killing Boy @ 恵比寿リキッドルーム

killing Boy @ 恵比寿リキッドルーム
killing Boy @ 恵比寿リキッドルーム - photo by RUI HASHIMOTOphoto by RUI HASHIMOTO
木下理樹と日向秀和。ART-SCHOOLの初期メンバーとして、かつてバンドを共にしてきたふたりが7年ぶりにタッグを組んだ新プロジェクト、killing Boy。昨年末のCDJでのお披露目ライブ、3月9日のアルバム・リリースを経て、いよいよ本格的な活動に乗り出した彼らの初のツアーが開催された。そのツアー最終日。と言っても、東名阪を周る全国ツアーのうち、3月12日に予定されていた名古屋公演が震災の影響で延期となったため、この日はツアー2公演目にあたる。多くのライブがいまだに延期や中止に追い込まれている中、今夜のライブを予定通り行うと決定するまでには紆余曲折があったらしく、その内容はkilling BoyのオフィシャルMyspace(http://www.myspace.com/killingboyofficial)に木下本人の文章で綴られている。しかし、そんな難局をくぐり抜けて決行された今夜のライブは素晴らしいものだった。ロビーに置かれた被災地への義援金BOXと、ステージに惜しみなく向けられた温かな拍手と「ありがとう」の言葉たち。そして堂々たるパフォーマンスを繰り広げてくれたバンドの面々。そこには、音楽によって明るい未来を切り拓いていこうという確かなパワーが漲っていた。

19:00ジャスト、オープニングアクトのきのこ帝国が登場。静寂を切り裂くようなギターサウンドが放たれた途端、フロアは辺境の地へと導かれる。極限まで音数を絞ったスローなビートとアルペジオ、絹糸のようなハイトーン・ヴォイスが絡み合い、神聖な光の世界が描かれていく。まだまだ無名なバンドだけど、そのディープで美しい楽曲世界は、一度聴いたらクセになりそうだ。

続いて登場したのはandymori。1曲目は、被災地へ捧げる歌として先日ネットで公開されたばかりの新曲“兄弟”。穏やかなギター・フレーズに乗せて《何もない僕が 君にできること》と歌う小山田壮平(G/Vo)のボーカルが、胸に沁みる。続いて“FOLLOW ME”“僕がハクビシンだったら”などの高速ナンバーを畳み掛けてミドル・チューン“1984”へ。日常にくすぶる苛立ちや哀しみを、時に破天荒なエネルギーに、時にセンチメンタルなメロディに変えて突破していくandymoriの音楽は、やはり何度聴いてもリアルで痛い。昨年12月より新ドラマー・岡山健二を迎えて鍛え上げられてきたグルーヴも、よりクリアに研ぎ澄まされている印象だ。終盤には、6月リリースのアルバム収録曲であり、既にライブで何度も披露されている新曲“革命”を披露。《革命を起こすんだ》という潔い言葉と前のめりなビートがフロアを大きく揺らしていく。全13曲を嵐のように駆け抜けた40分。ダイアモンドの原石のようにゴツゴツと荒削りでありながら、どこまでもピュアで純正な輝きに溢れたステージだった。

3番手は、約2年半ぶりとなるオリジナル・アルバムを3月9日に発表したばかりの8otto。その最新アルバム収録曲“Hand Clap MF”で幕を開けると、ザクザクとしたリフとマエノソノマサキ(Dr/Vo)の野太いボーカルが血なまぐさい空気を生み出していく。ダークで粘り気のあるグルーヴ、ステージ前方に一直線に構えたメンバーの佇まい、どこを切っても不穏で不敵。オーディエンスを力ずくでロックの渦中へと引きずりこむ日本人離れした吸引力は、新作に至るまでの長い葛藤の日々を経て、ますます増幅しているようだ。ラスト“RIWO”ではTORA(B)がステージから飛び降りてフロアをアジテート! 場内を焼き尽くさんばかりの灼熱のステージは、終始その熱を絶やすことのないまま大団円を迎えた。

そしていよいよkilling Boyの登場。ステージ向かって左側から木下、日向、サポートドラムの大喜多崇規(Nothing’s Carved Stone)、サポート・ギタリストの伊東真一(HINTO)が半円形
に構えた布陣。小気味良いスネア音を合図に、日向の強烈なスラップ・ベースが勢いよく炸裂する。アルバムでも冒頭を飾っている“Frozen Music”だ。極限まで照明を落としたステージから放たれるサウンドは、とにかくタイトでダンサブル。冷ややかなギター音と肉感的なビートが立体的に絡み合い、色彩豊かな情景を描き出していく。何より驚きなのは、一音一音の鋭利さと跳躍力がハンパないこと。ギター、ベース、ドラム、放たれる音の全てが重層的なアンサンブルに埋もれることなく、弾むような躍動感を湛えてクリアに鳴っていることに、ゾクゾクするような緊張感を覚える。“Perfect Love”“cold blue swan”のような少しメランコリックな楽曲であっても、スリリングな音のぶつかり合いでダークな熱狂を生み出しているさまは見事。確かな演奏力を持ったプレイヤーが集結したバンドのポテンシャルの高さを十二分に物語っていた。

「新曲です」として披露された“no love lost”では妖しく冷たいメロディがトグロを巻き、ポップなメロディに彩られた“Sweet Sixteen”では外へ外へと向かっていく骨太なグルーヴが炸裂する。さらに本編ラスト“Confusion”では攻撃性抜群のサウンドが一気にバースト! ダークで生々しいメロディと地を這うベースの応酬に、フロアは横へ縦へと大きく揺れる。そのサウンドの破壊力は勿論だけど、とにかく楽しそうに音をぶつけ合う4人の姿が何よりも印象的なクライマックスだった。

アンコールではグルーヴィーなリフとビートが乱れ飛ぶジャムセッションを披露。「今日はありがとうございました。いろいろ大変なことはあるけれど、普通に生きて普通に音楽があればいいなと思っているだけなんで。大それたことはできないけど、僕たちの音楽を聴いてちょっとでも気分がマシになってくれたり、明日仕事がんばろうと思ってくれたりしたら本望です。リスクがある中で協力してくれたスタッフ、そして今夜リキッドに来てくれたお客さんに感謝します」という木下理樹の言葉に続いて、混沌とした世界に祈りを捧げるような“Call 4 U”でしめやかにラストをしめくくった。長らく別の道を歩みながら己のスキルを磨き上げてきた木下と日向が、互いの本能をいかんなく発揮した、奔放で堂々たるアクト。新曲が次々に生まれていることから見ても、まだまだ力強く進化していきそうなkilling Boyは、今後さらに目が離せない存在へと成長していくはずだ。(齋藤美穂)

killing Boy セットリスト
1.Frozen Music
2.1989
3.Perfect Lovers
4.cold blue swan
5.black pussies
6.xu
7.新曲
8.Sweet Sixteen
9.Confusion
EC.Session~Call 4 U
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