ホーン・セクション、コーラス隊、ダンサーを含む総勢20名を従え、圧巻のエンターテイメント・ショウを見せてくれたクリスティーナ・アギレラ。『バック・トゥ・ベーシックス』と題された今回のツアーは彼女の最新アルバム同様に、エラ・フィッツジェラルドやビリー・ホリディにインスパイアされた50年代のジャズ、ブルース、ソウルが根底のテーマになっていた。そこにヒップホップを混ぜ込んだレトロ・フューチャーなサウンドが、ボードビルやサーカス小屋、ムーラン・ルージュ……等を連想させるシアトリカルに作りこまれたステージ上で矢継ぎ早に繰り出されていく。
クリスティーナのお色直しは実に10回以上、センセーショナルなビジュアル・イメージを最大限に利用したショウ構成と、淑女から悪女まで自在に別ペルソナを演じきる彼女のパフォーマンスは、マドンナの後継者と呼ぶに相応しいものだった。しかも彼女の歌の巧さは半端ではない。同世代のアメリカの女性アーティスト中でも群を抜いた歌唱力と言えるのではないか。
細身のマイクロ・ボディに似合わぬド迫力のヴォーカルとダンスで満員の武道館を煽り、“エイント・ノー・アザー・マン”、“レディ・マーマレイド”、“キャンディマン”と大ヒット曲も満載。超プロフェッショナルな「魅せる」ショウで楽しませてくれた。「あなたは美しい」と社会的マイノリティを鼓舞する真摯なメッセージ性を持ったアンコール1曲目の“ビューティフル”は、涙腺決壊必至の感動的なフィナーレを出現させていた。お見事!!(粉川しの)
クリスティーナ・アギレラ @ 日本武道館
2007.06.20