さて。ゲストMCとか、ゲスト・ヴォーカルとか、生楽器をトラックに足すとか、そういうのは一切なしで、すべてをメンバー5人だけで作る、というのが、ニュー・アルバム『STAR』のコンセプトだった。リリース・ツアーも完全にその方式で、ゲストなし、曲によってサポート・ミュージシャンが登場するとかもなし、FUMIYA療養中の代役を務め、彼の復帰後も2DJでずっとやってきたSOMAすらいない、本当に5人だけのステージ。さらに、リップのライブって、ステージのメンバーを映す意味でも、VJ的な意味でも、映像が重要な役割を担っていることが多いけど、画面、ありませんでした。武道館なのに。ステージ中央にどかーんと星型のセットがあって、そのまんなかにDJブースがあってFUMIYAがいる、というステージも、派手っちゃあ派手だけど、リップにしてはとてもシンプル。唯一、照明は、めちゃめちゃ手が込んでいてすばらしかったけど、逆にいうと音楽と照明と5人の動き意外には、何にもないライブだった。
で。それが、ほんっとに、すばらしかった。昨年末の恒例のクリスマス・ライブを、リップはこのツアーの予行演習的なものとして行っていた(ライブレポはこちら http://ro69.jp/live/detail/45661)。それ、すごくよかったけど、これで全国何十本も回るのは、ちょっと、どうかなあ、と思った。もっと言うと、正直、私、『STAR』、初めて聴いた時、おそらく『TOKYO CLASSIC』以来初めて、「んー、どうなのかなあ」と思ったアルバムでした。いや、『TOKYO CLASSIC』は、バンド(じゃないけどバンドっていっていいと思う、リップは)が事実上崩壊していて、ソロを持ち寄ったみたいなアルバムだったからそう思ったんだけど、『STAR』はそういう意味での「どうなのかなあ」ではない。めちゃめちゃかっこいいし、リリックもすばらしいし、何よりも、音楽的にすごく豊か。FUMIYAのトラックがこれまでよりいっそうハウス方面に寄っているのも個人的にうれしい。だから、俺は好きだし、俺は聴くけど、でも「俺は」が付いてしまう感じ、というか。FUMIYAのDJが好きで、彼が三宿Webでやっているレギュラー・パーティーに遊びに行っている自分と、限りなく同じ耳で好きなアルバムなのです、『STAR』って。だから、「俺は好きだけど、俺がターゲットじゃまずいんじゃないか? おっさんだよ俺?」と感じるところが、正直、あったのでした。
という懸念、まったく必要なかった。ということが、この日のライブでわかった。特に、『STAR』の曲たち。全13曲中“RIDE ON”“Simply”以外の11曲がプレイされたが、どの曲も、地肩の強い、骨太な、でもかわいいポップ・チューンとして響いていた。リリース以来何度も聴いてきた曲たちなのに、「うわあ、こんなにいいアルバムだったのかあ」と、改めて痛感した。ターゲット、俺だけじゃない、これ。シンプルだけど華やかで、フックがいっぱいで、おいしい、どの曲も。ということが、武道館キャパででっかい音で鳴り響くことによって、見えた。失礼しました。現に、どの曲も、おなじみの代表曲に負けないアガリ方でした、客席。
で、全体に超シンプルにはなったけど、リップならではの演出も、ないわけではない。むしろ、超シンプルになったことによって、演出それぞれのピンポイント的な効果がいっそう際立つ、みたいな構成になっていた。
たとえば、オープニング。開場時はステージ前に白いスクリーンが張られていて、客電が落ちオープニングの“The Beat Goes On”が始まり、そのスクリーンに照明で模様みたいなのが描かれ、「ああ、これ曲が終わった瞬間にバーンってスクリーンが落ちるんだな」と思ったら、曲の「途中で」「落ちるのではなく天井に吸い込まれる」という方法でスクリーンが消え、ステージ中央には星のセットの前でポージングをキメたメンバーが、という登場のしかた。どうでしょう。アガるでしょう、これは。
というように、大がかりではないけど、いちいち気が利いている、終始。1曲目・15曲目・23曲目(アンコールの1曲目)で、FUMIYAがエレクトリック・パーカッションとスクラッチ・マシーンがくっついたみたいなやつを持って、前に出てきたり。あとFUMIYA、8曲目でマラカス(って言っていいのかな。掌に入るサイズで振るとシャカシャカ鳴るやつです)を振ったり、9曲目でハープを吹いたり。5曲目をやる前に、RYO-Zがお客さんたちにダンス・ステップの練習をさせたり。ILMARIのヒューマン・ビートボックスで始まった17曲目で、マイクにくっついたライトセーバーが点灯、みんなでそれを振り回したり(これ、年末のライブでもやってましたね)。24曲目で、途中で音がブレイクすると同時にメンバー4人の動きがフリーズ、それをSUさんがひとりずつ、マネキンみたいに担いで、ステージのあちこちに置いて笑いを誘ったり。アンコールの25曲目では、8月17日に出る布袋寅泰の30周年アルバムでカヴァーした“BAMBINA”をいち早く披露したり。
それらがもう、いちいちずっぱまり、ほんといいフックになっていた。最小の動きで最高の効果、まさに。
って、別に、ケチって最小にしたわけではないと思う。ただ、すべてを削ぎ落として、必要最小限にして、誰にも何にも頼らないで、それでもスーパー・バラエティー・ショーみたいなこれまでのライブに遜色ないものができるのか、ということを、やってみたかったんだと思う。で、それが見事にやれた、というのが、この日のステージだった。
あ、あとひとつだけ。ゲストとか一切なし、と、さっき書いたけど、この武道館2日目だけ、ひとりサプライズ・ゲストが出ました、16曲目“BABY”で。なんと、森三中の黒沢。すんごいフリフリの衣裳で、歌いまくって、踊りまくって、ひとこともしゃべらずに、手を振りながらさっと帰っていきました。お客さん、驚きと喜びのあまり、彼女が去ってMCタイムになってからも、しばらくザワザワが収まりませんでした。
RYO-Z曰く、今回のツアー、大阪で小藪千豊が前説をやったのと、地方で(どこだか言わなかった、RYO-Z)でたまたま遊びに来たWISEをノリでステージに上げたことがあっただけで、ちゃんとしたゲストは、これが唯一だそうです。彼女はリップの熱心なファンだそうです。で、昔、RYO-Zが吉本の劇場に行った時、あいさつしようと思って終演後に楽屋を訪ねたら、ものすごい勢いで逃げてしまって会えなかったそうです。っていうくらいのファンなのね。
なお、彼女が去ったあとの、SUさんのコメント。
「すっげえいい匂い、しやがった。マーク・ジェイコブズみたいな匂いがした」
超満員の武道館、爆笑でした。
しかしSUさん、匂いネタ、好きですね。(兵庫慎司)
SE The Beat Goes On
1 Don’t Panic
2 Pop Up なう
3 フォーチュン クッキー
4 TOKYO STOMP
5 STEPPER’S DELIGHT
6 熱帯夜
7 太陽とビキニ
8 甘い生活~La dolce vita~
9 ○×△□
10 ダンデライオン
11 One(Christmas Classic version)
12 運命共同体
13 Tales
14 Under The Skin
15 楽園ベイベー
16 BABY(outro short version)
17 SCAR
18 FUNKASTIC
19 watch out! ~Bubble Trouble
20 Good Day –Remix-
21 Good Times
22 センス オブ ワンダー
アンコール
23 Free Style
24 JOINT
25 BAMBINA
26 WONDERFUL