フラワーカンパニーズ @ 恵比寿リキッドルーム2デイズ

フラワーカンパニーズ @ 恵比寿リキッドルーム2デイズ
フラワーカンパニーズ @ 恵比寿リキッドルーム2デイズ
フラワーカンパニーズ @ 恵比寿リキッドルーム2デイズ
フラワーカンパニーズ @ 恵比寿リキッドルーム2デイズ
半年にわたり全国各地(仙台・広島・京都・千葉・大阪・名古屋・福岡・盛岡)で行ってきた、企画ライブ『20年だョ ワンマン2デイズシリーズ~被り曲なしの2日間~』の千秋楽、東京は恵比寿リキッドルーム2デイズ=4月24日&25日。タイトルどおり、1曲も同じ曲をやらないセットリストにする(ただしアンコールは除く)というルールです。『深夜高速』トリビュートアルバム、リクエスト・ベスト盤、日比谷野音ワンマン、企画ライブでスピッツと対バン、などなど、結成20周年イヤーでいろいろ仕掛けてきた、この1年のしめくくりでもあります。
それはライブレポしないと。でも2日付き合うのはちょっとあれなので、当初は1日目だけ観てレポートしようと思っていたのですが、いざ書こうとしてみたら、セットリストを明かせない状態で(書くと「ああ、じゃあ2日目はこの曲やらないんだ」ってわかっちゃうので)、こういう企画ライブのことを書くのは大変に難しいことがわかり、パソコンの前で途方に暮れたのと、あと、単に1日目があまりにもよかったので2日目も観たくなってしまったというのもあって、急遽「2日とも観てから書く」ということにしました。

まず、2日間のセットリストから。

24日             25日

1.It’s Only Roc’kyun’ Roll      白眼充血絶叫楽団
2 パンクはうまく踊れない      脳内百景
3 あの日見た青い空         NUDE CORE ROCK’N’ ROLL
4 永遠の田舎者           SHAKE MY LIFE
5 空想無宿             はぐれ者讃歌
6 流れ星だろ人生は         BELLBOTTOM JACK
7 吹っ飛んでJUMP         どろぼう
8 トラッシュ            どっち坊主大会(※新曲)
9 靴下               大人の子守唄
10 40                春を待つ
11 真赤な太陽            虹の雨あがり
12 深夜高速             吐きたくなるほど愛されたい
13 年をとるってこと         東京タワー
14 この胸の中だけ          春色の道
15 元少年の歌            馬鹿の最高
16 ロックンロール・スターダスト 捨て鉢野郎のお通りだ
17 終身刑             YES,FUTURE
18 俺たちハタチ族 プラスチックにしてくれ

アンコール1
19 発熱の男             たらちね
20 元気ですか            深夜高速(※ゲスト:YO-KING)

アンコール2
21 アイム・オールライト       元少年の歌
22 真冬の盆踊り           恋をしましょう

アンコール3
23                  さよならBABY
24                 ホップ ステップ ヤング


と、ご覧のように、1日目はアンコール2回で2日目は3回。2日目には“どっち坊主大会”という新曲をやりました。歌詞、及び、そのあとのMCによると、「前はくん付けで自分を呼んでいた奴が、久々に会ったら呼び捨てになっていた。なんだそれは。おまえが偉くなったのか、俺がしょぼくなったのか、どっちなんだ!」という思いを2分半にのばした曲だそうです。「こんな細かいテーマを曲にする奴、他におらんと思う。ギネス級じゃない?」と、MCで圭介を誉めたたえるグレートさんでした。

なお、アンコールで被ったのは、先月出た最新シングル“元少年の歌”と“深夜高速”のみ。2日目、その“深夜高速”で、シークレット・ゲストで、『深夜高速トリビュート』に参加したYO—KINGが登場。歌う前に、尿管結石の話を振ったところ、自分も経験者なのもあって、ものすごい勢いでそれに食いついてくる鈴木圭介(vo)に、「怖いよそんなに目をキラキラさせて! 目が、楽屋で話してる時の倍くらいになってるもん!」と脅えつつ、圭介と共に、重いものを軽々と遠くへぶん投げるような、すさまじい勢いのボーカルでもって“深夜高速”を歌ってくれました。

観ていて気づいたんだけど、これ、我々が思うよりも大変な企画だ。曲が被らないようにするというのは、つまり、ライブでやり慣れていない曲を大量にやらないといけなくなる、ということだ。普通のツアーなら同じメニューで回るわけで、あとフェスやイベントの時も、キャリアの長いバンドだと「やるのはだいたいこのへん」という代表曲って決まっているわけで、そうじゃない曲に対しては免疫がないわけです。
たとえばフラカンでいうと、“恋をしましょう”みたいに20年くらいライブでやり続けている曲と、15年前にツアーでやったっきりという曲では、全然違うわけですね。後者だと、練習して、譜面上はできるようになっても、なんせライブという現場でさらされていないので、プレイする時の解釈や表現のしかたが、こなれていなかったりするのです。
フラカンだけでなく、どんなバンドでもそうだ。たまに、アンコールで「何やってほしい?」とお客さんにきくバンド、いるでしょ。でも、お客さんが意外な曲を言うと、「や、それ、できない」って言ったりするでしょ。なんでできないんだ、自分たちの曲なのに。と、いつも思っていたけど、自分たちの曲だからってパッとできるわけじゃないのですね。演奏は覚えていて、間違えないようにプレイはできるかもしれないけど、イコール「客前に出していいもの」ってことではない、ということだ。考えたらあたりまえだけど。

この企画によって、昔の懐かしい曲、意外な曲も大量にプレイすることになったフラカンの2日間だったけど、というような、不慣れな曲ならではの危なっかしさや不安定さが、まったくなかった。このシリーズを延々やり続けてきたこと自体や、ここ1,2年、過去のアルバムの再発に合わせてその当時の曲ばかりやるライブを行ったりしていたのが功を奏したのか、終始堂々とした、そして勢いに満ちたステージだった。
特に目を見張ったのが、1日目でいうと“トラッシュ”“靴下”あたり、2日目でいうと“BELLBOTTOM JACK”“どろぼう”“虹の雨あがり”“元気ですか”あたりの古い曲。アレンジはほぼ一緒なんだけど、昔とは、なんというか「バンドの鳴り」が全然違う。地べたを這い回ってきた、長きにわたるキャリアで得たものが、そのまま音になっている。「こんなにかっこいい曲だったのかあ」とか「説得力が全然違うなあ」とか、何度も思いました。

ほんと、タフなバンドになったよなあ。体力も精神力も含めて、全然平気そうだもんなあ、こんなすさまじいライブを2日続けてやって。と、しみじみしながら観ていたところ、2日目の最後のMCでギター竹安、「結構大変だった。毎日、ツアー初日みたいな緊張感で」「今日で終わって、ちょっとホッとしている」とばらしてました。で、圭介に「まだ終わってないよ」「え? (セットリストに目をやる)……あ、ほんとだ。まだまだあるなあ」ともらして、フロアに笑いをもたらしてました。どこまで素なんだきみは。でも、やっぱり大変だったようです。
そういえば、2日とも、圭介の前のモニターに貼られたセットリストを、MCのたびにローディーのQ太郎が貼り替えていて、「何やってんだろ?」と思ったんだけど、途中で気がついた。
カンペだ、あれ。やり慣れていない曲の歌詞を、いちいちモニターに貼っていやがったと思われます、圭介さん。でも結局全然見てなかったので、「もし忘れても大丈夫」という保険みたいなものですね。

なお、2日とも超満員。一応当日券出してたけど、これソールドにしてもいいんじゃない? ってくらいの大盛況だった。2日目の最後のMCで、グレート曰く、埋まらないだろうけど、それでもいいからやろう、って思って、このリキッド2デイズを決めたんだけど、こんなに集まってくれて、しかもこんな最高の空気で、さっき演奏しながらグッときた(泣きそうになったんだと思う)そうです。
と、圭介、「あ、オエッときた?」とまぜっかえして、すぐに笑いに持っていっていました。というふうに、総じてMCもさえていた。笑わせるし、長すぎないし、言わなくていいこと言わなかったし。この人にしては珍しいと言えましょう。

2日目のアンコール3回目、昨年10月の日比谷野音の時に作ったスタッフ用のハッピを、フロアにどんどん投げ込んだあと、しみじみと“さよならBABY”をプレイ。続く “ホップ ステップ ヤング”の最後で、圭介、「死ぬまでやるぞー!」「死なねえぞー!」「死ぬなよおおお!」と絶叫し、超充実の2日間は幕を閉じた。

あと、1日目のMCによると、今アルバムを作っているんだけど、こないだのシングル2曲も合わせると全部で25曲も作ってしまい、一応全部デモを録ってみて、今、曲の選定をしているそうです。フラカンのキャリアでそんなこと、結構珍しいと思う。楽しみにしています。(兵庫慎司)
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