イーグルス @ 東京ドーム

イーグルス @ 東京ドーム
イーグルス @ 東京ドーム
イーグルス @ 東京ドーム - pics by TAULab. / 写真は3月1日(火)京セラドーム大阪公演のものpics by TAULab. / 写真は3月1日(火)京セラドーム大阪公演のもの
巨大なステージの最前面に勢揃いしたグレン・フライ/ドン・ヘンリー/ジョー・ウォルシュ/ティモシー・B・シュミットの姿に、東京ドームの満場の客席から沸き上がる歓声。そして、開演と同時に“セヴン・ブリッジズ・ロード”の壮麗なコーラスが巨大な空間を一瞬で支配する……1日:京セラドーム大阪/3日:ナゴヤドーム/5日&6日:東京ドーム2デイズという規模で行われている、実に7年ぶりとなるイーグルスのジャパン・ツアー3日目。4人全員が60をとうに超えているとはとても思えない高純度なハーモニー。そして、カントリー/ブルースの薫りとロックのダイナミズムを華麗に織り合わせたアンサンブル。「コンバンハ、トキオ! グレイト・トゥ・ビー・バック!」のグレンの声が、あの“ホテル・カリフォルニア”イントロの12弦ギターの響きが、ドンの狂おしい歌声が、そして今やすっかり堂に入ったサポート・ギタリスト=スチュアート・スミスとジョー・ウォルシュの掛け合いギター・ソロが、50〜60代中心と思しきベテラン・ファンを熱い感動で包んでいく。客席を見回してドンが「Ah……バケモノ!」と言っていたのは、そんなオーディエンスの熱気を指してのことだったのだろうか? 

すでに大阪公演のセットリストが招聘元=UDOのオフィシャルHPにUPされている通り、今回のセットも前回のジャパン・ツアー(2004年)同様、2部構成で3時間以上に及ぶ大ボリューム。第2部がアコースティック・セットから始まるところも、本編ラストを“ダーティー・ランドリー”“ファンク49”“ハートエイク・トゥナイト”“駆け足の人生(Life In The Fast Lane)”の鉄壁の流れで締め括るところも、前回と同じ。大きく違うところは2つ。あくまで2007年リリースの最新作『ロング・ロード・アウト・オブ・エデン』を軸とした上で、その世界越しに自らのキャリアを(メンバー個々のソロ曲まで含め)俯瞰するように組まれた曲順だったこと。そして、あの全世界的名曲“ホテル・カリフォルニア”を、いきなり4曲目に披露してドームを感激と驚きに包んでみせたことだ(序盤にこの曲をやるのがここ2〜3年の定番セットらしい)。

“ハウ・ロング”“もう聞きたくない(I Don't Want To Hear Anymore)”“夏の約束(Waiting In The Wood)”“明日はきっと晴れるから(No More Cloudy Days)”など『ロング・ロード・アウト・オブ・エデン』の楽曲。そして、「初めてチャート1位に輝いた曲。よかったらシンガロングしてくれ。キーはCだ」とドンがあの渋い声で“我が愛の至上(The Best Of My Love)”を紹介したり、今度はグレンの「これが初のミリオン・シングル」という言葉から“テイク・イット・トゥ・ザ・リミット”へ流れ込んだり……と、曲の背景も含めて過去曲をドーム満員の観客と共有し合うような懇切丁寧な展開(“ダーティー〜”でステージ背後のビジョンに「PLEASE STAND UP」の文字を映して客席総立ちになるきっかけまで作っていたのにはさすがに笑ったが)。ポップ・ミュージックの黄金律だけでできているような、シンプルで風通しのいいイーグルスの楽曲群だが、ステージでは本来ドラマーのドンがギター&ボーカルで前列に出てきたり、時折パーカッションを担当したり、グレンがエレピを弾いたり……と立ち位置を変えるコア・メンバーの動きだけでも十分目まぐるしいのに加え、鍵盤が最大3人&ヴァイオリンやブラス・セクションまで入れ替わり立ち替わり参加する変幻自在なバンド編成が繰り出すパワーと表現のキャパシティは圧倒的だ。

71年の結成から解散まで11年。12年の時を経て、再結成から現在まで約17年。ウエストコースト・ロックのフロンティア・スピリットに胸焦がし、その終焉を“ホテル・カリフォルニア”で嘆いた自らの歴史までもが「古き良きアメリカ」の一部となった2011年。それでも、彼らが鳴らすカントリー・ロック/ブルース/ロックンロールは、過去を向いた懐メロ・モードや、時代とリンクする意欲を失ったレイドバック・モードとは明らかに一線を画している。むしろ、もはや完全に自分たちの手を離れ「みんなのうた」になってしまった名曲たちを、ゆっくりと自分たちの文脈の中に捉え直し、今この時代に改めてフロンティアを夢想しながらどこまでも旅を続ける――ということこそが、今の彼らの命題なのだろう。だからこそ、“Long Road Out Of Eden(エデンからの道、遥か)”の真摯な響きは深く、強く胸に沁みた。アンコールは“テイク・イット・イージー”からジョーのソロ曲“ロッキー・マウンテン・ウェイ”を挟んで“ならず者(Desperado)”で大団円! サポート・メンバーが退場したステージに残ったグレン/ドン/ジョー/ティムの4人に、割れんばかりの拍手が送られていた。1995年、2004年、2011年と行われてきたイーグルスのジャパン・ツアー、この「次」が観れたら最高だな、と思いながら会場を後にした。今回の来日公演はラスト1日、6日(日)・東京ドームを残すのみだ。(高橋智樹)
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