今年で4回目を迎える、日本最大のメタル/ヘヴィ・ロック・フェス=「LOUD PARK 09」。「SLAYER/MEGADETH/ANTHRAXとスラッシュ・メタル四天王のうち3組が集結!」というトピックも「今年は場所を変えて3年ぶりに幕張メッセでの開催」という条件設定も、何やら2006年の「第1回」のデジャヴ感を覚えなくもないし、去年/一昨年のさいたまスーパーアリーナ開催時の2ステージ制から今回3ステージ制(メイン・ホールの2ステージ「BIG ROCK STAGE」「ULTIMATE STAGE」と、飲食エリアを隔ててひと回り小さいステージ「SANCTUARY STAGE」)に変わった場内レイアウトも、言ってみれば第1回と同じ。会場設計で違うのは、メイン・ホール後方にひな壇形式の指定席が設けられ、そのチケットさえ確保すればじっくり座って観戦できるようになった……という点ぐらい。
しかし……最も大きく違ったのは、そこにあるオーディエンスの空気だった。言わば「再評価に沸き立っていたメタル界の事件」としての驚きと興奮と狂騒感に包まれていた第1回とは異なり、今回は「2009年の今もリアル・タイムで、しかも真っ向勝負でメタルを聴き支持し、2日券を完売にし1日目を超満員にしてみせるファン」の自然でタフな熱気に包まれていた、ということだ。そして、これだけ多種多様な音楽が提示され尽くした00年代最後の年にあって、今なおメタル/ヘヴィ・ロックにしか描き出せない世界がある――ということを、この日メッセに集まったアーティストたちはこぞって示していた。
特に、トリを飾ったJUDAS PRIEST。「今日はスペシャル・ライヴだ」とロブ・ハルフォードが言っていた通り、現在回っているツアー同様『ブリティッシュ・スティール』完全再現を含む、演奏時間100分(!)というワンマン同等の堂々のアクト。もはや海賊の頭領のような佇まいのロブの焼けた鉄のようなシャウトと重厚なブリティッシュ・メタル王道アンサンブルとバイク・パフォーマンスが渾然一体となって、禍々しい世界の扉を開けていた。そしてMEGADETH! “セット・ザ・ワールド・アファイア”“ウェイク・アップ・デッド”“ハンガー18”と容赦なく爆弾級のマスターピースを次々投下。こちらもトータル80分に及ぶ長尺のステージの中で、デイヴ・ムステインの真摯で邪悪な絶唱に昨年加入のギタリスト=クリス・ブロデリックが呪術的な魔力を与えていた。
アンジェラのデス声とツーバスの波動、そして幕張メッセが重力崩壊するんじゃないかというレベルの轟音を炸裂させたARCH ENEMY。“フュエルド”“ブリング・ザ・ノイズ”など鍛え上げられた格闘技のような質実剛健スラッシュ・メタルでメイン・フロアに巨大な渦巻きを描き出してみせたANTHRAX。ソリッドなリフとドンのシャウトで巨大な空間を切り裂いたDOKKEN。そして、ACE FREHLEY出演キャンセルのピンチヒッターとして急遽参戦した日本の豪傑LOUDNESSの鬼気迫るアクト! 「LOUD PARK」どころか「EXTREME PARK」とでも呼びたいぐらいの、ありとあらゆるエモーションと邪気がメーター振り切れっ放しになったような11時間だった。世の禍々しさを音楽に宿らせ、それに魂を乗っ取られまいと渾身の力で対峙し、圧倒的な音量とともにフロアへと放射する……メタル/ヘヴィ・ロックという音楽だからこそ描き出せる、どこまでも暗黒で、だからこそ切実でダイナミックな祝祭のかたち。このフェスがロック・ファンに強く支持されている理由を、改めて肌で感じた。
この日は昨年で言うところのDRAGONFOECEのようなメロディック系のアーティストがいないので、STEEL PANTHER/OUTRAGE/FIREBIRD……とタイムテーブルが進むにつれ暗黒度が高くなっていく印象が、今年はより強いのかもしれない。唯一異色だったのは、80sヘア・メタル直系の楽曲からシーケンスを駆使したメタル・ディスコ(!)的楽曲まで繰り出していたカナダの新鋭=BLESSED BY A BROKEN HEARTくらいだろうか。
ちなみに。かつてドッケンで名を馳せたジョージ・リンチのLYNCH MOBをはじめ、FADE/HIROAKI TAGAWA/POISON THE WELLらが出演していたのが、第3のステージ=SANCTUARY STAGE。メッセに朗々と響き渡った暗黒ゴス・オペラでステージの幕を開けたLIV MOONや、“移民の歌”から“天国への階段”まで繰り出して喝采を浴びていた本家公認(?)ツェッペリン・カヴァー・バンド=LED ZEPAGAINも、1日目の熱気をさらに不穏に煽っていた。なお、2日目にこのステージに出演予定のANVILが、映画『アンヴィル~夢を諦めきれない男たち』のプロモーションを兼ねて1日目からサイン会を敢行、怒濤の人だかりを作っていたのも印象深い。文字通り夢につまづいていた彼らに闘志を与えたのが、まさにここ、2006年のLOUD PARKだったのだから。
2日目も、ここ幕張メッセからレポートします。(高橋智樹)
LOUD PARK 09(1日目) @ 幕張メッセ9・10・11ホール
2009.10.17