オープニングSEのBPMをそのまま引き継ぐように大貫朋也(Dr.)と村田智史(B.)のリズム隊が力強くダンサブルなボトムを叩き出し、松本明人(Vo./G.)の金髪が真っ赤な照明を吸い込みながら広がりのあるギター・サウンドをたなびかせる。新作『ストレンジャー』のオープニングを飾っていたナンバーでもある“闇に踊れ”だ。先刻の皆既日食の映像から連なるような情景の歌詞が、そして高く飛翔してゆく松本の歌声が、LOFTのフロアを沸き立たせる。「真空ホロウへようこそ」という松本の一言に続いて走り出す“サイレン”、ファストなファンク・ビートで弾ける“クレイマン・クレイマー”と、『ストレンジャー』収録曲が並べ立てられていった。ナイーブな心象を、鋭いエッジと妖艶な魅力を併せ持った歌声で描き、それをフィジカルなバンド・グルーヴで支える真空ホロウのダイナミズムが序盤から炸裂である。
「……パーティが始まりました。楽しんでますか?……それぞれの楽しみ方でいいから、思う存分、変な夢を見てってください」。演奏中は支配力に満ち満ちたロック・シンガーへと化けている松本だが、MCとなると一転、ボソボソと語るシャイ・ガイになってしまう。「このツアーを通して得たことがあって……本当、一人じゃ生きていけないんだって……すごく大切になったこの曲を、皆さんに……ストレンジャーに歌います。“誰も知らない”」。自分自身と他者との間にある境界線を強く意識したこの歌で、不器用に、しかしあのシャイなMCから一瞬で変貌を遂げた圧倒的な説得力をもって、多くのオーディエンスと向き合ってみせる松本であった。
波の音を聴かせて、このファイナルで特別に披露された夏の1曲は、『ROCK STITCH』に収録された70年代アメリカ西海岸で活躍したシンガー・ソングライター・デュオ、ロギンス&メッシーナのカバーである“Lahaina”だ。そして“パルス・リビドー”から“I do?”へ、松本の孤独な魂が一夜に咲き乱れるような美しいナンバーが続く。他者を強く拒絶したかと思えば今度は全力で他者に接近してみせようとする、アンビバレントで厄介な、それゆえにリアルな孤独の歌だが、彼の声で歌われると不思議とチャーミングに響くのはなぜだろうか。
そして松本による閃光のようなギター・フレーズが空気を切り裂き、“被害妄想と自己暗示による不快感”から怒濤の終盤戦だ。それぞれが自分自身で制御し切れないほどの力を目一杯発揮してしまうぶん、まだ荒削りではあるけれど、それでもこの3人の爆発力は凄まじい。フロアには無数の掌が、あるいは拳がかざされ、“The Small World”で追い込んでいく。「みんな、今日はどんな夢が見れたんでしょうか。今度お会いするときにまた、教えてください」と松本が告げ、本編ラストは流麗なギター・アルペジオからグイグイと舞い上がってゆく“:グライダー”でフィニッシュするのであった。
ここで今回初めて披露された新曲“回想列車”は、《すべてのあなたを受け入れたい》という凛とした意志が煌めく、ドリーミーで美しい名曲であった。つくづく凄いソングライターだ。松本は。彼の空想する情景が、サウンドの粒子にじんわりと溶け込んで届けられる。一刻も早く、一人でも多くの人に触れて貰いたい。そして再び、独特のロック・グルーヴを練り上げながら熱を帯びてゆく3人の演奏が轟き、約1時間半のステージを終えた。ツアーを通して確かな成長を遂げ、より多くの人々と交わろうとする真空ホロウがいた。次のステージはROCK IN JAPAN FES.2011、8/5(金)のSeaside Stageだ。地元・茨城での勇姿を、ぜひ多くの人に見届けて欲しい。(小池宏和)
1:闇に踊れ
2:サイレン
3:クレイマン・クレイマー
4:蘇生のガーデン
5:終幕のパレード
6:誰も知らない
7:Lahaina
8:パルス・リビドー
9:I do?
10:被害妄想と自己暗示による不快感
11:The Small World
12:グライダー
EN-1:回想列車
EN-2:引力と線とは
EN-3:ナサム・コニロム