奥田民生 @ 渋谷C.C.Lemonホール

奥田民生 @ 渋谷C.C.Lemonホール
奥田民生 @ 渋谷C.C.Lemonホール - pics by TEPPEIpics by TEPPEI
『OKUDA TAMIO TOUR MTR&Y 2010』のファイナル。ドラム湊(雅史)・ボーカル&ギター(奥田)民生・ベース(小原)礼&キーボード(斉藤)有太、の、頭文字を並べたツアー名ですね。苗字と下の名前が入り乱れていてややこしいですが。

そもそもOTは、今年3月から5月にかけて、客前でひとりでレコーディングするツアー『ひとりカンタビレ』を行い、それで録った曲たちをまとめてニューアルバム『OTRL』としてリリースした。で、これはその後初のツアーなわけで、つまり、1枚のアルバムに関して、「作りながらツアー」と、「作って出したあとにそれをひっさげてツアー」の、2回のツアーが行われたわけです。ちょっとこれ、めずらしいというか、ひょっとして日本ロック史上初なのではないかと思うが、どうか。

なので、あの1人で多重録音して作った曲たちが、あの最強メンバーたちの手にかかるとどうなるか、と楽しみにしてたんだけど、『OTRL』の曲、意外とやりませんでした。あのアルバム、全部で11曲入ってるけど、今回やったのは4曲。
で。それ以外が、ちょっとおもしろい選曲だった。1枚目から『FANTASTIC OT9』までの全キャリアを網羅した、しかしシングル連発ってわけだけではなく、シングルと「え? これやる?」みたいな曲が入り混じった感じ。
以下が、そのセットリストです。せっかくなので、どのアルバムに入っている曲かと、そのアルバムが何枚目で、何年に出たのかも書きました。なお、フルサイズのオリジナル・アルバムとしては7枚目にあたる『FANTASTIC OT9』に『OT9』がついているので、それにしたがって、つまり2枚のミニ・アルバム=『FAILBOX』と『comp』もアルバム1枚とみなす、というルールでカウントしています。

1 人間2 『30』 1995年 2nd
2 彼が泣く 『GOLDBLEND』 2000年 5th
3 恋のかけら 『股旅』 1998年 4th
4 音のない音 『OTRL』 2010年 10th
5 ひとりカンタビレのテーマ 『OTRL』 2010年 10th
6 E 『E』 2002年 6th
7 いつもそう 『FANTASTIC OT9』 2008年 9th
8 ハネムーン 『29』 1995年 1st
9 海の中へ 『comp』 2005年 8 th
10 サウンド・オブ・ミュージック 『LION』 2004年 7th
11 イオン 『GOLDBLEND』 2000年 5th
12 最強のこれから 『OTRL』 2010年
13 花になる 『LION』 2004年 7th
14 イナビカリ 『FANTASTIC OT9』 2008年 9th
15 まんをじして 『E』 2002年 6th
16 月を超えろ シングル、オリジナル・アルバム未収録 1999年
17 SUNのSON シングル、オリジナル・アルバム未収録 2008年
18 解体ショー 『OTRL』 2010年 10th
アンコール1
19 あくまでドライブ 『股旅』 1998年 4th
アンコール2
20 イージュー☆ライダー 『股旅』(※シングルとは別バージョンを収録) 1998年 4th

以上、全20曲。プラス、私のブログにも書きましたが(ここ → http://ro69.jp/blog/hyogo/45606)客電がついたあとの送り出しのBGMは、

さすらい 『股旅』 1998年 4th
雪が降る町 ユニコーンの曲 1992年 シングル、オリジナル・アルバム未収録

の2曲でした。ステージではもう片付けが始まっているのに、お客さん誰も帰らず大合唱、という、素敵な光景がくり広げられました。
しかし、ほんとに1枚目から『OTRL』まで、ほとんど全部のアルバムからやってますね。やってないの、3rdのミニ・アルバム『FAILBOX』(1997年)の曲だけなのでは。せっかくなら“カヌー”とか“それはなにかとたずねたら”あたりもやれば、全アルバム制覇になったのに。

1曲目から3曲目までが、まったりずっしりした曲たちの中に、すごいテンションがこめられている感じのパート。1曲ごとにブレイクが空かず、3曲つながってるみたいにプレイされた。
で、「最初のこの3曲で、僕たちはもう燃え尽きてますんで。あとは余韻をね、散りゆくさまをお楽しみください」みたいなMCをはさんで(最近、一発目のMCでよくこういうこと言いますね。ユニコーンの時も言ってた)、4曲目から6曲目までは、まったりにしみじみやしっとりなどが加わっていくパート。
2度目のMCをはさんで、7曲目でさらにしんみり、8曲目で重い重いロックンロールを聴かせ、後半で長尺ギターソロ。続く9曲目でロックンロール・モードに突入、これも後半長尺ギターソロ。さらにアップテンポな10曲目でたたみかけ、1回目のピーク・タイム終了。
MCをはさんで、ジョン・レノン“マザー”を思わせるオープニングの11曲目で、C.C.Lemonホールが一気に荘厳な空気になる。と、1曲終わるとまたMC。OTがしゃべっている途中、ドラム湊がむせたりせきこんだりしてお客さんの注意がそっちにいってしまったので、そのままなしくずし的にメンバー紹介。ベース小原礼が、来年還暦だということで、その記念ツアーを60本やろう、と言い出すOT。「60本、でも1本は60分」「で、チケット代は60,000円」などと思いつくまま述べておられました。
そして13曲目から、二度目のロックンロール・タイム突入。13曲目と14曲目をつなげて連発、続く15曲目と16曲目で、今日一番のアガりっぷりを記録。で、本編最後のMC。
「なにかといろんな形で、最近はライブをやったりCDを出したりしていますが……。最近の世の中、どういう形かもよくわからないんで。業界もよくわからないし……でも、まあ、なんとか、やりますんで」みたいな話でした。こうして書いてみると、なんかだらっとした感じに見えますが、現場できいた時は、最後の「でも、まあ、なんとか、やりますんで」に力点が置かれた、珍しくちょっとマジなトーンでした。
そして最後に17曲目と18曲を、これもつなげて2連発して、渋公が、あ、C.C.Lemonホールか、とにかくホールが大変に幸せな空気になって、本編が終了しました。

なんというか、全体に、ちょっと、これまで観たことがない感じがした。どこがどう、と言われると困るというか、別にガラッと変わったわけではないんですが。というか、一見、何にも変わっていないようにも受け取れるんですが。
でも、ニューアルバムのツアーだけどニューアルバムのツアーっていうだけじゃない、代表曲いっぱいやるけどフェス出演時みたいなセットじゃない、意外な曲もやるけどマニア対応の内容じゃない、みたいな、「そうじゃない、もっとおもしろい何か」を模索して、だからこういう内容で、こういう構成で、こういう演出になったツアーなのでは。と、僕は感じた。さっきのMCじゃないけど、何か試している、企んでいる、そんな空気が、終始ステージにあったように思う。

ちなみに、ステージ向かって左前方にOT、右前方に小原礼、後方左(OTの右隣)に湊、後方右に斉藤有太、と、半円を描くように並ぶ配置で、中央にはポツンとソファーと応接テーブルが置かれていた。どこかで座るのかな、と思っていたら、最後まで座らず、本編が終わった。
で、アンコールで使われました。ツアー各地では、お客さんをステージ上げて、そこにお客さんを座らせてアンコールをやってきたんだけど、今日は映像収録が入っていてあとでややこしいことになると困るので、それはやらない、と告知。で、「なので、代わりに知り合いに座ってもらいます」と、観に来ていたソラミミスト安西肇(いつもツアーパンフのデザインなどを手がけているのです)と、OKAMOTO’Sのハマ・オカモトをステージに呼び、座らせて、“あくまでドライブ”をプレイ。途中で各メンバーのすさまじいソロがあり、安西&ハマ、そのメンバーに向けて両手をヒラヒラさせたりして盛り上げる。
で、一度目のアンコールが終わるも、コールやまず、再び4人、登場。「よいお年を。あけましておめでとう。来年もよろしくお願いします」というOTのあいさつのあと、“イージュー☆ライダー”で、ライブは終わりました。「幅広い心を くだらないアイデアを 軽く笑えるユーモアを うまくやり抜く賢さを」。このサビが、こんなにリアルに、そしてこんなに切実に届いたOTのライブ、初めてだったかもしれない。そんなことはないかもしれない。まあ、僕は、そう受け取ったという話です。

次のOTライブは、12月28日幕張メッセ・COUNTDOWN JAPANと、翌29日インテックス大阪・RADIO CRAZY。この時期のOT、観ておいたほうがよいと思います。(兵庫慎司)
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