トップバッター、メインステージに登場したのはyour gold, my pink。「はじまるよー!」という小塚(Vo&G)の合図とともに、乘峯(Dr)のアッパーなリズムと小塚と板持(Vo&G)のシンセの連弾でエレクトロ・サウンドを構築。垣守(B)が叩くコンガが加わり圧倒のダンス・グルーヴを叩き付けて、フロアを温める。ツインボーカルが織り成す高音で柔らかな歌声や、“My satan is blue”での「Fu~!」といった掛け声は不思議な浮遊感と脱力感を生み出していているのだが、意外とバンドサウンドはソリッドで骨太。ラストの“twilight, twilight”では、まさに武器とするドリーミーなメロディとともに疾走するリズムで会場を桃源郷へと誘った。初めて彼らのライブを観た時、「このバンド、掴めないなあ」という印象を持ったのだけど、今日もやっぱり掴めなかった。もちろん良い意味で。そういう一筋縄ではいかないところが、your gold, my pinkにはまってしまう所以なんだろうなと改めて思った。
場所を移して、アコーディオンと唄の姉妹ユニット、チャラン・ポ・ランタンがバーステージの雰囲気にぴったりなレトロな歌謡ショーを展開。小春が奏でる哀愁漂うアコーディオンと、時折こぶしを効かせた渋さと、真っ直ぐに突き抜けるような若さ(なんと16歳だそう)を兼ね備えたももの歌声が、会場を圧倒させていた。まるでミュージカルを見ているような気分にさせられるくらい、気持ちの込め方が半端ないのだ。歌っているというよりかは、もう演技しているという感じ。そんな抒情的なステージとは裏腹、芸人かと思うくらい流暢な小春のしゃべり(自虐交じり)が会場の笑いを誘い、テンポよくあっという間にラストを迎えてしまった。あとでネットで調べたら、ももは女優活動、小春はジャグラーとユニットを組んだりして大道芸の活動などをしていたりするそうです。どおりで納得のユニットでした。
とても19歳とは思えない、90年代の王道ハードロック・サウンド全開で鋭く突き刺さるようなパフォーマンスを見せてくれた小林太郎。いきなり1曲目“ドラグスタ”で骨太でゴリゴリ、オヤジ世代も頷けるであろう鋼鉄のサウンドに面食らってしまった。今の時代にこういう音楽を鳴らして、それが懐かしさを全く感じさせない、というかむしろ新鮮に響くのは、やはり彼の19歳なりの感覚や実直な想いが投影されているからなのだろう。4つ打ちのビートを取り入れまさにロックをロールさせたような“安田さん”、バラード・ナンバー“美紗子ちゃん”とどれも正攻法で突き詰めた楽曲だし、しかも裏打ちされたギター・テクでキメのリフを繰り出す姿や、喉をつぶしたようなハスキーな歌声には、年には見合わないセクシーさが滲み出ている。これから、どんなふうに自らのロックを覚醒させていくのか楽しみになってきた。
ユコ(Key&Vo)が「ゴォーーン!!!」と銅鑼を一発ならし、ゲイリー(Dr.&Vo)が「モーモールルギャバンでーーーす! ジャンルはJ-POPです!よろしく!」と全力のスタートダッシュをかましたのは京都からやってきた3ピース・ギターレス・バンド、モーモールルギャバン。始まりから終わりまで、ずーっとダッシュしているようなエネルギッシュなパフォーマンスでフロアを踊らせる。「J-POPの大先輩、SUPER BUTTER DOGの曲にインスパイアされて創りました」という曲紹介で始まった“POP!烏龍ハイ”では、オーディエンスが腕を高く掲げて「烏龍ハイ!」と声を荒げて踊りまくる。弁護士になるためにバンドを辞めていった野口に捧ぐ“野口、久津川で爆死”なんて、粗暴すぎてもうハチャメチャもいいところ。だけど、ちゃんと成立しているのは彼らの音楽に一体感を生み出せる、共有できる、つまりポップ精神がちゃんとあるからなんだと思う。ユコがボーカルをとる“サイケな恋人”の、あの切なすぎる鍵盤と歌は反則でしょと言いたくなるくらいにJ-POPの極みを感じさせる名曲だ。ラスト、ゲイリーのパン
ツ一丁の姿に何も言わずしてフロアからパンティーコールが起こるのも、ある意味一体感。楽しませてもらいました。
そんな、モーモーの暑苦しい大狂乱から一転、静かなる攻勢をみせたのはplentyだ。オーディエンスが静かに見守る中、静寂を破るように鳴り響いたのは吉岡(Dr.)のリズムで始まる“後悔”。初めて観た時から堂々としていたけど、観るたびにどんどん演奏の芯が太くなっていくし、江沼の歌もどんどん前に出ている。今のところライブで欠かさず演奏している聴き慣れた曲だけど、相変わらずの衝撃を受けてしまう。4月21日に発売される2ndアルバムから披露された新曲“枠”は、plenty史上最高に疾走感のある曲で、枠の外へと発信される強烈なメッセージがずぶずぶと身体に突き刺さるような感覚に襲われる。耳に入ってくる一つひとつの言葉が意味する鋭さも格段に増しているのだ。鳴らしている音楽とかジャケットのイメージからは内にこもったイメージを持つかもしれないけど、はっきり言ってplentyはその真逆。決められた枠とか世界とかそんなものを食いちぎっていこうとする肉食系モンスターにほかならない。アルバム発売が本当に待ち遠しい。
イベントのトリを務めたのはGOING UNDER GROUNDの松本素生のソロ・プロジェクトSxOxUが、bloodthirsty butchersの田淵ひさ子(G)、つしまみれのみずえ(Dr)、岩崎なおみ(B)のオリジナルメンバーとともに登場。THE ROOSTERSの“DO THE BOOGIE”のカバーで幕を開け、一気にオルタナギターロック全開な“Don't want to be alone”で弾ける。全編にわたって英詞なのがゴーイングと比べて、すごく新鮮なイメージだし、サウンド的にもゴーイングに通じるメロディの良さがありながら、ピリッとした刺激や異物感がバランス良く混入された田淵のリフやダイナミックなみずえのリズムなど脇を固めるサウンドがゴーイングとは全く異なるものを生み出していた。「今日は友人の結婚式だったんだよー。もう演奏する力しか残ってないから微動だにしないで歌うから、みんなで盛り上がって」とあくまで力を抜きつつ衝動的に好きなことをやるというスタンスを貫いている姿もソロとしての充実を感じさせる。
アンコールでは松本素生としてのソロ曲“2030”をエレキギターの弾き語りで披露してくれた。先ほどソロ・プロジェクトとは打って変わって、松本素生という一人の人間をクローズアップした飾りのないシンプルな歌が会場に響き渡り、一気に距離を縮めてオーディエンスの心をさらってくれた。(阿部英理子)
<セットリスト>
your gold, my pink
1.rhythm session ~Foolish Feeling~
2.Are you sensitive?
3.My satan is blue
4.Nightride
5.twilight, twilight
チャラン・ポ・ランタン
1.夜空の小鳥
2.カチューシャ
3.名もなきマチネ
4.親知らずのタンゴ
5.曇りの回転木馬
小林太郎
1.ドラグスタ
2.ソフィー
3.SAKURA CITY
4.安田さん
5.美紗子ちゃん
モーモールルギャバン
1.細胞9
2.POP!烏龍ハイ
3.ユキちゃん
4.野口、久津川で爆死
5.サイケな恋人
plenty
1.後悔
2.からっぽ
3.枠
4.ボクのために歌う吟
5.拝啓。皆さま
SxOxU
1.DO THE BOOGIE(THE ROOSTERSカバー)
2.Don't want to be alone
3.Funny Sunny Day
4.Remember
5.Summer's gone
6.VOID
アンコール
1.2030