ART-SCHOOL @ 下北沢シェルター

5月8日、千葉LOOKでのライブをもってドラムス・桜井雄一が脱退――。この日発表されたばかりのニュースはファンにとっては衝撃的なものだっただろう。00年の結成以来、常にアンサンブルを支えてきた桜井。アート・スクールというバンドにとって、木下理樹以外の唯一のオリジナル・メンバーでもある。彼の脱退はバンドにとって大きな事件だろう。しかし、ステージに姿を見せた4人の姿には屋台骨が揺らいでいるような様子は一切見えなかった。むしろその真逆だった。まるで全てを燃やし尽くそうとするような、壮絶な気迫が宿っていた。

『A Catholic boy & Catholic girl』と銘打ち、下北沢シェルターでの5ヶ月連続のワンマン・ライブを行っている彼ら。今回はその3回目にあたる。チケットは当然ソールド・アウト、会場は酸欠寸前の満員状態だ。そして彼らのほうも、息継ぎの時間すら与えないような勢いで次々と曲を繰り出していった。“FIONA APPLE GIRL”で幕を開け、序盤は“ガラスの墓標”や“SHILA”などグランジ直系のアップ・テンポなナンバーを叩きつけるように演奏していく。

曲を終えて時折「ありがとう」と呟く以外、本編では木下理樹のMCは一切なし。“ウィノナ ライダー アンドロイド”や“DIVA”などの中盤から、“あと10秒で”“ILLMATIC BABY”などの終盤へと、ほとんど間をおかずに繰り広げてゆく。“DRY”など普段はあまりやらない曲も織り交ぜた選曲。ただし、彼らのディスコグラフィにはスロウなバラード・ナンバーやシューゲイザー的な浮遊感を持った楽曲も多いが、そういう曲はこの日のセットリストには殆どなし。ひたすら衝動をぶっ放すような内容だ。木下は喉を枯らして声を張り上げ、戸高は髪を振り乱しながらギターを掻き毟る。桜井も迫力あるドラミングを見せる。ただただ音楽を鳴らすことに徹した4人の姿は、まるで一分一秒も惜しいかのように見える。

アンコールで登場した木下理樹は、「この4人でやるのは、あと2回。だから最後まで目に焼き付けてください」と語った。「頑張るぞ!」と両手を挙げたあと「……空元気じゃないからね」と呟いて会場には苦笑が起こったが、きっとそれは彼にとっての偽らざる本心なのだと思う。今回の桜井雄一の脱退も、バンドが“前に進む”ためのメンバー・チェンジなのだろう。タイトルは明かされなかったが、ステージでは新曲も何曲か披露された。未発表の新曲が、NHK「デジタル・スタジアム」のエンディング・テーマとしてオンエアされ始めたばかりだし、5ヶ月連続ワンマンもまだ続いていく。だからこそ、フロアにもセンチメンタルなムードは驚くほどなかった。

2度目のアンコールで、木下理樹は“ロリータ キルズ ミー”をプレイする直前にふとマイクを離れ、ドラムの方を振り返って「最高だったね」と笑顔で呟いた。2時間弱、合計30曲近くを披露した今回のステージ。その言葉が、とても印象に残った。(柴那典)
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