ACIDMAN @ 日本武道館

ACIDMAN @ 日本武道館
ACIDMAN @ 日本武道館
 “風が吹く時”で惑星直列級のエネルギーとエモーションとともに高々と噴き上がる珠玉のアンサンブル! 静寂の彼方から真っ白に輝く風景まで聴く者すべてを導いていく“ノエル”のサウンドスケープ! “ALMA”で武道館一面を音の銀河に変える壮大なロック・タペストリー! そして「本当にこんなにたくさん集まってくれて嬉しいです! 震災があって、いろんなイベントが自粛したりしてる中で、不安な人もいるだろうし、傷が癒えてない人もいるだろうけど……俺たちもツアー中だったんですけど、『先の見えない1日』よりも、ポジティブに日々を楽しむべきだと思って、ツアーを続行することにしました。本来ならファイナルのはずだったんですけど、今日のエネルギーを最後の仙台まで持っていくんで。最高の1日にしたいと思うんでよろしく!」というオオキノブオの言葉に、満場のオーディエンスから沸き上がる大歓声!……2月26日の初日=Zepp Tokyo公演の模様をここRO69でもお伝えしたACIDMAN初の韓国&台湾公演も含む全国ツアー『ACIDMAN LIVE TOUR“ALMA”』だが、この日は同ツアー最大の山場にして、彼ら自身にとって3度目となる日本武道館ワンマン公演。震災の影響で3月19日の仙台公演を6月4日に、3月21日の新潟公演を5月29日にそれぞれ順延した振替公演を残しているため、「武道館でグランド・フィナーレ」という当初の予定とは異なる形にはなったが、それでもこの日のステージが、ACIDMANが抱え続ける根源的なメッセージと、それを体現するロック・アーティストとしての表現力を、驚愕のスケール感でもって提示してみせた、バンド史的にも日本ロック史的にも金字塔的なアクトだったことは間違いない。

ACIDMAN @ 日本武道館
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ACIDMAN @ 日本武道館
 「3度目の武道館ということで、ちったあ慣れるかと思ったんですけど、1回目・2回目の時と同じで、ガチガチに緊張してます! でも最高に楽しいです!」と拍手喝采を誘った直後、「オオキとサトマの姿を後ろから見ていられるのは幸せだ」といい話につなげるはずが「オオキが歌って、オオキが弾いて」と言い間違えて台無しにして「武道館って魔物が棲んでんだなあ!」と苦笑するのはウラヤマイチゴ。「俺は全然緊張してなくて。音楽の喜びを全身で感じてます!」と笑顔を見せるのはサトマことサトウマサトシ。ただでさえソリッドかつパワフルに鍛え上がったイチゴの爆裂ドラミング/サトマの強靭なベース・プレイ/オオキの静轟自在のギター、そしてスクリームとウィスパーが同居するような唯一無二のヴァイブを放つオオキの歌声は、ツアーを回ってさらにその訴求力をギアいくつ分も上げまくっている。“ONE DAY”“Final Dance Scene”といった最新アルバム『ALMA』収録曲を軸に、“波、白く”や“赤橙”“Under the rain”“ある証明”など新旧楽曲を織り重ねてまったく新しい音世界を構築していく――という基本構成も、“真っ白な夜に”などインスト曲も単なるインターミッションではなくシリアスな「見せ場」として機能させる効果的なセットリストも、初日に観た時とほぼ同じものだった(唯一、『ALMA』の“DEAR FREEDOM”が曲目から外れていたのが、初日との大きな違いと言えようか)。が……それでもこの日のACIDMANの音はこれまで以上に、そして武道館という晴れの舞台がもたらすスペシャル感を遥かに超えて、ダイナミックかつダイレクトに胸に響いた。何より、広大な宇宙に生きる人間の存在の非力さ、そして無数の人間の人生という軌道が交錯する「今」をシビアに指し示すACIDMANの音楽の理念が、「同じ時代に生まれて、こうしてライブに集まれるのは奇跡。その感覚を持っていれば、未来はもっともっと楽しくなる」という肩肘張らないオオキのメッセージとともに、至って自然なヴァイブとして身体に、心に染み渡ってくることだ。

ACIDMAN @ 日本武道館
 人間の運命を音楽で描くこと。ちっぽけな人間の存在そのものとして、巨大な世界と宇宙に立ち向かうこと。ACIDMANの音楽はそんな途方もない理想に迷いも衒いもなく立ち向かう闘いそのものだった。3ピースというロック・バンドの最小単位でもって壮大な世界観に挑むのも、原子の揺らめきから星空の輝きまでをギター・ロックというフォーマットで描き切ろうとするのも、すべてはその理想に懸ける意志の為せる業だ。そしてACIDMANは、世界という名の風車の前で悪戦苦闘するドン・キホーテとしてではなく、儚く愛しい生命力そのものを、どこまでも強く激しく鳴らす稀代の表現者として、この日の武道館のステージに立っていた。ミラーボールと乱反射し合うような“FREE STAR”の音は至上の多幸感を放っていたし、音源ではストリングスとともに壮麗な音像を構築していた“OVER”は3人のアンサンブルだけでどこまでも豊潤に咲き誇っていた。オオキがチリ&ボリビアで見た「地平線から上の全部が満天の星空」の風景そのもののような煌めきを放つ“ALMA”では、戦慄と躍動に同時に襲われるような感覚に包まれた。ああ、オオキはこの星空を僕らに見せたかったんだなあ、と思った。胸が熱くなった。

ACIDMAN @ 日本武道館
 スタンディング形式のアリーナのみならず1階席2階席まで終始クラップや大合唱が吹き荒れ拳が突き上がり魂が震えるロック・アクト。アンコールのMCでは、感極まって思わず言葉に詰まっていたオオキ。「まだまだ満足してないし、もっともっと上を目指してるし。1つの音で世界が変わるような音楽を目指してるんで」という彼の言葉に、ひときわ力強い歓声が巻き起こった。音楽の意味が見つめ直されている今この状況下だからこそ、ACIDMANの楽曲の1つ1つはいっそう目映く僕らを照射する……ということを、何よりその音像そのものが証明していた。最高のステージだった。(高橋智樹)
ACIDMAN @ 日本武道館 - all pics by 橋本塁all pics by 橋本塁
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