10-FEET @ ZEPP TOKYO

9 月20日(日)に釧路から始まり、2月24日(水)に地元京都で終わる、60本近いツアー『“Life is sweet”TOUR 2009-2010』の24本目、ZEPP TOKYO。
今日のゲストはNorthern19。出てくるなりフロアは、「何? これ、Northernのワンマン?」みたいなヒートぶり。そんな完全ホーム状態で(確かチケット発売時には出演をアナウンスされてなかったにもかかわらず)フロアをもっていき、そこからテンションを上げ放題上げながら、全9曲をあっという間にプレイし終えた。そんな感じだった。
にしても、初めてこのバンドを知ってもう何年か経つけど、ブレやほころびや各楽器のズレが一切ない、ほんとに鉄壁で完璧なライブをやるバンドに、どんどんなっているにもかかわらず、なんというか、「手慣れている」「こなれている」感じに全然ならないのが、すごいなあと思う。その、最初に知った時のみずみずしさや青さが、今でもそのまんま音から放たれている感じなのだ。いい時間だった。

で、10-FEET。ここ1年くらい、ライブを観る度に「うわ、こんないいライブやるバンドだったっけ」「こんなすごい音出す人たちだったっけ」と毎回驚いてきたので、今日もそうなんだろうな、と思っていた。
違いました。久しぶりにそうじゃないライブを観た、と言ってもいい。
いや、ムードも空気も雰囲気も、ニュー・アルバムの曲と過去の代表曲をいい感じに混ぜた選曲も、TAKUMAのMCも、NAOKIの機材トラブル時のフォローも、KOUICHIのボケも、そしてそれに全身全霊で応えるオーディエンスも、すべて最高だった。ZEPP、空調が追いつかなくて、途中から真夏のような気温になっていた。
だから、僕もとても楽しんだんだけど、ただ、「うわ、こんなすごかったっけ」という、圧倒的な音を出し歌を歌う、そんなライブではなかったのだ。
あ。違う。TAKUMAの歌には、「前はこんなふうには歌えなかったよなあ」という感慨を覚えた瞬間があった。しかし、それ以外は、ここ最近の「ものすごい10-FEET」ではなかった。各自の出音や、アンサンブルや、グルーヴに、アラやほころびが見える瞬間が、結構あった。

そんなことない、すごい成長ぶりを示した完璧なライブだったじゃないか。という方もいると思う。そういう方には申し訳ないが、でも、僕はそう感じた。
これ、PAのバランスのせいかな、と思ったり、TAKUMAの声、高音部がちょっとかすれてるから体調が本調子じゃないのかな、と思ったり、そうだ2Fで観ているからかも、と思って途中で1Fに降りてみたり(こういう大規模のライブハウスって、2Fと1Fでは音が全然違うことがよくあるのです)、いろいろ考えた。
で、思い当たった。
前にもこんな10-FEET、何度か観たことがある。いつ。ニュー・アルバムを作った直後だ。

10-FEETというのは、「できる範囲で」「やれる限りで」音楽を作ってきたバンドではない。「できない範囲までで」「やれる限りを超えて」音楽を作るバンドだ、と僕は思っている。
演奏技術やアレンジの面でも、その音や歌詞にこめる感情や思想の面でも、「今自分たちが表現できるのはこのへんまでだから、その範囲で最高にいいものを作ろう」という方法では、音楽を作らない。出したい音、表したい感情や思想が、今自分たちが表現できるレベルよりもはるか先にあって、でもどうしてもそれをやりたいから、というかそれをやらないと意味がないと思っているから、考えたり、悩んだり、工夫したり、死にそうに煮詰まったりしながら、なんとか、無理やり、どうにかしてそこへ到達する。そういう形で、音楽を作ってきたバンドだ。
すべてのアルバムが本当にそうだったか、と言われると自信ないが、少なくとも2006年の4thアルバム『TWISTER』以降の3枚は、確実にそうだと僕は思う。特に、最新作の6thアルバム『Life is sweet』は、その極みのような、よい意味で「何これ!? 俺が知ってる10-FEETはこんなバンドじゃない!」というくらいの作品だった。

で、そういう作品を作って、次に10-FEETが取り組むことは何か。それを、ライブで実際にできるようになることだ。レコーディングでできたからといって、それをそのままライブでやれるわけではないし、ただそのままやればいいってもんでもない。ライブで最高に輝くよう、それをビルドアップし磨き上げ、自らのライブにおける表現力を高めていく作業を、ツアーでやることになる。
だから、あたりまえだけど、最初のうちは、まだできない。しかし、ツアー後半や、そのツアーが終わってイベントやフェスに出る頃には、「嘘!? こんなすごかったっけ、10-FEETって」と驚くようなすごいことになる。

というわけで、ここしばらく僕が観ていたのは、言わば「ツアーですごくなった後」の10-FEETだったってことです。で、それに慣れて忘れてたけど、今日のライブのような時期があるから、そういうすごい時期もあるということです。今日もよかったけど、今後も楽しみ。

それから。ここのところネットで問題になっている、ライブのマナーに関することも、TAKUMAはMCで二度、言及した。たとえライブの空気を壊してでも、そこにちゃんと触れ、自分たちの意志を伝えるのが、自分たちの責任だと思っている、そういう感じだった。
以前、ビークル等、いくつものバンドが通った道を、10-FEETもまた通っているということだが、そこから逃げようとしていないどころか、そもそも逃げるという発想自体なさそうなのが、10-FEETだなあと思ったりした。

なお、14日土曜日、10-FEETのこのツアー、韓国・ソウルです。ちなみに1週間前は台湾・台北。前にアメリカ・ツアーに行った時は、がっちりアメリカ国内のみだったけど、今回は近いせいか、このように普通に国内ツアーに組み込まれています。(兵庫慎司)
公式SNSアカウントをフォローする

最新ブログ

フォローする