カーリングシトーンズ、デビューアルバム『氷上のならず者』が教えてくれるロックがある日常の素晴らしさ
2019.12.06 14:00
寺岡シトーン(寺岡呼人)/奥田シトーン(奥田民生)/斉藤シトーン(斉藤和義)/浜崎シトーン(浜崎貴司)/キングシトーン(YO-KING)/トータスシトーン(トータス松本)という錚々たる顔ぶれによるLINEグループでのやりとりが、寺岡のソロデビュー25周年を記念してバンド結成&ライブ開催へと発展。Zepp Tokyoでの一夜限りのライブ(昨年9月23日)のために、多忙なスケジュールの合間を縫って新曲を揃えデモのレコーディングまで敢行――という流れだけを見ても、メンバー6人の沸き立つ遊び心は十分に伝わってくる。
同時に、今作『氷上のならず者』の骨太感とリラックス感を兼ね備えた演奏の大半が、そのライブ前のデモ音源を活かしたものである、というエピソードは、その歌と音の一瞬一瞬が「日々是本番」とでも言うべき迫力を放っている彼らの自然体の凄味をも物語るものだ。
6人がそれぞれに曲を持ち寄り、あるいは誰かの続きを誰かが作り……といった形で作られ、サポートメンバーも入れず全パートを6人で録り尽くした今作の12曲。《肩が痛くて上がらねぇ》、《クマが年々広がるぜ》といった50代ならではのボヤき合いも極上のビートとアンサンブルで極彩色の多幸感へと塗り替える “何しとん?”あり、《雨のときこそ 上を向いて歩こう》と大人のタフネスと包容力を覗かせる“マホーのペン”あり、“B地区”や“Oh! Shirry”といった悪ノリ放課後感満載の楽曲あり……といった具合に、触れるものすべてをロックとポップの真っ只中へと導くマジックが乱れ咲く今作。ロックンロール/ブルース/カントリーなどルーツへの惜しみない愛情が、その随所から滲んでくるのも嬉しい。
そして、ストーンズ直系のビートに乗せて《ただ歌っていればいいはずなのさ/すべるMCは必要ないのさ/何かが俺たちをかき立てるのさ》とあっけらかんとド直球の核心を聴く者の胸に投げ込んでくる、冒頭の“スベり知らずシラズ”。アルバムのラストをエンタメショーのカーテンコールのように彩る“涙はふかない”の、《歩いて歩いて 泣くだけ泣いたら/強く強く心が燃える/だって生きているんだから》のフレーズ越しに音楽の祝祭感を全力で分かち合おうとする切なる想い――。
メッセージとして「何を」伝えるかではなく、歌と音を通して今を「どう」楽しむか?に重心を置きながら、人生の深みと滋味も存分に漂わせている、珠玉のアルバムだ。
12月23日(月)の東京国際フォーラム公演を皮切りに、全5公演のツアー「カーリングシトーンズTOUR 2019-2020『やったぁ!明日はシトーンズだ!』」もスタートする。「ロックの新しい物語が云々」などと大上段に振りかぶらずとも、聴く者の日常をひとつひとつ笑顔で満たしていく一枚であることは間違いない。(高橋智樹)