『version 21.1』@Zepp Tokyo

『version 21.1』@Zepp Tokyo - pic by 古渓一道pic by 古渓一道
OGRE YOU ASSHOLE、サカナクション、the telephonesの3バンドによるライブ企画『version21.1』。一昨年6月に新木場コーストで行われた『first』、昨年2月に東名阪を回った『second』に引き続き、今回の『third』は広島、福岡、大阪、名古屋、東京の5会場をサーキットする形で開催された。さらにツアー・ファイナルとなる今夜はゲストアクトとしてandymoriが参戦。『first』以来全公演で開場時と転換中のDJを担当している前田博章を交えた豪華な布陣で、超満員のオーディエンスで埋め尽くされたZepp Tokyoでは、約4時間ぶっ続けで熱いアクトが展開された。
『version 21.1』@Zepp Tokyo - 前田博章 / pic by 古渓一道前田博章 / pic by 古渓一道
● サカナクション
今夜のトップバッターは、サカナクション。フロント左右で打ち鳴らされる乱れ太鼓から“Ame)”へ突入する鉄壁のオープニング。“アルクアラウンド”“セントレイ”“Klee”とノンストップで叩きつけると、満場のフロアは早くも絶頂へと導かれていく。冷静かつ着実に温度を上げていくバンドの演奏は最早貫禄すら匂わせるほど。しなやかなメロディとバキバキの四つ打ちビートが眩い光を放って絡み合い、大気圏をも突き破るような高揚感を生み出していくさまは、何度聴いてもスリリングだ。特に今夜は岩寺のギター・リフと草刈姉さんのベースラインがとにかく獰猛に鳴っていて、ただでさえ熱さが滾るフロアに更なるガソリンを注いでいるように思えた。
浮遊感と焦燥感の間を行き来する山口のボーカリゼーションが堪能できた“ホーリーダンス”、レーザービームが場内を鮮やかに彩った“マレーシア32”を経て、披露されたのは新曲“ルーキー”。で、これがすごく良かった。浮遊感あるイントロから切ないサビへと駆け上がるメロディに、オープニングでも鳴らされたプリミティブな乱れ太鼓がダイナミックに重なって、バンド史上最高とも思えるようなエモーションを生み出していた。MCらしいMCがほとんどない、緊張感あるパフォーマンスでここまで一気に駆け抜けた後、ラストは“アイデンティティ”で大団円。ライブを重ねるごとに輝きを増していくバンドの演奏とパフォーマンス、そして素晴らしい新曲に彩られた、至福すぎる40分だった。
『version 21.1』@Zepp Tokyo - サカナクション / pic by 古渓一道サカナクション / pic by 古渓一道
● andymori
2番手はゲストアクトのandymori。“The End of the World”のSEとともに登場したメンバー。「こんばんは」という短い挨拶に続いてライブスタート!……と思いきや、突如プレイが中断。焦ってギターの調子を確認する小山田にフロアから温かな声援が飛ぶ。すぐさま態勢を整えて“投げKISSをあげるよ”へ突入すると、夕焼け色のサウンドと少年性を宿した小山田の歌声が場内いっぱいに広がっていった。その後は超高速ナンバーの乱れ打ち。“FOLLOW ME”“ベンガルトラとウィスキー”“Transit in Thailand”と間髪入れずに叩きつけ、フロアを熱狂の渦へと巻き込んでいく。焦燥感に満ちたメロディとリリックがスピーディーに放たれる、初期衝動の塊のようなロックンロール。「レッチリのTシャツ着てるのが新ドラマーです」と紹介された岡山のドラムもすっかりバンドに馴染んでいて、前のめりに突っ走るソリッドなアンサンブルをしっかりと支えていた。“1984”などのミドル・チューンを交えながら“SAWASDEECLAP YOUR HANDS” まで一気に畳み掛けた後は、「健二、なんかある?」と小山田に促された岡山が「音楽が大好きです!」と一言。そんな何気ないシーンが、やたらと胸を掻きむしるのは何故だろう。約40分で11曲。電光石火の勢いで駆け抜けながら、オーディエンス一人一人の心にいつまでも疼き続ける引っかき傷を残したような、素晴らしいアクトだった。
『version 21.1』@Zepp Tokyo - andymori / pic by 古渓一道andymori / pic by 古渓一道
● OGRE YOU ASSHOLE
続いて登場したのは、オウガ。最近はSEなしでステージに現れ、長いギター・イントロでライブをスタートさせることが多い彼ら。それがすごくハマっているのだが、今夜もアンビエントギターの音色が静寂を切り開くように鳴らされると、Zepp Tokyoに巨大なブラックホールが出現していった。霞がかったようなゆったりとしたサウンドが広がった“ひとり乗り”、ソリッドなグルーヴがうねりを上げた“フラッグ”、無邪気なメロディが放たれた“バランス”と、1曲ごとにまったく違う情景が描かれた序盤。ミニマルなサウンドと出戸のボーカルはどこに進むか予測不可能で、それ故に、禁断の扉を開け放つようなスリルを持って聴く者の耳に入り込んでくる。 
 もちろん、性急なビートでフロアのタテ乗りを誘った“ピンホール”や“コインランドリー”などのアッパー・チューンも素晴らしい。なかでも“アドバンテージ”の襲いかかるようなサウンドが不敵に突き進んでいくさまは圧巻だった。ライブを観るたびに力強くしなやかになっていくアンサンブルは、聴く者を一人残らずダークな熱狂空間へと引きずり込んでいく引力を湛えていて、もう抗えないほどだ。ラストは“ワイパー”の柔らかなサウンドで、場内に大きな余韻を残してステージを去った彼ら。やはり彼らのサウンドは、現在のシーンでそれぞれに異彩を放つバンドばかりが集った『version21.1』の中にあっても明らかに異質だ。
『version 21.1』@Zepp Tokyo - OGRE YOU ASSHOLE / pic by 古渓一道OGRE YOU ASSHOLE / pic by 古渓一道
● the telephones
そしてラストはthe telephonesの登場! SE“happiness,happiness,happiness”から巨大なミラーボールが回転し、大きなハンドクラップに包まれる場内。石毛の「カモン、東京!」を合図に“I Hate DISCOOOOOOO!!!”へと突入すると、フロア激震!石毛は何度も「踊れー!」と叫び、ノブはアグレッシヴに動きまくってオーディエンスを煽っていく。その後はもう、ここまでヤルか!と言いたくなるほどの強力すぎるセットリスト。ミラーボールと極彩色のライトが場内をギラギラと照らす中、キラー・チューンが次々と投下されたフロアは巨大なダンスホールと化していく。攻撃性を剥き出しの演奏を叩きつけていくバンドと、それに大きな歓声と息の合ったコール&レスポンスで応戦するオーディエンス。それぞれのエネルギーがぶつかり合い、相乗効果を生みながら未曾有のカタルシスへと上り詰めた頃には、湯気が立ち上りそうなほどの熱気がフロアに立ち込めていた。厳かなシンセの音色や伸びやかな歌声が放たれた“SAITAMA DANCE MIRROR BALLERS!!!”“My Final Fantasy”の中盤の流れも、緊張感があってとても良かった。「『version21.1』は僕らだけじゃ成立しないんです。みんなもこのイベントの一員なんです。だからみんなで『version21.1』と叫びませんか?」。そんな石毛の呼びかけから「ウィー・アー! ヴァージョン・トゥエンティー・ワン・ドット・ワン!」という字余り感ありまくりのコール&レスポンスでオーディエンスとの結束力をガッチリ高めた後は、“Monkey DISCOOOOOOO”で幕。さらにアンコールでは「やっぱ最後は愛だよね!」というお決まりの振りから“Love & DISCO”をプレイ。カラフルなハート型の風船が弾け飛ぶ中、その場にいる全ての人間を笑顔にしてしまうようなでっかいハピネスを生み出して、華やかなフィナーレを迎えた。最後は石毛が出演者全員をステージに呼び込んで、第一回目から恒例となっている記念撮影。「皆さんも撮っていいですよ」ということで、ステージに無数のカメラが向けられる。さらにライブカメラマンをステージに招いて、出演者&お客さんみんなでハイ・ピース! そしてサカナクション・山口による一本締めでイベントは幕を閉じた。「『version21.1』は2010年代のシーンを作っていこうじゃないかという気持ちではじめたイベントです。これからも色んなバンドに参加してほしいと思ってます。皆さんもこのイベントをいつまでも愛してください!」。アンコールで石毛がこう語っていたように、これからも大きく大きく発展していきそうな『version21.1』。早くも『forth』の開催が待ち遠しい!(齋藤美穂)
『version 21.1』@Zepp Tokyo - the telephones / pic by 古渓一道the telephones / pic by 古渓一道
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