イベンターのクリエイティブマンが「BRITISH ANTHEMSに代わる各国の気鋭の新人を紹介するイベント」としてこの度新たに開催することになったRADARS(レイダース)。「BRITISH」という枠にこだわらず、世界中から注目すべきニューカマーをピックアップするという点ではヴァージョン・アップしたとも言えるRADARSの記念すべき第1回のラインナップには、イギリスから2組、オーストラリアから2組、そして日本から1組のバンドが名を連ねた。
昼の2時に開演して午後7時半ごろまで続くやや長丁場のイベントということで、スタジオコーストの前には軽食が買える移動販売車が横付けし、ライブ会場からドリンクカウンターを挟んで反対側にはソファが用意されたDJブースが設けられている。もちろん物販コーナーもあり、バンドによってはライブ後にサイン会も行われるようなので、演奏を聴いて気に入ったバンドのメンバーたちとその場で交流することもできる。
○Psysalia Psysalis Psyche(14時~)
日本のPsysalia Psysalis Psyche(サイサリアサイサリスサイケ)が最初にステージに登場し、激しくディストーションのかかったメリハリのある演奏で華々しくRADARSの幕を切って落とす。80年代からゼロ年代までのハードな表現方法を一通り吸収し、それを自分たちのものとして有効にアウトプットしている印象。30分弱の短い演奏時間だったけれど、3曲目の冒頭でサンプリング音が入ったあたりから演奏にもぐっと幅が出て、彼らの持ち味が遺憾なく発揮されたステージだったのではないかと思う。
○Little Red(14時55分~)
「オハヨ! リトル・レッドデス。ドウゾヨロシク」と日本語で挨拶したリトル・レッドは、2005年にメルボルンで結成され、これまで2枚のアルバムをリリースしている5人組バンド。ドラム以外のフロントの4人全員が歌い、曲ごとにリードボーカルが次々に替わるスタイルから、50年代~60年代前半のロックンロールを彷彿とさせる、衒いのない楽しいサウンドを聴かせる。しかもその楽しさがバンド内だけで独りよがりに完結することなく、100%客席に開かれているところに自分たちの演奏を客観的に見ることのできる彼らの知性を感じ、1曲目から好感を持たずにいられない。
曲の始めには「イクゾ!」と言い、出だしを間違えたときには「スミマセン」とメンバーたちが口々にしゃべって笑いを誘っていたが、これは日の丸のTシャツを着てムードメーカー的な役割を果たしていた日本人ドラマーのタカ・ホンダの存在が大きいのだろう。「バンドグッズ、後ろのところで売っているので買ってください。サインしますので」と上手な日本語で話すキーボードのトム・ハートニーは京都大学に留学していたことがあるそうだ。
○IS TROPICAL(16時5分~)
鼻から下を布で覆った格好で現れたのはロンドン発イズ・トロピカルの3人。ステージ上手にドラム、そして中央の小さな卓の両脇にギターとベースとキーボードを曲によって使い分ける2人のメンバーが位置取る。最初の2曲はかなり硬めの音色に設定されたベースとドラムがぐいぐい引っ張るアグレッシブなインスト曲だったが、それ以降は一転してアンセム的なボーカル・メロディが印象的なセットを展開する。
ところどころでサンプラーも用いながら、そこに手数の多いドラミングが絡んでダンサブルなグルーヴを構築していく様子は、彼らが<kitsune>に見出されたことも頷けるもの。クラクソンズやザ・ビッグ・ピンクらのオープニング・アクトを務めたこともあるイズ・トロピカルのデビュー・アルバム『ネイティヴ・トゥ』は6月2日リリース予定。
○Miami Horror(17時15分~)
マイアミではなくメルボルンで結成され、昨年8月に1stアルバム『イルミネーション』をリリースしたマイアミ・ホラーは、ボーカルのベン・プラントを中心とする4人編成。ディスコ・ビートのドラム、要所要所でオクターブをうまく使ったベース、透明感と光沢のあるキーボードは同郷のカット・コピーのサウンドにも似ているけれど、真っ赤なスーツを着たベン・プラントがモニターに片足を乗せて何度もギターソロを弾き、バスドラムに乗って頭の後ろでギターをかき鳴らし、ステージ脇に3台積まれたアンプに上ってフロアを煽る熱いパフォーマンスを見せたのは意外だった。
「次が最後の曲です。来てくれて本当にありがとう!」というMCとともに『イルミネーション』からのシングルで、レコーディングではネオン・インディアンのアラン・パロモがゲスト参加している“Holidays”のイントロが始まると、フロアは今日ここまでで一番の歓声に沸いた。
○Everything Everything(18時30分~)
第1回RADARSのトリを務めるのは、2009年末に「BBC Sound of 2010」にノミネートされ、昨年8月にはサマーソニック2010に出演するとともにデビュー・アルバム『マン・アライヴ』をリリースし、全英チャートで17位に入ったエヴリシング・エヴリシング。拠点はマンチェスター。揃いのグレーのつなぎでステージに上がった4人は“Final Form”で口火を切り、疾走感溢れる“Qwerty Finger”、そして口笛のサンプリングが印象的な“Schoolin'”へ繋いでいく。
細かいところまで精密に作りこまれた密度の高い構成を卓越したテクニックで支えつつ、しきりにリズム・パターンを変えながら曲にひねりを与えていく実力はやはり見事。ボーカルのジョナサン・ヒッグズの早口ファルセットは時にキッチュなようでもあるけれど、一瞬のうちに日常感覚を払拭し、時間が凍りついたような、独特の翳りのある世界観を提示する彼らの力は今の音楽シーンでは他に類を見ないものだ。個人的にはコーラスとキーボードの溶け合う音色が儚い“Tin (The Manhole)”が特に良かった。最後はマーチ風のリズムが華やかな“Photoshop Handsome”で盛大に幕を閉じる。
ロックンロールからディスコハウスからアートロックまで多種多様なステージを観ることのできた第1回目のRADARS。世界各地から発信される今の音に一挙に接することができるこのイベントは、熱心な洋楽ファンにとって今後欠かすことのできないものになっていくだろう。残念ながら今回はフランスのミニテル・ローズの出演がキャンセルになってしまったが、第2回ではアメリカやアジアや、イギリス以外のヨーロッパのバンドの演奏も観ることができればと思う。(高久聡明)
RADARS @ 新木場スタジオコースト
2011.04.30