チャットモンチー @ 中野サンプラザ

チャットモンチー @ 中野サンプラザ
チャットモンチー @ 中野サンプラザ - all pics by KAZUMICHI KOKEIall pics by KAZUMICHI KOKEI
昨年末のCOUNTDOWN JAPAN 10/11のステージ上で、橋本絵莉子(Vo./G.)a.k.a.えっちゃんが後にリリースされるアルバム『YOU MORE』を「今までのアルバムで一番明るい」と語っていたのを聞いたときには、少なからず動揺したものだった。チャットモンチーは切実な想いを歌い、鳴らすバンドではあっても、暗いバンドだと思ったことはなかったからだ。震災を経てリリースされた『YOU MORE』を聴いて、タイトルの本意にようやく気付き、そしてまた引き込まれるようにアルバムを聴いた。なんと自由でしなやかで強い作品なのだろう、と聴く度に思い知らされた。バンドの新境地を全国29公演に渡って直に見せつけてゆく『YOU MORE 前線』ツアーの、東京・中野サンプラザ2デイズ公演2日目。まだ沖縄公演と、延期になった神奈川・宮城・岩手・山形と各地での公演を残しているのでセット・リスト含め詳細には触れないが、今後の公演に参加予定の方はどうぞ閲覧にご注意を。
チャットモンチー @ 中野サンプラザ
ステージを覆う幕に3人がシルエットを浮き上がらせつつ、イントロの演奏を開始するオープニング。この時点でも既にそうなのだが、メンバー3人が何度かイレギュラーな編成で楽曲を届けてくるステージングがまずユニークだ。メンバー自ら、バンド演奏を楽しもうとしている姿勢がありありと伝わってくる。歌詞がお気楽極楽なのかと言えば、そんなことは決してない。ただ、メロディが、アレンジが、余りにも自由奔放で、しかもすべてにおいてポップに聴かせる魔法が掛けられている。響き自体は極めてチャーミングなのに、この2011年に3ピースのロック・バンドにこんなことが出来るのか、と戦慄を覚えるほどだ。それが『YOU MORE』というアルバムの楽曲群なのである。僕はチャットモンチーの3作目のアルバム『告白』は、「音楽の教科書に載せるべき作品」だと思っていた(まあ実際には名曲“染まるよ”の歌詞辺りは教科書には適さないかもしれない)が、『YOU MORE』はそれを越えている。ヤバい方に越えている。人々を魅了するポップ・ミュージックの、最も深くそして強過ぎる引力を備えたブラックホールが口を開けている。恐るべきはこれを「楽しく」作れてしまうチャットモンチーである。
チャットモンチー @ 中野サンプラザ
チャットモンチー @ 中野サンプラザ
ライブにおいては、『YOU MORE』の楽曲が今の3人が抱えたミュージシャンシップによって更に奔放さを増し、同時に生々しい躍動感を注ぎ込まれることになる。カッチリとまとまった演奏という意味だけで言えば、以前のチャットモンチーの方が安定度は高かったかもしれない。例えば曲中であっこちゃん(福岡晃子:B./Cho.)のベース・プレイがガクンとペースを上げれば、バンドが一個の生き物のように全体のペースをスリリングに引き上げる。ユーモラスなところはユーモラスに、パンキッシュなところは煙を噴くのではないかというほど激しくパンキッシュに、もともとアイデアが詰め込まれた楽曲群と相まって、彼女たちのバンド演奏の喜びの中へと確実にオーディエンスを巻き込んでゆくのである。『YOU MORE』を内輪向けの楽しみだけに終わらさないためには、こういうライブ・パフォーマンスが必要だったのだろう。過去の楽曲もその新しいモードの中でプレイされているのが分かる。

この日誕生日を迎えた数名のオーディエンスを皆で祝うという趣向の“バースデーケーキの上を歩いて帰った”。或いは「ご来場の皆さんの健康と発展、今後の日本の復興を祈願したいと思います」と、えっちゃん&あっこちゃんが天井から吊り下がった鈴を鳴らし、久美子ちゃん(高橋久美子:Dr./Cho.)が太鼓を打ち鳴らしてプレイされる“謹賀新年”といった、半ばイベント的企画が盛り込まれたステージ進行も遊び心に溢れたものであった。打ち上げで大小80本のすだち酒(もはやチャット必須アイテム)を皆で空けてしまって記憶がない、というあっこちゃんの武勇伝やらのMCもあって、演奏が止まっている時間も長い。ただしこうした場面でこそ、チャットモンチー3人の、音楽バンドを越えたチームとしてのそれぞれの役割が、これまで以上に明確に発揮されるのだ。

MCの間は相変わらず滅多に口を開かないえっちゃんは、いざ歌が始まれば一瞬でその世界へとオーディエンスを引き摺り込んでしまうし、久美子ちゃんは前線2人の呼吸を把握したドラム・プレイでひたすらボトムを支える一方、「昔の東京と掛けまして、良い返事と解きます」「そのココロは?」「おお、ええどー!」とシリーズ化されたナゾ掛けや流暢な口ぶりの物販紹介にも余念がないオカンっぷりを発揮。そして、バンドの切り込み隊長よろしくステージの渕まで躍り出てオーディエンスを煽り、ブリブリとベースを弾き倒すあっこちゃんは、エモーショナルな歌のハイライトにはいつしかスッと身を引いて後方に退いてみせる。その動きを目にするだけで、なんていい3ピース・バンドなのだろう、と思えるのである。

幸福な一瞬を捉え、それが続くことを願う切実なエネルギーが、『YOU MORE』の世界にはある。チャットモンチーは、バンド自らが楽しみ、人々を巻き込んでゆくことによってそれを描き出していた。今回のステージは全編に渡ってその『YOU MORE』の願いで満たされていたと言ってもいい。この3人にしか生み出せない、ただし誰とでも分かち合うことが出来る魔法のような力だ。これからも、各地にそれが届けられることを期待していて欲しいと思う。先日発表されていた本ツアーの映像作品(密着ドキュメンタリー映像も含められるらしい)リリース決定と、11月から12月にかけてのZepp(仙台・名古屋・大阪・東京)対バン・ツアー決定も改めて告知されていた。対バン相手は追って公表されるようだが、久美子ちゃん曰く「チャットモンチーという時点で来なさい!」とのこと。オカンの言うことは聞きましょう。(小池宏和)
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