9mm Parabellum Bullet@新木場STUDIO COAST

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9月9日と言えば9mm Parabellum Bulletのライブ。昨年は武道館での初ワンマンが行われたが、今年は自主企画ライブ・イベント・シリーズの『カオスの百年 Vol.7』だ。出演者がまたすごい。トリを務めるキューミリの他、SOIL & “PIMP” SESSIONSにBOOM BOOM SATELLITESという、キャリアも実力も申し分なしのライブ・アクトたちが招かれているのだ。意外性もあるけど、確実に盛り上がることだけは分かり切っているという、実に魅力的な組み合わせである。平日であるにも関わらずスシ詰め状態、開演前から熱気ムンムンのスタジオコーストで、この3アクトを迎撃せんとするオーディエンスたちであった。

● SOIL & “PIMP” SESSIONS
今日もダンディな社長が両腕を広げて「準備はいいかー!?」と問いかければ、大きなレスポンスが跳ね返ってくる。世界基準の、そして唯一無二のDEATH JAZZセクステット、ソイルのステージの幕開けだ。急転直下に聴く者をカオスの中へと叩き込むオープニング“Hollow”で、激しい音の交錯を轟かせる。終盤のドラマティックなテーマに入ったところでようやく落ち着いてショウの始まりを迎えられるというか、この曲の掴み性能の高さというのは良く出来た映画のオープニングのようですらある。社長は卓上のエフェクターでタブゾンビのトランペットにディレイをかけるなど、まるでDJのように積極的に音像に関わってゆく。元晴のエモーショナルで長いソロが炸裂する性急なナンバーでは、拡声器を持ち出してアジったりもするなど多忙な社長である。

みどりんがドラム・ソロで高揚感を煽り立てるサンバ・ビートを叩き出すと、それにoiコールで応じるオーディエンス。が、社長は「みんな、みどりんの顔見てみな。全然足りねえって顔してるだろ」と更なる高みを要求する。タブゾンビの扇動的なソロや丈青の叩き付けるよう(なのにメロディアス)なピアノに焚き付けられて、密集地帯のオーディエンスも輪になって踊っている。“POP KORN”で一面のハンド・クラップとシンガロングを巻き起こすと社長、「こんな素晴らしい組み合わせの中に呼んでくれてありがとうございます。今日はこの3バンドでひとつのセット・リストを作り上げる。信念を持って音を鳴らしているバンドたち。生半な気持ちじゃやられるぞ。そういうつもりで、あと2バンドを迎え撃って欲しい。おまえらなら、できるよ」と言葉を掛け、「SOIL & “PIMP”!」コールを巻き起こしながらラストの“SATSURIKUニューウェイブ”へと繋いだ。ウッドベースの弦をバチで叩き、強烈にダンサブルなベース・ラインを繰り出す秋田ゴールドマン。時と場所を選ばない狂騒仕掛け人としてのソイルは、今夜も健在だった。暑い。酸素薄い。

● BOOM BOOM SATELLITES
黒地にギラギラとロゴマークが輝くバックドロップが現れ、ブンブンサテライツの登場だ。静と動のコントラストを描き出しながら、川島の貫くような歌声を発火点に物語性のあるロック・サウンドを届けてくる。序盤は“DRAIN”“BACK ON MY FEET”という最新作のモードで、彼ら自身がこの2010年型ブンブンに本当に自身を持っていることが伺えるパフォーマンスだ。2010年のブンブンサテライツとは、即物的ではなく大きな物語性の中で感情の高まりを描くロックである。ベスト盤も新作も、そういうテーマで生み出されていた。それは直情的で生き急ぐ高揚感ではなくて、一人一人に丁寧に語りかけて全員を高みへと導くような懐の深さを持ったロックなのだ。ライブの現場で10年以上のキャリアを重ねた彼らが辿り着くべくして辿り着いた、理想的なフォルムのロックになっていると思う。

そして今回、改めて特筆しておきたいのが、川島のボーカリストとしての掌握力である。甲高く楽器的に響く声の個性といい、それが“STAY”のようなドラマティックな楽曲の中で訴えかけてくる生の言葉の力といい、本当に日本を代表するロック・ボーカリストだな、とつくづく思うパフォーマンスだ。さて、2010年型の物語性に満ちた、包容力のあるブンブンには他に何が出来るのかというと、過去のブンブンをすべて肯定することが出来るのだ。“KICK IT OUT”のような必殺曲では当然オーディエンスは跳ね返るように弾けてしまうわけだが、それだけではなくて過去のあらゆるブンブンにアクセスすることが出来てしまうのだと思う。今のブンブンは本当に凄い。ラストは興奮した中野がアドリブで弾きまくり、そして音が鳴り止むと川島は何度も何度も、ありがとう、と言いながらフロアに向かって頭を下げていた。来場者の大半がキューミリ・ファンであるはずのステージが、盛り上がりまくって嬉しかったのだと思う。

● 9mm Parabellum Bullet
ステージの幕が開いて客電が落ちた途端、まるで今夜のショウがたった今はじまったかのように沸き返るフロア。君ら、さっきまで揉みくちゃになっていたんじゃなかったか? 真紅を基調とした照明の中で、鬼リフが転がり出しボーカルのハーモニーがそれに乗る。なんとオープニング・ナンバーはシングル『Supernova/Wonderland』のカップリング曲“Wildpitch”である。これには驚かされた。続いて“Living Dying Message”のイントロで大きな歓声が上がる。卓郎の堂々たる歌いっぷりは、気張らずとも芯と太さのある歌声というか、とても安心して聴いていられるものになっていて良い。そして“Discommunication”へ。飛ばしている。まさにカオスを描き出すが如き暴れっぷりの滝&中村だけれど、フィニッシュはビシッと決めた。「サンキュー!」うーむ、心憎い。

「こんばんは、9mm Parabellum Bulletです。『カオスの百年 Vol.7』へようこそ! …みんなすっかり沸騰しているようだなあ。これがヨーロッパかどこかのフェスだったら、俺たちは5分ぐらいしかやってないと思うけど」。最初は何を言ってるのか分からなかったが菅原、どうやらワールドワイドな活動キャリアを誇るピンプやブンブンに対して、少なからず引け目を感じているらしい。そういう問題なのか? そういうブッキングなのか? 「昨年9月9日にやった、因縁の曲をこれからやります」と、メタリカのカバー“Motorbreath”にバンドは傾れ込んでいった。ワールドワイドである。圧倒的ながらどこか「これが自分たちのマイペース」と言わんばかりだった先ほどまでのテンションとは打って変わって、明らかに力の入った熱演ぶり。昨年9月9日の武道館で、この曲の演奏中に滝が手をつってしまったのだった。その模様は、丁度この日発売のDVD『act II & act III』にも収められている。つくづく、キューミリは「落とし前をつけながら進む」バンドなのだなあと感じた。昔、彼らがフジ・ロックのRookie A Go GOのテープ審査に落ちて、その曲を昨年のフジのステージで鳴らしたというエピソードを思い出した。キューミリは唯我独尊の孤高バンドではない。コンプレックスにまみれて、その反動を成長と爆発力に転嫁し続けるバンドなのだ。

悲しげだがコミカルな歌謡タッチで決める“Finder”、大振りなグルーヴの中で滝と中村が小競り合いを起こすようにフレーズを繰り出す“次の駅まで”と、アルバム収録曲が並ぶ。「一年中こうしてライブやってるとさ、ものすごくダメな日もあれば、そんなにねえか? すごく良い日もあるとしてだ。そういうときは何でも思いどおりになる気がして、まあ曲が終わればその錯覚は消えるんだけど、で、今日がそういう日になるような、ならないような。俺たちの前にSOIL & “PIMP” SESSIONSとBOOM BOOM SATELLITESがやってくれて、みんなが沸騰して、これからグワッとひとつになる瞬間が訪れるかも知れないぜ?」と菅原が告げた。そしてドラマティックな“光の雨が降る夜に”を経て、オーディエンスによる盛大な間の手を巻く“Beautiful Target”と連なる。ほとんどヒット・シングルを排したセット・リストであるにもかかわらず、異様な盛り上がりを見せるのだから凄い。

“The Revolutionary”で上ずったような声で菅原が《世界を!》のフレーズを吐き出したときには胸を締め付けられる思いがした。様々な思いにまみれながら、世界に挑んでゆくキューミリというロック・バンドの本質が、そのフレーズに凝縮されていたように思う。そして滝の超高速ギター・リフが炸裂する“Punishment”から、ラストは爆風のように一瞬で駆け抜けた“Lovecall From The World ”。まるで倍速で観るエンド・ロールのようであった。「また来年もよろしくお願いします!」とアンコールで再登場した菅原が挨拶すると、またもやオーディエンスは大歓声で応じる。そして“Heat-Island”“(tennage)Disaster”“Talking Machine”といったキャリア初期からのナンバーを連発する。「1、2、3、4!」のコールをきっちりキメるファンも見事であった。大規模ツアーやフェス・シーズンを経て、こういういかにも「集会」といった様相のライブが自然に求められていたのだろう。とても濃密で、熱い夜であった。(小池宏和)
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