リリー・アレン @ SHIBUYA O-EAST

リリー・アレン @ SHIBUYA O-EAST
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リリー・アレン @ SHIBUYA O-EAST
リリー・アレン @ SHIBUYA O-EAST - pic by TEPPEIpic by TEPPEI
ニュー・アルバム『イッツ・ノット・ミー、イッツ・ユー』をリリースした直後の2月25日に行った、MySpace主催の招待制ライブ以来となる来日公演。ステージに現れたリリー・アレンは、背中の開いたトップスにジーンズ、両目の下に青と銀のラインを入れている。
2月25日と同じく、“エヴリワンズ・アット・イット”でライブはスタート。レゲエ/ダブ方向にやや寄っていた1stアルバムとは変わって、どの方向にも寄っていない、ただ「演奏があって歌がある」みたいなサウンド・プロダクトの『イッツ・ノット・ミー、イッツ・ユー』と地続きな、シンプルで強いバンド・サウンドにのって、同アルバムの名曲たちを次々に披露していく。

なんというか、自然。「次はこの曲です!」みたいなもったいぶった感じ、ゼロ。ただ「はい、次はこれです」という感じで、楽しそうだけど、わりと淡々と、曲を続けていく。
イントロや間奏の度にタバコをスパスパ吸ったり、歌いだす前に「エヘン!」と咳払いしたらそれをでっかい音でマイクが拾っちゃって「オオ!」と驚いてフロアの笑いを誘ったり、全体にリラックスした空気でもある。でも、そこでプレイされるのは、下記のセットリストのような名曲たちなわけで、それらが惜しみなくどんどん放出されているわけで、フロアはもう、アガり放題アガっていく。そのギャップが、なんだか面白かった。
って書くと、客観的に観ているみたいだけど、そう思いながらフロアにいる自分だって、曲が始まるたびに「うわ、これ好き」とか「ああっ、これもいい曲」と、いちいちアガっているわけで、まんまとこの場の空気に飲み込まれていた。

本編ラストの「ファック・ユー」、ブッシュへの怒りが、牧歌的なリズムと陽性のメロディにのせて歌われるこの曲を聴きながら、そういえば、忌野清志郎にも同じタイトルの曲あったなあ、と思い出す。忌野清志郎&2・3’Sの曲だった。で、突然気がついた。

リリー・アレンって、忌野清志郎じゃないか?

ないです。全然違います。違いますが、「思ったことをそのまんま歌う」際の、逡巡のなさやブレーキの踏まなさ。その直接性に、ちょっと近い匂いを感じるのだ。
くだらないテレビにむかついたら“ザ・フィアー”という曲にする。彼氏のセックスにダメ出しする歌、“ノット・フェアー”を書く。その時、「これは、はたして歌にして世に問うべきことなのだろうか?」とか、そういうことは考えない。「歌いたいけど、色々考えると、ちょっとやめたほうがいいのでは」とか「もっと煮詰めて、正当性のある意見として完成してから歌ったほうがいいのでは」とか、そういうふうに逡巡するのが、もうとにかくイヤ。まず思ったら歌う、あとは知らない、という直接性。

で。このたびの忌野清志郎の訃報に対して、いろんなメディアでいろんなことが語られたり書かれたりした中に、「体制や権力に対して戦いを挑み続けたすばらしい人」みたいな声もあった。確かにそういう面もあったけど、その、原発や表現規制に対して牙をむいたのと同じように、「何もそんなことしなくても」という相手に対しても牙をむく。忌野清志郎がそういう人であったことは、ファンなら誰もが知っている。
例えば、某ライブハウスとモメて、「ライブハウス」という曲を作ったり。レコード会社のスタッフが突然辞めてしまったことに激怒して「裏切り者のテーマ」という曲を書き、「コンドー! 出て行けー! 俺の世界から」と実名まで出して罵倒したり。某ライブハウスと清志郎、どっちが社会的に弱い? レコード会社スタッフと清志郎の場合は? 下手したら、弱い者いじめだと思われかねない。それでも歌う。つまり、それが世間からよく思われようと思われまいと、頭にきたら歌わずにはいられない、そういう大人げない人だったのだ。で、その大人げない、分別のない直接性が、どうしようもなく魅力的だったし、我々ファンは、そこも含めて大好きだったのだ。

って、脱線しすぎて誰のライブ・レポートかわからなくなってる。が、白のトップスに着替えてアンコールに登場し、“スマイル”“ザ・フィアー”に続いて、おなじみ、ブリトニー・スピアーズのカヴァー“ウーマナイザー”でしめくくった彼女を観ながら、この人もきっとそうだよなあ、ということを、ずっと考えていた。
好きです、こういう人。本人と周囲は大変だと思うが。(兵庫慎司)

1.エヴリワンズ・アット・イット
2.アイ・クッド・セイ
3.ネヴァー・ゴナ・ハップン
4.オー・マイ・ゴッド/エヴリシングズ・ジャスト・ワンダフル
5.ヒム
6.フード・ハヴ・ノウン
7.LDN
8.ゴー・バック・トゥー・ザ・スタート
9.ヒー・ワズント・ゼア
10.リトレスト・シングス
11.チャイニーズ
12.22
13.ノット・フェア
14.ファック・ユー

アンコール
15.スマイル
16.ザ・フィアー
17.ウーマナイザー
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