライトだった。

終盤、爽快なメロディが駆け抜けた“夏のどこかへ”、ミラーボールの光が横浜アリーナを美しく埋め尽くした“オドルヨル”で会場の熱狂がピークに達したところで残り2曲。穏やかなギターの音色にのせて、「あきらめることは簡単やけど、続けることは……ああ、難しかよなあ」と、KENTAが歌うように語りかけた。さらに、「お客さんがいなかったら、曲を作る意味も、ライブをやる意味もない」と改めて感謝を伝えたあと、「それぞれが弱いままで強くなっていこう」と、歌詞の一部を引用してつないだ“りんどう”は、ピアノとストリングス隊を入れた12人のスペシャルな編成で披露された。壮大だが、原曲のままの温かいアレンジ。新たな命が吹き込まれたサウンドのなかで、《生きて 生きて 生き抜いてやれ》と泥臭く紡がれるKENTAのボーカルに寄り添うように、コーラスのKO-SHINも、まるでメインボーカルのような形相で必死に歌っていた。そのままの編成で、ラストソングとして届けたのは“宝物”。その歌に寄せて、KENTAは「ここに集まってくれたみんなは俺の宝物やからな!」と力強く叫ぶと、アリーナに紙吹雪が舞い、温かなハンドクラップが包まれ、本編は幕を閉じた。

WANIMA/横浜アリーナ

アンコールでは、またライブで再会することを約束する“エル”をはじめ、盛大なシンガロングを巻き起こした“Hey Lady”、アルバム『COMINATCHA!!』でも最後に収録され、あのアルバムを聴いた人ならば、誰もがライブの終わりに聴けることを楽しみにしていたであろう“GET DOWN”まで一気に畳みかけて、2時間半を超えるライブを締めくくった。最後の最後の瞬間まで、KENTAは「負けるなよ!」、「死ぬなよ!」と本気で訴え続けていた。バンドは、ライブの現場でしか、私たちの顔を見て音楽を届けることができない。だから、一瞬たりとも無駄にしない。それを言葉ではなく、ステージに立つ態度をもって伝えたWANIMAの在り方は、私たちが明日も生きてゆく希望そのものだった。(秦理絵)


●セットリスト
SE. COMINATCHA!!のテーマ
01. JOY
02. アゲイン
03. BOUNCE
04. つづくもの
05. THANX
06. サンセットストリップ
07. 渚の泡沫
08. GONG
09. HOME
10. いいから
11. ともに
12. Baby Sniper
13. シャララ
14. Like a Fire
15. 春を待って
16. Mom
17. 夏のどこかへ
18. オドルヨル
19. りんどう
20. 宝物
(アンコール)
EN01.エル
EN02.Hey Lady
EN03.GET DOWN


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