音楽専門チャンネルMUSIC ON! TVの番組『GGTV -George’s Garage-』の名物VJジョージ・ウィリアムズが主催するライブイベント「GG UNITED」。本日はその番外編、「くるり×GGTV presents GG UNITED番外編」。ちなみに本イベントが、2度目の開催にもかかわらずいきなり「番外編」となったのは、この日がくるりとの共同企画であること、そして会場を彼らのホーム=代官山UNITからSHIBUYA-AXに変更したからという理由だそうだ。この日登場したのは、(出演順に)日本マドンナ、モーモールルギャバン、plenty、そしてくるり。「アーティストの魅力を放送という枠を飛び越えて、視聴者のみならず音楽を愛する多くの方々に届けたい」というジョージの想いが実り、大勢のオーディエンスがフロアを埋め尽くさんばかりに詰めかけたこの日のイベントの模様を、これから順を追ってレポートしていきます。
■ 日本マドンナ
トレードマークの赤いツナギに身を包んだジョージの前説に迎えられ、まずは一番手=日本マドンナが登場。「優しい歌っていうのは実は残酷なんだよね。だから私は現実を見るための、正直な歌を歌います」という、それこそ思想としてのパンクロックの本質を言い当ててしまったかのようなあんな(Vo/B)の宣戦布告から、“幸せカップルファッキンシット”を投下。日本マドンナのライブでは、ほぼ必ずと言っていいほど一曲目は“ラップ”という曲だったので、この展開は正直かなり意外だった。そして4曲目には、「くるりと共演するのは2回目なんだけど、こないだの大阪でのライブの時に、佐藤さんに『(その日共演した)andymoriのベースの藤原くんは、村上春樹好きなんだって(笑)』と言われましたが、人間味を隠してきれいぶってるのはだめなんで、今日も歌わせてもらいます」と、“村上春樹つまらない”を披露。そして「現実は所詮こんなもんだ。だけど、それでも、私たちは絶対に負けるもんか」という彼女達のアティテュードが鮮烈に刻み付けられたラストナンバー“田舎で暮らしたい”が終わると、フロアから大きな拍手と歓声が起こった。20分あまりの短い時間だったものの、結果はやはりこの日も圧勝。まだまだすごくなるはずだ、このバンド。
■ モーモールルギャバン
パンツ一丁×ネクタイで気持ちフォーマルに決めたゲイリー・ビッチェ(Dr/Vo)のハイテンションなドラムプレイで、サウンドチェックの段階から既にオーディエンスをさんざん沸かせていた2番手は、泣く子も笑うJ-POPテロリスト集団=モーモールルギャバン。「渋谷! 君のスカートをめくりたい!」というゲイリーの錯乱MCからのオープニングは“Kitchen”。ユコ・カティ(Key/Vo/銅鑼)のオルガンの音色が会場にじわりと流れ込み、オーディエンスの身体の底から高揚感を呼び覚ましていく心地よい立ち上がりである。その後もT-マルガリータ(B/Cho)の跳ね回るベース・ラインがフロアを揺らした“ユキちゃんの遺伝子”、QUEEN“We Will Rock You”のリズムに合わせた「ユキちゃんコール」でフロアを力技で一つに纏め上げた“ユキちゃん”と、異常なぐらい楽しくなる変態J-POPを連発。あっという間に迎えたクライマックス“サイケな恋人”では、ゲイリーのスポークンワードから「パンティーコール」を発動! ひとしきりフロアに盛大な「パンティー」大絶叫を巻き起こしてから、「AXいいっすねー! こういう舞台でパンティーコールするのが昔から夢だったんです! 昔から尊敬してたくるりの前でやるか相当悩んだんですけど!」とゲイリーがMC。そしてそのままドラムセットの上に立ち、ネクタイをはぎ取り、最後の砦の真っ赤なパンツに手をかける。そしてフロアから(股間に)大注目が集まるなか、いよいよ勢い良くパンツを脱ぎ捨てるゲイリー・ビッチェ(30)! 現れたのは……仕込んであった白パンツ! 最後は「これがJ-POPの限界です! 女子中学生でも安心のクオリティ! サンキュー渋谷ー!」という言葉と共に濃厚なアンサンブルを叩き付け、圧巻のステージは終わった。
■ plenty
この日たまたま遊びに来ていた、第一回目の「GG UNITED」の出演者andymori小山田壮平による、「事務所の後輩の素敵な3人組です!」という呼び込みにのって現れた3番手はplenty。ただそこに立っているだけなのにそれだけで異様な存在感を放ってしまっている3人は、オフホワイトのバックライトに照らされながら、まずは立て続けに“待ち合わせの途中”“最近どうなの”を披露。先に登場した日本マドンナとは大きく異なるベクトルで、冷ややかに現実を告発する江沼の滑らかな歌声が、フロアに高く伸びていく。オーディエンスはその様子を、まさに「目が離せない」というのはこのことといった調子で、微動だにせず、固唾を呑んで見つめている。MCでは、「今日はGG UNITED番外編に出れて、本当にすごい嬉し…嬉しい? 光栄でございます。今日は壮平くんがずっと楽屋にいて、2人でギターを弾いて遊んでたらくるりの岸田さんが来て。岸田さんの前で“ブレーメン”を歌って…もう死んでしまう(笑)そんな感じですわ」と、江沼が饒舌に語りだす一幕も。これがもう本当に死にそうなくらい嬉しかったんだろうということがよく伝わってくるようなMCで、思わずこちらも嬉しくなってしまった。そして「新曲みたいなものをやります」と、《ふつうの生活 そんなものあるはずがないだろう》というヴィヴィッドな歌詞が印象的な“ふつうの生活”をプレイ。その後も粛々と進行していく彼らのアクトは、6曲目“拝啓。皆さま”で、深い余韻を残しながら幕を閉じた。
■ くるり
イベント開始からおよそ2時間15分が過ぎ、フロアに巻き起こった極大音量の歓声に迎えられて登場したのは、6月29日(水)付けで吉田省念(G/Vo)、ファンファン(Tp/Vo)、田中佑司(Dr/Per)という3人の新メンバーの加入を発表し、新たに5人体制となって生まれ変わったばかりのくるり。スタスタと軽やかな足取りでステージに現れるなり届けられた1曲目は、5人によるバンドサウンドにアレンジされた“ワンダーフォーゲル。この曲では吉田とファンファンがサビのコーラスに加わっていたり、次の“コンバット・ダンス”ではAメロとBメロの後のギターリフの部分がファンファンのジャズっぽいトランペット・フレーズになっていたり……というように、サウンドの細かい変更点をいちいち挙げていったらきりがないので今回は割愛させていただくが、総じて言えることがひとつ。くるりのアンサンブルが「BOBO+山内」体制までのまさしく「完璧」としか言いようがなかった隙のない仕様から、ドカドカとダイナミックにリズムを刻んでいく田中のドラミングに象徴されるように、荒削りだが、以前にも増してバンドとしての生命力に溢れる仕様に変化しているのである。そしてそれ故に、“さよならアメリカ”のクライマックスの跳躍力が、“お祭りわっしょい”のアヴァンギャルドな快感が、この日は格段にパワーアップして伝わってきたように思う。
MCでは先程の日本マドンナのアクトを受けて、岸田「村上春樹、どう思う?」→佐藤「どっちかって言うと、(村上)龍派? 『1Q84』の1と2は買って読んで、3は買ったけど読んでへん」→岸田「で、おもろいの?」→佐藤「どっちかって言うと、つまんない。……10代に媚を売ってみました(笑)」とおどけて見せる場面もあったものの、演奏では圧倒的な熱量でもって場内の熱を巻き上げていく怒濤の展開が続き、やはりあっという間だった本編は、ひとまず“ブレーメン”で終了。アンコールではこの日出演した他のバンドについて一言ずつ触れてから“ハイウェイ”、そしてなんと「もう1曲だけやるわ」と、メンバーに耳打ちをしてから急遽“ロックンロール”までもプレイして、イベントのクライマックスを華々しく飾ったくるり。中盤に披露された5人になってから作った新曲“IPPO”での《降ってこい降ってこい降ってこい/雨ならなんぼでも降ってこい》という歌詞が表しているように、今の彼らは完全に向かうところ敵なし状態。あまりにも素晴らしすぎて、感動を超えて思わず笑いがこみ上げてくるような、大充実のステージだった。
全バンドのアクト終了後は、再び現れたジョージがこの日出演した4バンドをステージに呼び込み、記念撮影をして、大盛況のうちにこの日のイベントは大団円。なお、来たる9月23日(金・祝)、24日(土)には、同じくジョージ・ウィリアムズがオーガナイズするライブイベント「GG11」の開催が決定! この、ザ・クロマニヨンズ、Dragon Ash、The Birthday、9mm ParabellumBulletらを迎え、幕張メッセを舞台に2日間にわたって繰り広げられる邦楽ロックの一大響宴を絶対に見逃すな!(前島耕)
セットリスト
■ 日本マドンナ
1. 幸せカップルファッキンシット
2. 汚したい
3. クツガエス
4. 村上春樹つまらない
5. 田舎に暮らしたい
■ モーモールルギャバン
1. Kitchen
2. Hello!! Mr. Coke-High
3. ユキちゃんの遺伝子
4. POP! 烏龍ハイ
5. ユキちゃん
6. サイケな恋人
■ plenty
1. 待ち合わせの途中
2. 最近どうなの?
3. ふつうの生活(新曲)
4. 枠
5. 空が笑ってる
6. 拝啓。皆さま
■ くるり
1. ワンダーフォーゲル
2. コンバット・ダンス
3. 旅の途中
4. IPPO(新曲)
5. さよならアメリカ
6. 奇跡
7. お祭りわっしょい
8. ブレーメン
アンコール
1. ハイウェイ
2. ロックンロール