凛として時雨×THE BACK HORN @ 日比谷野外大音楽堂

凛として時雨×THE BACK HORN @ 日比谷野外大音楽堂
凛として時雨×THE BACK HORN @ 日比谷野外大音楽堂
凛として時雨×THE BACK HORN @ 日比谷野外大音楽堂
凛として時雨×THE BACK HORN @ 日比谷野外大音楽堂 - 凛として時雨 pic by 河本悠貴凛として時雨 pic by 河本悠貴
さてさて、7月25日現在、フジ・ロック・フェスティバル09のため当社ライターの大半が出払っているわけですが、RO69では期間中のライブももちろんちゃんとレポートします。しかも今回はフジと開催時期を重ねることにも何ら躊躇がなかったであろう超人気イベント、初の野音開催となった凛として時雨presents「トキニ雨#12」。チケットはやはり早々にソールド・アウト。

3日前にライブDVD『創造のパルス』をリリースしたばかりの今回の対バン相手THE BACK HORNは、プリミティヴなドラミングが冴えるオープニングの“ブラックホールバースデイ”から、観ているこっちが心配になるくらいの飛ばしよう。ボーカルの山田将司がいつものように全身を使って歌を表現する両脇で、菅波栄純(G)と岡峰光舟(Ba)が楽器をぶんぶん振り回しながら動き回る。

全体に神話的というか、英雄的というか、濃厚な物語の薫りがするTHE BACK HORNの楽曲の中では比較的さらりとした質感がある“未来”の後で、ドラムの松田晋二によるMCが入る。「野音楽しんでますか? 今回は凛としとして…」と噛んだ松田に客席が沸く。「えー、凛として時雨とは3度目の対バンということで。凛としてる感じなのに時雨、っていうのがすげえいいバンド名だなと思ってて。僕、松田晋二っていう名前なんですけど、松田凛で生まれたかったくらいです」と、いつもの福島訛りでなごやかなムードを作る。

涼しい風が吹き始めた野音で雲間を縫うようなメロディが心地良い“光の結晶”、そしてラストの“コバルトブルー”で、THE BACK HORNの9曲50分間のセットは終了。

20分の転換のあいだにそれまで青かった空はみるみる暗くなり、すっかり夜に。“想像のSecurity”で幕を開けた凛として時雨のセットの半分は5月リリースの『just A moment』から。残りの半分は、夏の野音で聴くとかなり夏っぽく聴こえる“knife vacation”、客席のあちらこちらでダンスが始まった“DISCO FLIGHT”などの過去作品。“Tremolo+A”では TKが椅子に腰掛け、硬質な音色のアコースティック・ギターをかき鳴らす。

「今日は日比谷まで来て下さってありがとうございます。…もう立ってますけど、ドラムのピエール中野さんです」と7曲終わったところでTKが言い、恒例のピエール中野によるMCタイムへ。「よぉー!! 『凛としとして』時雨です!」と松田の言い間違いを早速ネタにする。「お前たち、盛り上がっているのか!? おー、嬉しいな! オレ、嬉しくて、ちん○ん大きくなっちゃいそう」とやりたい放題。それから「松田さんがすげえなまってる(モノマネ付き)」、「今日着てる田代まさしTシャツは本人のサイン入り」などの話が続いた。

MCが終わり、新作のリード曲“JPOP Xfile”、それからシングル曲“Telecastic fake show”と続く。この2曲はリズムやリフのパターンを次々に変えていく彼らの方法論がもう隙がないくらいまで突き詰められていて、個人的には繰り返し聴いている大好きな曲。これはテレビのチャンネルをぱちぱち替えたり、ネットサーフィンしたりすることが習慣化してしまった時代には受け入れられやすい手法だと思う(そういえばどちらの曲にもテレビ番組みたいなタイトルがついている)。

とはいえ彼らがそんな視覚ばかりが刺激される時代を完全に客観視しているというわけでもないようで、『just A moment』の収録曲が「目」、「視線」、「視界」、「光」、「イメージ」、「見える」、「見えない」などのヴィジュアルな歌詞で満ちている一方で、生身の人間同士が出会う時には「刺す」、「殺す」、「壊す」、「犯す」といった結果になって決してまともに触れ合わないように、バンド自身もある種の「痛み」から逃れられないでいる。でもこの「痛み」こそが、逆説的な話だけれど、ひとつのテーマとして曲を構成する各ブロックのあいだに見えないつながりを築くことで、彼らの方法をテレビのチャンネル切り替えとは決定的に異なるものにしているのではないかという気がした。

ラストはそんな痛々しさがありのままの形で解き放たれる“傍観”。ばらばらに帰っていく我々オーディエンスも、今夜のライブを通じて何かのつながりを築けたのだろうか。(高久聡明)

THE BACK HORN
1.ブラックホールバースデイ
2.世界を撃て
3.罠
4.サーカス
5.赤眼の路上
6.未来
7.蛍
8.光の結晶
9.コバルトブルー

凛として時雨
1.想像のSecurity
2.ハカイヨノユメ
3.knife vacation
4.秋の気配のアルペジオ
5.DISCO FLIGHT
6.Tremolo+A
7.mib126
8.JPOP Xfile
9.Telecastic fake show
10.nakano kill you
11.傍観
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