真空ホロウ @ 新宿LOFT

真空ホロウ @ 新宿LOFT - pics by Miwa Tomita ”shirivasta”pics by Miwa Tomita ”shirivasta”
6月に5曲入りの最新アルバム『ストレンジャー』を発表し、全国10公演のリリース・ツアーを敢行してきた真空ホロウ。その集大成となるファイナル・ワンマン『また変な夢見ちゃった…(14歳・女 茨城県)』は新宿LOFTでの公演だ。公演タイトルが彼ららしくて実にいい。開演前のステージ上では、世界の様々な地域で観測された皆既日食の映像が映し出され、ダイヤモンド・リングの幻想的でスケールの大きな、美しい光景に意識が奪われる。そんな中にトライバル・ビートのオープニングSEが立ち上がり、いよいよ真空ホロウの3人が登場である。

オープニングSEのBPMをそのまま引き継ぐように大貫朋也(Dr.)と村田智史(B.)のリズム隊が力強くダンサブルなボトムを叩き出し、松本明人(Vo./G.)の金髪が真っ赤な照明を吸い込みながら広がりのあるギター・サウンドをたなびかせる。新作『ストレンジャー』のオープニングを飾っていたナンバーでもある“闇に踊れ”だ。先刻の皆既日食の映像から連なるような情景の歌詞が、そして高く飛翔してゆく松本の歌声が、LOFTのフロアを沸き立たせる。「真空ホロウへようこそ」という松本の一言に続いて走り出す“サイレン”、ファストなファンク・ビートで弾ける“クレイマン・クレイマー”と、『ストレンジャー』収録曲が並べ立てられていった。ナイーブな心象を、鋭いエッジと妖艶な魅力を併せ持った歌声で描き、それをフィジカルなバンド・グルーヴで支える真空ホロウのダイナミズムが序盤から炸裂である。

真空ホロウ @ 新宿LOFT
前髪で表情を覆い隠しながら松本がギターをストロークして歌い、次第に轟音のアンサンブルへと展開してゆくバラード“蘇生のガーデン”の後には、前半戦のハイライトとなった“終幕のパレード”だ。プライベートな想像力の果てに言葉を紡ぎ出し、その文学性の高さにも関わらず上質なメロディとともに歌詞がするすると耳に飛び込んで聴く者を呑み込む。洋楽ロックの真似事とは一線を画した日本語ロックとしての完成されたスタイルが真空ホロウにはあって、それはただ単に強靭なリズムを繰り出すだけでなく松本の歌に寄り添うようなバンドのアレンジメントにも感じられる。いやむしろ“終幕のパレード”に至っては、強靭なロック・グルーヴを鳴らす意味こそが歌い込まれ、強靭なロック・グルーヴに辿り着くために歌われるようなナンバーだ。

「……パーティが始まりました。楽しんでますか?……それぞれの楽しみ方でいいから、思う存分、変な夢を見てってください」。演奏中は支配力に満ち満ちたロック・シンガーへと化けている松本だが、MCとなると一転、ボソボソと語るシャイ・ガイになってしまう。「このツアーを通して得たことがあって……本当、一人じゃ生きていけないんだって……すごく大切になったこの曲を、皆さんに……ストレンジャーに歌います。“誰も知らない”」。自分自身と他者との間にある境界線を強く意識したこの歌で、不器用に、しかしあのシャイなMCから一瞬で変貌を遂げた圧倒的な説得力をもって、多くのオーディエンスと向き合ってみせる松本であった。

波の音を聴かせて、このファイナルで特別に披露された夏の1曲は、『ROCK STITCH』に収録された70年代アメリカ西海岸で活躍したシンガー・ソングライター・デュオ、ロギンス&メッシーナのカバーである“Lahaina”だ。そして“パルス・リビドー”から“I do?”へ、松本の孤独な魂が一夜に咲き乱れるような美しいナンバーが続く。他者を強く拒絶したかと思えば今度は全力で他者に接近してみせようとする、アンビバレントで厄介な、それゆえにリアルな孤独の歌だが、彼の声で歌われると不思議とチャーミングに響くのはなぜだろうか。

真空ホロウ @ 新宿LOFT
松本の歌の表現力に圧倒され、一曲終えるごとに我に返るようにして拍手と歓声が上がる、ということをくり返していたLOFT。このムードを一変させるのはやはり、MCのためだけに専用マイクを持つ男=村田である。「はじめまして! じゃねえか……ただいま! びっくりしちゃった。人が一杯いて。さっき日食の映像あったでしょ。みんながあれを見てる所を、俺たちはモニターで見てたの。変な宗教みたいだった!」とか何とか、訛り丸出しで勝手に喜んでいる。フロアの笑い声はウケているのか、はたまた失笑なのか。「俺たちあんま(各地へのツアーに)出ないっけ、都内とかばっかりやってるんだけど、今日は遠くから来てくれてる人もいるわけでしょ。また行くからね!」と、今度は温かい拍手が巻き起こっていた。でも、村田のマイペースなMCは、ライブにおいて大きな魅力である。ワンマン・バンドではない、いびつだけど個性的なパワー・バランスで成立した3ピースであることがわかる。「じゃあ、ガッツ溢れる真空ホロウ、行きます!」って、おい。

そして松本による閃光のようなギター・フレーズが空気を切り裂き、“被害妄想と自己暗示による不快感”から怒濤の終盤戦だ。それぞれが自分自身で制御し切れないほどの力を目一杯発揮してしまうぶん、まだ荒削りではあるけれど、それでもこの3人の爆発力は凄まじい。フロアには無数の掌が、あるいは拳がかざされ、“The Small World”で追い込んでいく。「みんな、今日はどんな夢が見れたんでしょうか。今度お会いするときにまた、教えてください」と松本が告げ、本編ラストは流麗なギター・アルペジオからグイグイと舞い上がってゆく“:グライダー”でフィニッシュするのであった。

真空ホロウ @ 新宿LOFT
アンコールではまず村田が、ツアー初日の夜にバッグの中で制汗スプレーが全開になっていたという失敗譚(ズボンを一着しか持って行かなかったこととか、「匂い系」のネタが多い)を紹介し、「でも一番嬉しかったことは、作品をリリースできたこと! ロングセラー・タイプらしくてチャートには出ませんが、俺たちはまだまだ、止まらねえ~~ゼっ♪」。フロアから絶妙のタイミングで罵声が飛んで爆笑である。そして松本。「あの、なんだろ……どんどんね、観てくださる方が増えたりとか、自分が思い描いていたステージに立てたりとか……凄いんです。僕にとって。だから、いろいろ考えて、もっとこう……寄り添いたいな、って思い始めて。そういう曲を書いてみたんです。寄り添う、っていう意味が伝わればいいんだけど」。

ここで今回初めて披露された新曲“回想列車”は、《すべてのあなたを受け入れたい》という凛とした意志が煌めく、ドリーミーで美しい名曲であった。つくづく凄いソングライターだ。松本は。彼の空想する情景が、サウンドの粒子にじんわりと溶け込んで届けられる。一刻も早く、一人でも多くの人に触れて貰いたい。そして再び、独特のロック・グルーヴを練り上げながら熱を帯びてゆく3人の演奏が轟き、約1時間半のステージを終えた。ツアーを通して確かな成長を遂げ、より多くの人々と交わろうとする真空ホロウがいた。次のステージはROCK IN JAPAN FES.2011、8/5(金)のSeaside Stageだ。地元・茨城での勇姿を、ぜひ多くの人に見届けて欲しい。(小池宏和)

真空ホロウ @ 新宿LOFT
セット・リスト
1:闇に踊れ
2:サイレン
3:クレイマン・クレイマー
4:蘇生のガーデン
5:終幕のパレード
6:誰も知らない
7:Lahaina
8:パルス・リビドー
9:I do?
10:被害妄想と自己暗示による不快感
11:The Small World
12:グライダー
EN-1:回想列車
EN-2:引力と線とは
EN-3:ナサム・コニロム
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