吉井和哉 @ 日本武道館
2007.10.25 00:00
素晴らしいライブだった!!! 大袈裟でもなんでもなく、日本では誰も聴いたことも見たこともない、シリアスでやんちゃで優しくて大きい、新しい大人のロックンロールというものをマジでやろうとしているんだ、吉井和哉は。そんな確信がびっくりするほど伝わってくるライヴだった。ニュー・アルバム『Hummingbird in Forest of Space』をひっさげた『GENIUS INDIAN TOUR 2007』の最終日(28日・福岡国際センター)のひとつ前、まさに脂ののりきった武道館2日目。帰れない故郷への郷愁がせつない、牧歌的なブルースのSE。それを遮断するノイジーな宇宙からのメッセージと、スクリーンに映し出されたくるくる回る受信機の映像。そして、まるで惑星に墜落したかのような轟音とともに“Do The Flipping”が始まった。この最初の一音のテンションがとにかく凄まじく、鳥肌が立つほどゾクゾクする。ニュー・アルバムはもちろん、ソロ3作からの曲も、イエロー・モンキー時代の楽曲も、洋楽カヴァーも、特別扱いされることなく、ごく自然に配置され、リスナーもごく当たり前に受け止めているのがとてもいい。“ワセドン3”から“シュレッダー”の流れはとんでもないテンションだし、オリジナルな日本語詞をつけたオアシス“Don't Look Back in Anger”の替え歌はもう最高!“JAM”にひけをとらない感動的な名詞だ。“Shine and Eternity”も、“バッカ”や“雨雲”も、ライブで演奏されることによって、初めて完成する曲なのだと思う。大がかりなセットとスクリーンの映像で描き出される「宇宙の森」の世界観はユニークだし、吉井のヴォーカルは10ヶ月ぶりのツアーを思えないほど艶を増しているし、ロックスターとしてのフェロモンの具合もばっちり、なにより、叙情的で湿った楽曲に、ジュリアン・コリエル(アルバムにも参加した、アメリカから招いたギタリスト)の(いい意味で)粗雑で乾いたギターが食い込んでくるのがとても新鮮だ。前年に武道館で行なわれた『THANK YOU YOSHII KAZUYA』は、ムチャクチャにアッパーなテンションで客席全体をあげまくったが、「楽曲」と「歌」と「演奏」をがっつりと、適度に力を抜いたパフォーマンスで聴かせるところに、とても高度なスキルを感じた。ニュー・アルバムは、「俺は誰だ?」という自分探しのテーマを持っていた。吉井和哉にとっての自分探しとは、つまり宇宙の森で、この音のカケラを探し集めることだったのだとしみじみと思えた。そして彼の望む音は、どんどん集まりつつある。12月19日には“バッカ”をシングルカット(カップリングは新曲で、なんとこの1曲のために渡米するそう)。そして12月27、28日の武道館公演も発表。さらに年明け1月22日から再び全国ツアーが始まる。デビュー15周年を迎えた吉井和哉は、今、やばいほどのロックとの蜜月を迎えつつある。現在発売中のJAPANではツアー初日・仙台のライヴルポ+インタヴュー6P掲載、今後の活動もJAPAN、bridgeで追いかけます。(井上貴子)