「今日は何の日か知ってる? 6月19日。ロックでイク日だ。イカせてやるよ!」
ワタルのMCも絶好調だ。
4月に発売された最新アルバム『The World’s Edge』を携えての全国23ヵ所を回ったツアー『DOES tour’09「The World’s Edge」』のファイナル。メンバーとオーディエンスの感情が互いに高ぶっていき、上昇気流に乗っていくような凄まじく熱いアクトだった。
いつものSEに乗って登場したケーサク、ヤス、ワタル。3人がいきなり天井を突き破るかのような爆音を鳴らした。そして、一瞬の静寂を破るようにワタルがギターをかき鳴らす。“曇天”のイントロだ。その瞬間、フロアからはちきれんばかりの大歓声が沸き、体感温度が一気に上昇していった。
“曇天”に始まり“世界の果て”で締めくくられた本編は、アルバム『The World’s Edge』の世界観を余すところなく表現し尽くしていた。特に今回すごかったのは、ケーサクのリズムだ。“レインボウ・セブン”の腹にずっしりと響く4つ打ちのバスドラや“ワンダー・デイズ”の弾むようなロックンロールのリズム、ハードロックやメタルを意識した“インディゴ”や歌謡ディスコとでも言うべき“レイジー・ベイビー”もシンプルなのに多彩で、どっしりと構えているのに飛び跳ねるようなリズムはパワフルにオーディエンスを牽引していた。文学的に語られる言葉と美しいメロディ、重厚なバンド・アンサンブルに加えて、次にDOESが手に入れたのはグルーヴだ。しかし、ジャンプしたり、手拍子をしたり、拳を突き上げたり、フロアを踊らせていたことは確かなのだが、それらの曲をダンス・チューンと呼んでしまうにはなんだか軽々しくて気が引けるのは、やはり質実剛健なDOESというバンドの性質からくるのか…。
そして、もう1つ素晴らしかったのは、緩急のバランスがよく考えられたセットリスト。絶妙なタイミングでミディアム・テンポの楽曲が織り交ぜられ、クール・ダウンさせたかと思えば再びヒート・アップ!というように一時も休むことなど許されない、終わってみれば最初から最後までクライマックスのような状態がずっと続いていたような気がする。終始真っ赤なライティングの中、静かに燃え上がるように演奏された“トーチ・ライター”や、穏やかに歌い上げたロマンティシズム溢れる“君の好きな歌”、本編ラストとなった《何も知らないまま/過ぎた日々にも意味があるはず》と歌う“世界の果て”など随所で披露された聴かせるナンバーでは、DOESの表現にさらなる深みを感じることができた。
そして、何より凄かったのはツアー・ファイナルを迎えたメンバーの興奮度合。ヤスは途中で汗だくになった1回も洗ってないという革ジャンを脱いで、「俺のエキスと君達の汗が、情熱が入ってるんだよ。ここまで来られたのは君達のおかげです!」と感謝の言葉を述べたり、ケーサクは「最高に楽しいね! 最後がこんなに楽しくて嬉しい」、ワタルは「興奮してます。イク時は一緒だ!」と、本当に最高の時をこの会場にいた全員と共有していた。ワタルは何度もステージで仰向けになりながらギターをかき鳴らし、ヤスもステージとフロアの間に下りて、できるだけ近いところでオーディエンスとこの熱を共有しようと近づいていった。
「全国23本、ぱつんぱつんでね。休むまもなく。でも、みんな楽しそうで。それを見て僕らもエネルギーをもらって。本当に完璧や。音楽やってて良かったなと思います」と最後に語ったワタル。3ピースというシンプルな構成でどれだけ人を揺さぶるロックを奏でられるか。そんなロックを追求し続けるDOESが、「僕らが東京でやるきっかけになった曲をやります」と言って演奏した“ステンレス”が本当に素晴らしかった。曲展開もリズムもシンプルなところで、それぞれが出す楽器の音色の分厚さと奏でるメロディの美しさがとても映えていた。これがDOESの原点であり、今のDOESだから鳴らせる深化したサウンドだ。ラスト“明日は来るのか”を演奏し終えた後、よほど名残惜しいのか3人ともなかなかステージを去らない。両手を広げて満面の笑みで「すげー、楽しかったよー!」と叫ぶワタル。タオルをフロアに投げ入れるヤスとケーサク。最後に3人でガッチリと肩を組んでお辞儀をし、充実したツアーの最終日を締めくくった。(阿部英理子)
1.曇天
2.シンクロニズム
3.サブタレニアン・ベイビー・ブルース
4.レインボウ・セブン
5.戯れ男
6.デイ・サレンダー
7.ビート・クラブ
8.夏の散歩道
9.トーチ・ライター
10.ワンダー・デイズ
11.バスに乗って
12.君の好きな歌
13.陽はまた昇る
14.ネバー・マインド
15.太陽病
16.インディゴ
17.レイジー・ベイビー
18.修羅
19.世界の果て
アンコール1
20.色恋歌
21.三月
アンコール2
22.ステンレス
23.明日は来るのか