東京スカパラダイスオーケストラ @ 東京体育館

東京スカパラダイスオーケストラ @ 東京体育館 - pic by 仁礼 博pic by 仁礼 博
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3月27日に両国で行われたスカパラ20周年総決算ラ イブ『東京スカパラダイス国技館』(RO69兵庫慎司 氏によるライブレポはコチラ→http://ro69.jp/live/detail/ 32639)に続いて、21周年キックオフ・ライブとして行われる『東京スカパラダイス体育館』@東京体育館。スケジュールの都合とか諸々あって、たまたまの後付けでこうなったのかも知れないけど、これではステージ・タイトルのためにわざわざ会場を押さえたのではないか、と勘繰られても仕方がない。だって、これぐらいのキャパの会場なら、他にもいろいろあるでしょう。「なんか国技館とか体育館でやりたい」という企画が持ち上がって、これだけのスケールで、それを実行してしまうという心意気がなんともスカパラなのだ。「スカは体育になったね!」とは、後の沖さんの弁である。アクティヴでアグレッシヴな、戦いの歴史が染み込んだ会場の空気が自分たちのライブに欲しかったのだと思う。
おれ、ここでコンサートを観たことあったかな? ちょっと記憶にない。たぶんこの体育館に足を踏み入れたのは、人生で2度目だ。1度目は、北米以外で初のNBA公式戦(開幕戦)がここ東京体育館で行われたとき。カードはフェニックス・サンズVSユタ・ジャズ。熱いゲームだった。1990年のことだ。奇しくも20年前の話ですね。

さて、スカパラ・メンバーの登場とともに大歓声が沸き上がり、早くもアリーナ/観客席問わずオーディエンスは総立ちになった。国技館では20周年を総ざらいするセット・リストだったけれども、今回は最新アルバム『WORLD SKA SYMPHONY』の全曲披露をはじめ、スカパラの現在を描き出すステージになっていた。『WORLD SKA SYMPHONY』のジャケットでお馴染みの、国技館でもメンバーが着ていた黄色いスーツではなく、全員が深いグレーのスーツを身に纏っている。もう俺たちは次のステージに進んでますよ、と言わんばかりの姿勢なのである。最新アルバムのオープニング・ナンバーでもあった“Boppin’ Bunny”で、GAMOが景気のいいアジテーションをぶちまけていた。

体育館にドンピシャリとはまる“A Song for Atheletes”で雄々しいユニゾン・ボーカルの歌が場内を満たすと、谷中が恒例のMCへ。「まずは天気にありがとうだよ。今日は体育館ということで、飛んで跳ねて、戦うように楽しんでくれよ」。そうなのだ。季節が冬に逆戻りしてしまっていたようなここ数日の天気とは打って変わって、この日は実に春らしい陽気でたいへん心地よいコンディション。しかも16時という珍しいぐらい早い開演時間だったのだが、それがとても贅沢な気分を誘うというか、たっぷりライブを楽しんでやるぞという気持ちにさせるのである。土曜日だし。地方からのファンにも、このタイム・スケジュールは嬉しいと思う。

ステージがピンクの照明に映える“明鏡止水”では、沖さんの艶のあるピアノの旋律が浮かび上がる。一辺倒にアッパーなだけではなくて、スキルと経験値を武器にさまざまなスタイルの高揚感を啓蒙してくれる今のスカパラはとてもいい。と思っていたら次の瞬間には“STORM RIDER”で、ステージ上の至る所で巨大な火柱が吹き上がり、爆発的な盛り上がりを導き出してしまうのである。「熱いぜ……ヤケドしそうなぐらい熱いぜ」と至近距離で火柱の熱の直撃を受けながら、役割上逃げることも叶わない可哀想なドラマーの欣ちゃんであった。
更にノンストップで往年のナンバーを駆け抜ける“トーキョースカメドレー 21st Anniversary Special Issue”。今回のステージはもともと『WORLD SKA SYMPHONY』中心の、ある意 味縛りのあるセット・リストだが、スカパラの20年の遺産というのは必ずしもレパートリーの数ではなくて、ライブで培われた表現の幅広さそのものにあるのだと思う。もはや緩急自在で強弱自在。自由にオーディエンスの心と体をコントロールしてしまうことが出来るのだ。

ここでいよいよ『WORLD SKA SYMPHONY』の目玉でもある最新のゲスト・ボーカル・シリーズが投下。一人目のゲストは、ピンクのタイトなドレス姿でステップを踏み、豊かなウェイビー・ヘアを揺らすクリスタル・ケイが登場である。高音で芯のあるキュートなソウル・ボーカルは、スカパラの歌モノ・シリーズの中でも貴重な存在感だ。暑苦しい(褒め言葉です)スカパラの男ステージに華やかさが添えてくれた。その後、加藤の印象的なディレイ・ギターが加えられたスロウ・ファンク・ナンバー“東雲25時”などを挟み、そして珍しくNARGOが長めのMCを行う。

「今回のアルバムは個人的にジャケットも大好きで、あのデザインはマネージャーの手作りなんです。レコーディングしている脇でこう、あのロゴとかを鋏でチョキチョキと切ったりしていて。20年以上やっていると、いろんな人が思う《スカパラはこうあるべきだ》というイズムが、バンドを支えてくれます。ギムライズム、青木イズム、残念ながら亡くなってしまったメンバーもなんですけど、それを大切に抱えて、そしてまた進んでいきたいと思いす」

そして彼自身がリード・ボーカルを務める“雨の軌跡”が披露されたのだが、この歌が本当に素晴らしかった。スカパラが描き出す変幻自在な音楽表現の説得力は、もしかするとその「捨てなさ」がもたらすものなのかも知れない。

本編終盤は豪華絢爛そのものであった。スーツとハット姿で力まずとも力強いボーカルを聴かせる奥田民生の“流星とバラード”には、「日本代表」というフレーズが脳内に勝手に降ってくるような熱演だ。ストリングス隊が登場してスカパラとセッションしたエディット・ピアフの名曲“愛の讃歌”では広大な会場を埋め尽くす程の紙吹雪が舞い、そしてギターを抱えて登場した斉藤和義は、沖さんの口笛メロディとともに滋味深い、エモーショナルな“君と僕2010”の歌を残してバンドと共に去っていった。アンコールでは、ゲスト3人と共にあの「ブギの女王」笠置シヅ子の“ジャングル・ブギ”をカバーする。ゲスト3人がリレーする迫力の歌が圧巻であった。クリスタル・ケイが再び登場するとき、谷中が手を引いてエスコートしたのだが、それを見た民生が「それはダメだよ。単独プレイはダメ。映像的にはカットだね」とダメ出し。うむ、さすが民生。それが彼の思うスカパラの「イズム」である。一方、斉藤和義は、クリケイの佇まいを見てボソッと一言「ビヨンセみたい」と笑いを誘っていたのであった。

2時間を越えるステージでありながら、体育館を出るとまだ少し周囲は明るい。華やかさと21年目への強い意志が共存した、充実のパフォーマンスであった。『WORLD SKA SYMPHONY』を携えての全国ツアーは11月から、と発表されていたけれども、そのときにはもう新曲を披露するかも知れない、と加藤は言っていた。まだまだスピードを緩めず走り続けるスカパラに、置き去りにされないようにしたい。(小池宏和)

セット・リスト
1.Boppin’ Bunny
2.White Light
3.A Song for Athletes
4.WORLD SKA CRUISE
5.明鏡止水
6.STORM RIDER
7.KinouKyouAshita –New horn section ver.
8.Like Jazz On Fire
9.トーキョースカメドレー 21st Anniversary Special Issue
Perfect Future
Taboo SKA
Monteca
L.O.V.E.
FINGERTIPS
10.ずっと(VOCAL:クリスタル・ケイ)
11.ONE EYED COBRA
12.東雲25時
13.Juggling City
14.太陽にお願い
15.雨の軌跡
16.Boppin’ Bunny again!
17.流星とバラード(VOCAL:奥田民生)
18.Just say yeah!
19.愛の讃歌 with strings
20.君と僕2010(VOCAL:斉藤和義)

アンコール
21.Pride Of Lions
22.ジャングル・ブギ
23.DOWN BEAT STOMP

ダブルアンコール
24.SKA ME CRAZY
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