Base Ball Bear@新木場スタジオコースト

Base Ball Bear@新木場スタジオコースト
Base Ball Bear@新木場スタジオコースト - pics by 緒車寿一pics by 緒車寿一
Base Ball Bearが9月に同時リリースした3.5thアルバム『CYPRESS GIRLS』と『DETECTIVE BOYS』をひっさげて全国14箇所を回る、アルバムリリースツアー「(Shine On You)Cypress Girls & Detective Boys」が、今日ここ新木場STUDIO COASTでファイナルを迎える。さらに今日は、1月3日に行われた日本武道館でのワンマンライブから始まった激動の一年を締めくくる、年内最後のワンマンライブということで、ベボベTを着たオーディエンスであっという間に埋め尽くされた会場には、これから始まるステージへの期待からか、異様な熱気がたちこめていた。

キックオフ・チューンの“Transfer Girl”のイントロが流れ始めた瞬間から、オーディエンスは一体になってジャンプ、ジャンプ、ジャンプ。尋常ならざるフロアの揺れが、筆者が見ている2階にまで伝わってくる。続いて、マイケル・ジャクソンを彷彿とさせる小出の独特な歌唱法が、えも言われぬ妖しげな魅力を放つ“十字架 You and I”、新作の中では珍しく、青く瑞々しい王道のベボベ節が炸裂する“BAND GIRL’S SPIRAL DAYS”を立て続けにプレイ。曲中に挿入される湯浅の衝動的なギターソロが、開始時点から既に最高潮かと思われたフロアのテンションを更に上昇させていく。そんなフロアの異様なまでの盛り上がりを受けて小出は、「えー、本日は大変混み合っておりますので、押し合いへし合いなさらぬよう、男子は女子に気遣いを、女子は男子にときめきを、忘れられない一夜にしましょう」とMC。その後も“17才”、“GIRL FRIEND”と、過去の名曲を惜しみなく叩き込み、オーディエンスを更なる熱狂へと導いていく。

続いて、「曲と曲の間のクソみたいなセッション」という意味を略した彼らの造語である「クッション」を挟み、関根がメインボーカルを担当する“LOVESICK”をプレイ。彼女のキュートな歌声が、これでもかというほどの熱気が充満するフロアに、レイドバックした空気を創り出していく。そして続く“beautiful wall(DUB)”の底知れなさを感じさせるダブサウンドによって完全に「聴き入る」モードに入ったフロアに、小出のアコースティックギターによる、飾り気のないシンプルなラブソング“WHITE ROOM”が優しく染み渡る。

ライブ中盤の、小出の「あのー、今回のツアーはですね、毎回このブロックで僕の本当の姿をカミングアウトするコーナーがあってね」という語り口から始まったMCがこれまた痛快で、しかしあまりにも長かったので内容を要約させていただくと、

・ 小出、幼い頃に両親に捨てられる。その後親戚の家を転々とする
・ 14才の頃、突然父に「会いたい」と言われる
・ 小出、巨大な地下施設の中で父と再会。いきなりそこにあるロボットに乗れと言われる
・ 小出、はじめは断るも、傷だらけの女の子がそのロボットに乗せられそうに
なっているのを見て「逃げちゃだめだ」と思い、結局乗ることを決意
・ 小出、怒り肩のドクロのような仮面をつけた化け物と闘う。しかし手も足も出ずやられてしまい、気が付いた病院の見知らぬ天井を眺めていた

お気づきの方も多いと思うが、どう見てもこの話、エヴァンゲリオンの第一話なのである。しかも「肺の中に水が入ってきて焦ったんだけど、すぐに慣れるから大丈夫っていわれて…」というように、やたらと描写が詳細。直前までの曲構成で完全に「聴き入る」モードに入っていた我々を茶化すかのようなMCに、全員が全員まんまとやられたしまったわけだが、大真面目に大嘘を吐き続ける小出の様子がおかしくて、筆者自身、この話が嘘だと気づいてからはずっと爆笑してしまっていた。それは会場にいた他のオーディエンスも同じだった。

そして「その時に聴いた曲をやります」と言って“残酷な天使のテーゼ”の触りをギターで弾いて、しっかりとオチをつけたところで“BOYFRIEN℃”をプレイ。終わりの間奏で、湯浅が自分のポジションに設置されたマイクスタンド(いつものライブでは無い)に向かってシャウトをしていたのが印象的だった。その後立て続けに“檸檬タージュ”、そして“kamiawanaiをプレイ”。暗くなった会場に響く小出の《ちがうんだ ちがうんだ》という焦燥感溢れるリフレインに続く、大サビの部分の小出の衝動的なボーカルと、堀之内の手数の多いドラミングによって牽引される疾走感に満ちたアンサンブルは、照明の演出によってそのドラマ性に拍車がかかり、圧倒的な迫力を放っていた。そして終盤は、“LOVE MATHEMATICS”、“祭りのあと”というような、ベボベのライブでは定番となる楽曲をプレイ。そしてラストの壮大なエモーションが弾ける“Project Blue”で、ひとまず本編は終了。

その後のアンコールが、個人的には本日最大のハイライトだった。割れんばかりの拍手に応えて再びステージに現れた小出の口から、「今日はゲストが来ています」というMC。当然、フロアは大歓声。そしてステージ袖から元ズットズレテルズのフロントマン呂布と、“クチビルディテクティブ”のMVの時と同じ、BEAT CRUSADERS風のお面を着けたaccoこと、チャットモンチーの福岡晃子が登場し、6人体制による“クチビルディテクティブ”が始まった。小出とaccoが背中合わせになって歌ったり、向かい合わせになって歌ったりと、ファイナルにふさわしい超豪華な展開が続く。要所要所で挿入される呂布のラップが、頭の中を直感的に駆け抜けていって最高に気持ち良い。続いては小出の「僕らは何のために歌ってるんだってこと。何を伝えたくて歌ってるんだってこと。つまり歌いたくて歌ってるんだベイベーってことさ新木場ベイベー!」というMCから、6人体制での“歌ってるんだBaby. [1+1=new1 ver.]”をプレイ。この曲は、「若者のリアルな感覚の代弁者」というような今までの彼らの領域を超えて、もっと普遍的な「ひとりの表現者」としての在り方を提示した、ここ1年くらいでその音楽性を急激に押し広げた彼らの現在のモードを如実に表現した大名曲。こちらも小出と呂布がハモったり、関根とaccoがハモったりと、なかなかお目にかかれないパフォーマンスを見せてくれた。そしてラストは再び4人になって“東京”をプレイ。曲の途中でブレイクが入り、会場は無音の状態に。5秒くらい続いただろうか。そこから小出の呼吸の音を合図に大サビに突入していくという展開は本当にドラマティックだった。

ジャンルやテーマにとらわれることなく、本当に自分達が心から鳴らしたいと思う音だけを鳴らし、心から歌いたいと思うことだけを歌いたい。「ポップ」という鎧を身にまとうことでそれを実現したBase Ball Bearは今、表現者としてどこまでも自由になったのかもしれない。(前島耕)

[セットリスト]

1. Transfer Girl
2. 十字架YOU and I
3. BAND GIRL’S SPIRAL DAYS
4. Shine On You, Cypress Girl
5. 17才
6. GIRL FRIEND
7. LOVESICK
8. beautiful wall(DUB)
9. WHITE ROOM
10. BOYFRIEN℃
11. 檸檬タージュ
12. kamiawanai
13. kimino-me
14. LOVE MATHEMATICS
15. 祭りのあと
16. Project Blue

アンコール
1. クチビル・ディテクティブ
2. 歌ってるんだBaby. [1+1=new1 ver.]
3. 東京
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