a flood of circle/DJ:片平実 @ 渋谷クラブクアトロ

a flood of circle/DJ:片平実 @ 渋谷クラブクアトロ
a flood of circle/DJ:片平実 @ 渋谷クラブクアトロ
a flood of circle/DJ:片平実 @ 渋谷クラブクアトロ
対バン・ライブとDJのコラボは今や珍しくもないが、ここまでゲスト・バンドとDJとメイン・アクトが歓喜とロックンロールの絶頂を競いまくるような熱量を放出しているラインナップはそうあるものじゃない。『“AFOC THE MIX”דGetting Roll” W Release Party Tour』と銘打っている通り、a flood of circleのMIX CD『AFOC THE MIX』の発売&そのMIXを手掛けたDJ片平実のロック・パーティー「Getting Better」15周年アニバーサリー盤でもあるロック・アンセムMIX CD『Getting Roll』(AFOCはもちろんThe Birthday/9mm Parabellum Bullet/ASIAN KUNG-FU GENERATION/THE BAWDIES……etc.)発売を記念して行われた全国8ヵ所のリリース・パーティーでもあるこのツアー。KING BROTHERS/Fear,and Loathing in Las Vegas/鹿野淳(DJ)/The Mirraz/avengers in sci-fiといったゲスト・アクトを各地で招いてきたこのツアーの最終日をDOESが飾ったわけだが、「a flood of circleとDOESの対バンの転換DJを片平実が務める」という通り一遍な言葉では到底説明しきれない、まさにクアトロ一丸となってロックンロールの彼方へ転がっていくようなスリルと高揚感に満ちあふれた一夜だった。

 というわけで、まずはDOESの出番。サポート・ギタリストにファズピックス・オサムを迎えた4人編成で、いきなり“イーグル・マン”の爆走8ビートを叩きつけたのをはじめ“黒い太陽”“タイニー・パンク”と発売前の『FIVE STUFF』の楽曲をがんがん披露していく……というか、要は「対バン用の他所行きのセットリスト」ではなく、自身のツアーの温度感をそのまんま持ち込んでAFOCのオーディエンスに挑んだような、実にアグレッシブな内容だったということだ。で、それが今のDOESの全曲ロック・アンセムみたいなモードと合体して、“ユリイカ”のソリッドな16ビートも、ハード・エッジなミドル・ナンバー“太陽病”も、すべてが聴く者の魂を震わせていくし、「A・F・O・Cに呼ばれました、D・O・E・Sです!」とか「今日はA・F・O・Cのファイナルらしいので。DJも楽しんでいったらいいよ!」とかいうワタルの快活で無骨なMCまでもが鋭利な刃のような凄みをもって響いてくる。ラストの“明日は来るのか”“バクチ・ダンサー”連射では「DOESのツアー会場かここ?」と一瞬思うくらいの熱狂空間!

 続いて片平実のDJへ。9mm“Discommunication”やストレイテナー“BERSERKER TUNE”でクアトロの床も天井もぶち抜く勢いでアゲ倒したり、BIGMAMA“走れエロス”で《Melos spring has come》でフロア一丸大合唱を巻き起こしたり、さらにELLEGARDEN“Pizza Man”やハイスタ“STAY GOLD”を畳み掛けたり……熱気のあまり、天井からの水滴でDJ機材がトラブルほどの狂騒感! ロックは単にスタイルとしてロックであるだけでなく、「僕らを前へ/先へと突き動かすアンセム」である、ということをDJで証明する場所=「Getting Better」を主催し続けて15年。「フラッドと7ヵ所回ってきて……ほんと忘れられないツアーになりました!」という感無量な片平自身の言葉が、今の日本で生命力そのものの音楽=ロックンロールをスピンすることの喜びと重要さを象徴していた。最後にクラッシュ“I Fought The Law”をかけたところで、「……というわけで、最高にカッコいいロックンロール・バンドを紹介してもいいですか? a flood of circle!」というコールが、さらなる熱気を呼び起こしたのは言うまでもない。

 そしてa flood of circle! ゆったりじっくりとした“Hide & Seek Blues”イントロから一気にロックンロールの沸点へ駆け上がった瞬間から、「渋谷! とばしてくぞ! かかってこいよ!」という佐々木亮介の絶叫とともに終演までピークポイント越えの熱気のまま大爆走するようなアクト! “泥水のメロディー”“シーガル”といったAFOC必殺曲から、9月発売のシングル曲“Blood Red Shoes”まで、赤黒く渦巻くロックンロールを次々にぶっ放していく。かつては1つ1つのパートの「線」の絡み合うブルース感がフラッドの危ういロックンロールの魅力を醸し出していたが、佐々木&渡邊一丘、半年前に加入したばかりのベーシスト=HISAYO、そしてもはや鉄壁のサポート・ギタリスト=曽根巧も含めた4人が繰り出す1本1本のラインが格段にぶっとくなって音の隙間を埋め尽くし、「面」どころか「巨大なカタマリ」としての圧巻の爆発力を生み出していた。中盤、“ブラックバード”から“博士の異常な愛情”を経て“ブラックバード”に戻ったり、“Sweet Home Battle Field”途中から“Chameleon Baby”へつないでみせるミックス構成は、『AFOC THE MIX』での片平MIXへの4人渾身のオマージュだろう。

 「今日はツアー最終日ってことで、DOESの兄貴たちが出てくれました。『兄貴』って感じがするのは……顔が似てるからですかね?(笑)」と、上気しまくったフロアの笑顔をさらに弾けさせる佐々木。「兄貴たちも今、サポート入れて4人編成でやってるのは、俺らの真似ですかね?……や、冗談です(笑)。でも、a flood of circleっていうバンドは、結構メンバー変わってるんですよねえ」と感慨深げにメンバーをぐるりと見回し、最後にHISAYOに目を向ける佐々木。「加入して半年ぐらいなんですけど、なんかもう3年ぐらい一緒にやってるような気がして。別に紹介とかいいよね?」(佐々木) 「や、紹介してくださいよ!(笑)」(HISAYO) 「俺と同じで酒が好きで、ライブ終わったら待ちきれない人で。俺に『酒買ってこい』って言うんですよ(笑)」(佐々木) 「そんな……もっと控え目ですよ?」(HISAYO)というやりとりからも、今の4人のギアが自然に、しかしがっちりと噛み合っていることが窺える。

 狂騒的で祝祭的な“Human License”のビート、さらに視界を真っ赤に埋め尽くす“Buffalo Dance”の爆裂ディスコ・ビートに、フロア中から沸き上がる大合唱!……の熱気冷めやらぬ中、「3月に地震があって、何ができるかもわからない中でCDを作って、そのアガリを義援金にさしてもらって……7月になってました」と語る佐々木。「ロックンロールには何もできないけど、『伝える』ことができる……何を言ってるかわかんない人もいると思うんで、この曲を歌いたいと思います」と、本編最後のハード・バラード“ノック”へ。《何度でもノックする》という言葉に音楽の願いを託し、びりびりと空気を震わせながら絶唱する佐々木の声とハートフルな4人の音を残し、本編終了。アンコールは“エレクトリック・ストーン”と“ロシナンテ”で完全燃焼! 「このメンバーで転がってこうって覚悟が決まったんで。今年後半は、編集盤じゃなくて新曲をガンガン出していこうと思います!」という佐々木の言葉の通り、9月21日にはメジャー盤『I LOVE YOU』とインディーズ盤『Blood Red Shoes』を同時リリースする彼ら。AFOCの、ロックンロールの2011年快進撃は、これからだ――と確信させてくれる、最高のステージだった。(高橋智樹)
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