斉藤「いやほんと、NICOにはほんと感謝してます!」
須藤「『NICOのASSHOLE』だからね。『9mmの髭』はまだいいよね? 『ASSHOLE』も……(OGRE YOU ASSHOLEが)自分で言ってるからね。でも、NICOはたまったもんじゃないよねえ? NICO Touches the Wallsファンのみなさん、どうもすみませんでした!(笑)」
……と、後攻・HiGEの終盤に須藤がMCをかます頃には、赤坂BLITZのオーディエンスの間には、麻酔と笑気ガスと興奮剤を一気に吸引したような異様なテンションが満ちている。そう、HiGE企画の3ヵ月連続ライヴ・シリーズ=『9mmの髭とNICOのASSHOLE』は、4月:9mm Parabellum Bullet、5月:OGRE YOU ASSHOLEときて、今日はいよいよ最終回:NICO Touches the Wallsの巻である。
19:02、まずはNICOの登場。いきなり“THE BUNGY”のロカビリー&4つ打ち渾然一体ビートで満場のフロアに斬り込むと、「赤坂BLITZ! 今日はよろしくお願いしまっす!」の光村(Vo・G)のシャウトからすかさず必殺アンセム“ホログラム”へ! 荒々しくロックの核心へ踏み込めば踏み込むほどに艶と色気を増すバンド=NICOならではの爽快な爆走感が、HiGEファン中心のフロアもぐいぐいと引き込んでいく。「一夜明けて、さぞ傷心深いことかとは思いますけど……TBSの近くで何言ってんだ!って話ですけど(笑)」と、つい十数時間前にTBSで放送されていたW杯サッカーの日本×パラグアイ戦をネタに笑いを誘う光村。しかし、「今日はそんな傷をロックで洗い流そう!」と続け、そのままサムライ魂炸裂のソリッドなナンバー“武家諸法度”へ雪崩れ込む! 堂々たる口ひげをたくわえた対馬(Dr)の「俺もヒゲだああああ!」の絶叫には、さすがにフロアから爆笑が沸き上がる。
途中、“君だけ”“波”とバラードを挟んで「みなさんしっとりしてるね……」と思わず対馬(Dr)が口にするくらいフロアが「じっくり聴きモード」になったり、光村「今日は『ヒゲ』縛りかと思ったら、そういうことでもなく。(対馬は)『毛ガニ』って言われてましたけど(笑)」 対馬「ダシはうまいんだけどね……」のMCでクスクスと苦笑失笑を買ったりもしつつ、それでも鋭角ロック・ナンバー“BROKEN YOUTH”に突入すると、BLITZの空気ががらっと変わる。自らの全国ツアーを大成功のうちに終えた手応えと、この日の対バンを「完全アウェー戦」と位置づけた戦闘モード……その2つを手にしたNICOの最強アンセム結集総力戦ぶりには思わず戦慄が走るほどだ。ついには「来月出る新曲やります!」と、ニュー・シングルの楽曲“サドンデスゲーム”を披露! 脇目も振らず疾駆する4人のロックと妖気。そのまま“泥んこドビー”で「オー、イェー!」の爆裂コール&レスポンスをキメてみせたところで19:58、NICO終了。
転換を挟んで、20:26、いよいよホストのHiGEがオン・ステージ! いきなりスロウでメロウな新型HiGEサイケデリックの象徴的ナンバー“青空”でスタート。平熱感の中に滲む不穏なひずみ。アイゴン(G)という超個性的ベテラン・プレイヤーを新たにメンバーに加えたカオティックな編成の中でしかし、「今」のHiGEは、皮肉も博愛も焦燥感も倦怠感も全部抱えたまま、格段にシンプルなサウンド・フォーマットを獲得しつつある。ということが、続く“ランチ”“GOO”の平熱トリップ感にも顕著に表れている。そして、“ランチ”の段階ですでに大きく揺らぎまくっていたフロアは、“ロックンロールと五人の囚人”で液状化&瞬間沸騰! 「どもHiGEです! 今日はありがとう!」という須藤(Vo・G)の軽やかなMCを経て鳴り響く、“B級プロパガンダ”のトリプル・ギター! さらに“D.I.Y.H.i.G.E.”でのツイン・ドラム&トリプル・ギターが織り成す壮絶な音圧! かと思うと、“魅惑の深海パーティー”ではフィリポ(Dr)がピアニカ吹いてたり、“イカしてる俺は×××”ではハンドマイクの須藤とフィリポのツイン・ボーカル(!)が実現したり……と、自由自在なフォーメーションでもってロックとポップのツボを攻めまくる。かつてはHiGEのよきプロデューサーであったアイゴンが、ステージ上でマラドーナ監督のごとき独特の存在感を放ちつつ、しかもマラドーナよりも一枚も二枚も上手な策士として、チームHiGEの「自由自在にやる」という方針を最大限にバックアップしている。何が飛び出すか、自分たちでもわからないーーそんな6人の背徳的な高揚感が、観ているこっちにもリアルに伝わってくる。
「今日はほんとありがとう! 俺たちもアルバムが出るし、フェスもあるし……だから今日は、夏前の総決算みたいな感じで」と須藤はMCで話していたが、この日は結局“ダーティーな世界(Put your head)”も“白い薔薇が白い薔薇であるように”もなければ“ギルティーは罪な奴”もなし。奥田民生プロデュースの“サンシャイン”の軽快な白昼夢ポップ感、“虹”のダイナミックなギター・サウンドスケープ……といったディテールのみならず、ステージングの端々に至るまで「これからのHiGE」を力強くアピールするステージを展開していた。“青空”のゆったりしたタイム感ですっかりBLITZ内の時空がゆがんでいたらしいが、本編15曲でNICOとほぼ同じ1時間しか経っていなかった。
アンコールでは「俺が思うに、世界で最もヒゲが似合う男……いや、世界で最も毛に愛された男!」という須藤の呼び込みで、NICO対馬がHiGEのステージに再登場。得意げにブブゼラを吹く対馬。それと張り合ってプスッと失敗するフィリポ。結局、ブブゼラだけ吹いて姿を消した対馬に「将来、最も毛に嫌われたりして(笑)」と不穏な言葉を投げかけてニヤリとする須藤。足掛け8年ぐらいHiGEのライブを観ているが、この日はHiGEの抱える毒気と皮肉とユーモアが最もポップかつ爽快に昇華されていたし、それが圧倒的なフロアの熱量とカオスと歓喜を生んでいた。最高のステージだった。
ちなみに。NICOのツアー密着レポート、そしてHiGEの新作『サンシャイン』インタビューが(まったくの偶然だが)並んで掲載されている『ROCKIN'ON JAPAN』は本日(6月30日)発売。HiGE須藤取材では『サンシャイン』の内幕にがっつり迫ってみたので、そちらも併せてぜひ。(高橋智樹)
[SET LIST]
■NICO Touches the Walls
01 THE BUNGY
02 ホログラム
03 武家諸法度
04 そのTAXI,160km/h
05 君だけ
06 波
07 BROKEN YOUTH
08 サドンデスゲーム
09 泥んこドビー
■HiGE
01 青空
02 ランチ
03 GOO
04 ロックンロールと五人の囚人
05 B級プロパガンダ
06 D.I.Y.H.i.G.E.
07 溺れる猿が藁をもつかむ
08 魅惑の深海パーティー
09 サンシャイン
10 虹
11 イカしてる俺は×××
12 テキーラ!テキーラ!
13 ハリキリ坊やのブリティッシュ・ジョーク
14 黒にそめろ
15 髭よさらば
EC1 ブラッディ・マリー、気をつけろ!
EC2 MR.アメリカ
EC3 ミスター・タンブリンマン
HiGE×NICO Touches the Walls@赤坂BLITZ
2010.06.30