もう、ひたすら圧倒されっぱなしだった。

シングル『BACK ON MY FEET』を７月１日にリリースしたばかりのブンブンサテライツによる、一夜限りのスペシャル・プレミアム・ギグ。きっと新たなモードを見せてくれるだろう、という予感はしていた。新作のサウンドは、高速ビートとトランシーなシンセを主体としたもの。４th『FULL OF ELEVATING PLEASURES』から昨年の６th『EXPOSED』まで彼らが突き詰めてきた「ロック・バンドとしての正面突破」の格好良さとは一転したサウンドだった。より深い世界観を垣間見せるものだった。しかしそれがひとたびステージで解き放たれると、こんなにも激しくて、性急で、血が沸騰するようなものになるとは。

暗転してステージに二人が登場すると、まずは不穏なピアノのループからライブはスタート。いきなりニュー・シングル収録の“ALL IN A DAY”、“BACK ON MY FEET”を立て続けに演奏する。かつて体感したことのないほどの強力な低音が、服の裾をビリビリと揺らす。煽り立てるような四つ打ちのビートが体温を上げていく。

ステージ上には、ほぼ全身黒で固めた中野・川島の二人。そして新たにサポートに加わった女性ドラマー。シングルにも出演していたoakのyokoさんだろう。この人が、その細い体のどこからと思うくらいのパワフルなビートを叩き出す。そして中野は曲によってギターとベースを持ち替えるが、二人とも構えている楽器はフライングＶ。見た目からしてえらいソリッドで格好いい。

ステージは、そのまま途切れることなく『EXPOSED』収録の“MORNING AFTER”、ライブのみで披露されている“Dig The New Breed”へ。彼らのライブでは毎回のことだが、ほぼ全ての曲が新しいアレンジに生まれ変わっている。その結果、サウンドがさらに肉体的にビルドアップされている。続く“Moment I Count”、“INTERGALACTIC”はもはや鉄板。曲中で音量を抑えたブレイク部分と爆発するようなサビが交互に訪れ、まるで大きな波が飲み込んでいくように、フロアに興奮状態をもたらしていく。まるで音に身体ごと揺さぶられるような感覚だった。

さらに新境地を感じさせたのが、ニュー・シングルの４曲目に収録された“CAUGHT IN THE SUN”。川島はギターを弾かず、スタンドマイクでボーカルに徹する。シャウトではなく、あくまで“歌”を感じさせるエモーションに満ちたメロディ。荘厳さすら感じさせるシーケンスがそれを包み、最後にはノイズの洪水へと至る。続く本編ラストの“FOGBOUND”も、トライバルなビートとサイケデリックに上昇するシンセループで、ほとんど新曲と言えるくらいに生まれ変わっている。ロック・バンドとしての筋力をまとった上で、再びダンス・ミュージックのアンセミックな興奮へと向かった彼らの姿があった。

アンコールは、一転してロックンロールな“KICK IT OUT”、そして“LIGHT MY FIRE”。さらにダブル・アンコール“DRESS LIKE AN ANGEL”では、中野と川島がまるで斬り結ぶサムライのようにリフを叩きつけて、終了。アンコールまで含めて全11曲。それで２時間近く。単純に平均しても１曲10分近くやっている計算になるが、そういう長さをまったく感じさせない。というか、むしろ気付いたら終わっていたという感じだった。僕は２階席で観てたのだが、モッシュ・ピットで踊りまくっていたらより一層そう感じただろう。ダンスとロックのクロスオーヴァー的な音を鳴らすバンドは、ここ数年、日本でも海外でもいろんな人達が登場してきている。でも、ブンブンの鳴らす音はそういうシーンの動向うんぬんをどうでもよくするような、孤高の迫力を持っている。そういうことを改めて痛感させられた一夜だった。（柴那典）

１．ALL IN A DAY
２．BACK ON MY FEET
３．MORNING AFTER
４．Dig The New Breed
５．Moment I Count
６．INTERGALACTIC
７．CAUGHT IN THE SUN
８．FOGBOUND

アンコール
９．KICK IT OUT
10．LIGHT MY FIRE

アンコール２
11．DRESS LIKE AN ANGEL