HAWAIIAN6@新木場STUDIO COAST

堂々と、ストレートにバンド名を冠した2011年最初のワンマン・ツアー『HAWAIIAN6』。リリース・タイミングでもないこの時期に東名阪を巡ったのには大きな理由があって、オリジナル・メンバーであるベーシスト・TORUが、このツアーをもってバンドを脱退することになったのだ。「これからの人生でやってみたいことができた。今バンドを辞める決断をしないと、きっといつか後悔する」と、足掛け14年の歳月を過ごしたハワイアンを去ることを決意したのだと言う。昨年10月のことだった。

いわゆる“さよなら公演”という趣旨であるから、COASTに向かうこちらも少なからずセンチメンタルな心情になってしまうってもんだけど、「新木場! さぁ、この日がやってきたぞ! ハデに遊ぼうぜーっ!!」と開口一番にドラムス・HATANOが叫んで“Song Of
Hate”が放たれるや、スシ詰め状態のフロアが波打つようにうごめき、一斉にコブシが突き上がると同時にダイバーの大津波が発生!
そう、ちっぽけな感傷なんて世界の果てに押し流すように、COASTはいつも通りの尋常ならざる熱狂に包まれた。続けて、“Black
Out”、“Church”、“Brand New Dawn”と烈火のごとく楽曲を畳み掛けるハワイアン。TORUは、登場時にはTシャツの背中のIKKI NOT
DEAD(ハワイアン主宰のレーベル)ロゴを誇らしげに指し示してみせ、ステージ前のキッズに駆け寄って激しくオイ・コールを煽るなど、ラスト・ステージに懸ける意気込みを感じさせながらも、ハワイアンのベーシストとしての自ら役割に徹して黙々とパフォームする。後方でHATANOは、一打一打に想い込めるような激しいドラミングをみせ、YUTAは頭と身体を振り乱して熱情的にプレイ。フロアからは時おり「TORU!」コールも沸き起こり、残された一分一秒もムダにしねえぜ!とでも言うように、バンドとキッズ双方が魂をぶつけ合って場内の熱を高めていくのだった。

「スゴいね、この新木場STUDIO COAST! ありがとう!」と、最初のブレイクでHATANO。「ウチのベースのTORUが辞めるというわけで、これだけの人が集まってくれて、いろんな人から連絡も受けて、ホントに感激しております。昨日寝る時に、普段のライブと変わらないようにやりたいなと思ってたら全然眠れませでした(笑)。このワンマン、TORUちゃんが俺らに与えてくれたいい機会っていうか。あと、みなさんにとってステキな思い出になることを切に願いながら進行していきたいと思います。準備のほどはよろしいでしょうか? ここはライブハウスとはちょっと違うけど、ただ俺は、いつも通りお前らが見てぇからな! 来いよ新木場!!
行こうぜ!!!」。
その叫びにフロアは全力で応え、“The Black Crows Lullaby”、“A CROSS OF SADNESS”、“Butcher”と再びトップギアで疾走。YUTAが天高く腕を掲げて鳴らされた“I BELIEVE”の、<さよならは言わないよ だって寂しくなるじゃない きっとまたどこかで会えるよ そんな気がするんだ(日本語訳)>というリリックが無性に切なく、しかし確かな励ましを伴って胸に響いた。

中盤には、「TORUちゃん、しゃべるか? 半分テロリストみたいなもんだから、しゃべると事故が起きるんだけど(笑)」とHATANOが水を向けてTORUが口を開いた――「この寒いなか、みんなが来てくれて本当に感謝してます。今まで14年間、何曲やってきたかなって思って。 残りまだまだあるけど、俺的にはあとちょっとなのよ(笑)。一曲一曲噛み締めて、みんなと一緒に楽しんでいきたいです」。その言葉を受けてHATANO、「あとは、TORUちゃんがジャニーズに受かるかどうかだけど(笑)。お涙ちょうだいじゃなくてさ、できれば笑ってたいな、ここで。『1997』(ハワイアンとFUCK YOU HEROESの共催パンク・イベント)とか思い入れのある場所で、ゲストの仲間だけでも200人以上来てくれて、わかってたつもりだけど、いろんなことがあったなと骨身に染みました」。そして、語気を強めて叫ぶ。「残された時間は僅かですが、目一杯いくからな! 永遠に終わらない夢を見続けましょう! 終わらない青春の唄――突っ走り続けろ!!!」。と“Eternal Wish,Twinkle Star”に雪崩れ込み、哀しみを振り切るような疾走感に危うく涙腺決壊!(ヤバかったぁ!)。偉大なるパイセン(先輩)であり師匠=横山健からプレゼントされた“Tiny Soul”、そして“Color Of Love”→“Promise”といったブライトな楽曲たちは、ここまで心を寄せあって闘い抜いてきたバンドと、それに伴走し続けたオーディエンス両者への賛歌として輝かしくCOASTに共鳴した。

終盤にも、HATANOがしみじみとMC。「今日までの14年間、幸せでしたね。なぁ、TORUちゃん? 幸せだったよな?」(うん、うん、と頷くTORU)。「ホントにいい旅したな。楽しかった、ありがとう!
言葉はないな、一緒に歳を取れたことを嬉しく思います。自分で言うのもなんだけど、無茶苦茶なことやってきたよな?(苦笑)
先輩に『ハワイアンの客はギラギラした眼で知らないバンドのライブも楽しんでるな』って言われて。お前らは、ホントに俺たちの誇りだわ。ありがとう。いろんなものをもらってたってことに、今になって気付きました。こっから見える景色はホントに最高です。夢見てよかったと思いました。ありがとうございました! 夢をつかみとれ!!」と“Star Falls On Our Hands Tonight”で溢れる想いを響かせ、“RAINBOW,RAINBOW”ではフロアにいくつものモッシュ・サークルが咲き狂い、本編ラストはバンド初期からのアンセム“Ever Green”で一気に最高潮へ! TORUのコーラスにオーディエンスの声が折り重なって、盛大なシンガロングがCOASTにこだました。

アンコールでは、再びTORUがMC。「サイコーだよね? いつか今日のことを思い出した時に、『いい夜だった!』って言いたいです」。続けてHATANO。「いろんな人に『辞めんじゃねーぞ!』って言われて。早くベーシスト見つけて帰ってくるって言ってるけど、正直、内心ちょっと不安ね(苦笑)。でも、必ず帰ってきます。それまでは、IKKI NOT DEADとHARDCORE FUNCLUBをよろしくお願いします! すべての人に花道を!!」と、最後は“FLOWER”で万感のフィナーレを飾ったのだった。

正直、この3人以外のハワイアンなんてまだうまく想像できないけれど(何しろ絶妙なバランスで成り立っていたトライアングルだから)、「いつからバンド活動を再開できるのか今はまったく未定ですが、俺たちは止まらずやり続けるつもりです」との言葉を信じて、今はただ願うばかりだ。TORUが新たな夢をその手で掴み取ることを。そして、HATANOとYUTAが新たなベーシストとの出会いに恵まれ、一日も早く再びハワイアンとしてステージにカムバックできることを。(奥村明裕)
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