KEYTALK/オンラインライブ「4密サウンドでSUTEKI HOME ~甘い甘い蜜のよう~」2010-2014

KEYTALK/オンラインライブ「4密サウンドでSUTEKI HOME ~甘い甘い蜜のよう~」2010-2014 - All photo by 後藤壮太郎All photo by 後藤壮太郎

●セットリスト
1.FREEDOM
2.night focus
3.フォーマルハウト
4.PASSION
5.orange and cool sounds
6.サイクル
7.MURASAKI
8.マキシマム ザ シリカ
9.fiction escape
10.トラベリング
11.sympathy
12.a picture book
13.バミューダアンドロメダ
14.blue moon light
15.コースター
16.MONSTER DANCE


音楽フェスやイベントで無観客オンライン配信を行ったことはあるKEYTALKだが、ワンマンライブの配信はこれが初。どのようなものになるのだろうか? 期待していた我々に最初に届けられたのは、なんと“FREEDOM”だった。メジャー3rdシングル『MONSTER DANCE』のカップリングだったこの曲が1曲目だと予想していた人は殆どいないだろう。タイトルに「2010-2014」という文字が盛り込まれていることからも窺われる通り、今回の配信ライブのために用意されたセットリストは2010年から2014年にかけての作品で構成。マニア心をくすぐるポイントが満載の選曲だった。“night focus”(インディーズ1stミニアルバム『TIMES SQUARE』に収録されている)が2曲目に披露された瞬間も「そう来たか!」と思わされたし、3曲目として“フォーマルハウト”(インディーズ1stフルアルバム『ONE SHOT WONDER』に収録されている)が選ばれていたのは「実にわかっていらっしゃる!」という印象だった。秋の爽やかな空気と風景をイメージさせる“フォーマルハウト”を、毎年、今の時期にふと聴きたくなっているファンはたくさんいるはずなのだ。巨匠こと寺中友将(Vo・G)と首藤義勝(Vo・B)によるツインボーカルの黄金コンビネーションが冴え渡るこの曲を味わえたのは、本当に嬉しかった。

KEYTALK/オンラインライブ「4密サウンドでSUTEKI HOME ~甘い甘い蜜のよう~」2010-2014
KEYTALK/オンラインライブ「4密サウンドでSUTEKI HOME ~甘い甘い蜜のよう~」2010-2014

普段のライブとは異なる趣きの選曲だったことに加えて、もうひとつ目を引いたのは、LEDや多彩な映像を駆使して構築されていた空間だ。序盤の3曲が落ち着いたトーンのライティングで届けられた後、4曲目“PASSION”を皮切りに、背景、床、天井に様々なグラフィックが映し出された。大きな白い明朝体で歌詞の一節が浮かび上がる中、抒情的なメロディがじっくりと届けられた“MURASAKI”。無数の光の筋が流れる様がクールな疾走感を生み出していた“マキシマム ザ シリカ”。カラフルなブラウン管の映像がズラリと並び、MVの世界が再現されていた“トラベリング”。そういえば「再現」で思い出したが……“a picture book”は、小野武正(G・MC・Cho)、八木優樹(Dr・Cho)が踊る「振りを付けてみた動画」がYouTubeで公開されたことがある。今回のライブの終盤でこの曲が披露された際、武正と八木が久しぶりにこの振り付けを踊る映像が背景に流れたのだが、ふたりがやたらと異様なまでに増殖する様や、記憶が曖昧らしい八木が即興ダンスで誤魔化す様が面白くて仕方なかった。こんなユルい遊び心を織り込んでくるところもKEYTALKらしい見どころだったと言えよう。

そして、彼らの演奏力、表現力の豊かさにも終始、痺れる他なかった。例えば、スリリングなタメとキメを交えつつ、フュージョン的なスタイリッシュさも漂わせながら響き渡らせていた“orange and cool sounds”。この曲がインディーズ1stシングル『KTEP』のオープニングを飾った2010年の時点で既にレベルが高かった彼らの演奏力が、ますますものすごいことになっていることを再確認させられた。アウトロも含めて、4人の各々の楽器プレイの聴かせどころが満載だった“blue moon light”も、「また聴きたいなあ」という気持ちで胸がいっぱいになる。瑞々しい歌のハーモニーを絶妙なポイントで響かせていた巨匠と義勝、曲全体を効果的に躍動させる華やかなフレーズを涼しい顔をしながら連発していた武正、猛烈に切れ味の良いビートを満面の笑みを浮かべながら叩き出し続けていた八木……。各々のミュージシャンとしての魅力、4人のアンサンブルの素晴らしさを、映像を通してじっくりと噛み締める体験は、とても幸福なものだった。視聴しているファンによる掌の絵文字が手拍子のようにコメント欄で陽気に躍っていた“fiction escape”。「ララララ~」という文字でコメント欄が埋め尽くされる様が大合唱のようだった“sympathy”など、一緒に観ているファンの息吹を感じられたのも楽しかった。この配信ライブの映像アーカイブは残らず、生視聴しかできない形だったのだが、だからこそ生まれた臨場感と共有感があそこには確実にあった。

KEYTALK/オンラインライブ「4密サウンドでSUTEKI HOME ~甘い甘い蜜のよう~」2010-2014
KEYTALK/オンラインライブ「4密サウンドでSUTEKI HOME ~甘い甘い蜜のよう~」2010-2014
KEYTALK/オンラインライブ「4密サウンドでSUTEKI HOME ~甘い甘い蜜のよう~」2010-2014

「目まぐるしい展開を遂げるのにキャッチー極まりないのはなぜ?」という痛快な謎を毎回残してくれる“コースター”は、「この人たち、ブッ飛んだ曲でメジャーデビューしたんだなあ」と今更ながらしみじみとさせられた。そして、ラストをドラマチックに締め括ったのは“MONSTER DANCE”。聴きながら思わず掛け声を上げつつ踊ってしまった視聴者が少なからずいたのではないだろうか? 全16曲を演奏し終えると、見守っていたスタッフたちの拍手を浴びたメンバーたち。汗をかきつつも、4人が浮かべていた表情はとても晴れやかだった。

ライブ本編の中に「THE 自粛生活」という映像が時々挟み込まれていた点にも触れておこう。「武正:ギターを弾く動画『#わしつなぎ』をツイッターに毎日投稿」、「八木:『パワプロ』で遊ぶ様をYouTubeで実況配信」、「巨匠:YouTubeチャンネル『巨匠部屋』で『筋トレやめます!』宣言をしつつ、密かに手にしていたのはダンベル……」、「義勝:ベランダでひたすら真面目に忍者修行」――4人各々の個性を際立たせながら和ませてくれたが、MCタイムはゼロ。しかし、ライブ終了後にはトークコーナーがたっぷりと用意されていた。「楽しかったね。1個緊張したのが、途中で歌詞を出す演出。あれをやると間違えられない(笑)」(義勝)。「今日、歌詞飛ばさなかった。俺、いつもなんで歌詞を飛ばすかというと、目の前のお客さんと目が合うから」(巨匠)。「成長しましたね、10年前とかと比べて。やっぱ、全体的なクオリテー? クオリテーがマシマシのマシで」(八木)。「昔の曲を今の僕らでガッツリと表現できたんじゃないかなって思っております!」(武正)――ライブの感想を話し合い、抽選で選ばれたファンクラブ会員とZoomで会話もしたこのコーナーの中では、“流線ノスタルジック”のMVを初公開。そして、10月31日(土)に無観客オンラインワンマンライブ「4密サウンドでSUTEKI HOME~甘い甘い蜜のよう~2015-2020」を開催することも発表された。次回も普段のライブとは異なる切り口の選曲や演出で楽しませてくれるのだろう。とても楽しみだ。(田中大)

KEYTALK/オンラインライブ「4密サウンドでSUTEKI HOME ~甘い甘い蜜のよう~」2010-2014
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