京都音楽博覧会@京都梅小路公園・芝生広場

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2007年にスタート、今年で5回目の開催を迎えたくるりプレゼンツのフェス、京都音楽博覧会。今年は当初のコンセプトだったアコースティック楽器によるライヴを行う、という方向性(最近すっかりバンドもありになっていたのです)。小田和正、10-FEET、石川さゆり、フジファブリック、細野晴臣、マイア・ヒラサワ、斉藤和義、そしてくるりの8組が出演した。では駆け足でひとことレヴューしていきます。


京都音楽博覧会@京都梅小路公園・芝生広場
京都音楽博覧会@京都梅小路公園・芝生広場
小田和正
1. 東京の空
2. 恋は大騒ぎ(w/くるり岸田&佐藤&田中、フジファブリック山内総一郎、bobo)
3. 風をあつめて(w/くるり岸田&佐藤&田中、フジファブリック山内総一郎、bobo、細野晴臣)
4. たしかなこと

3度目の出演。まず歌う前にいきなりMC。震災以降、ライヴをやる気持ちになれなかったんだけど、でも気持ちが戻ってきて、ツアーを立て直すことにしたこと、などを話してから、ピアノ弾き語りで1曲目へ。そもそも、この人がこういう場で歌っている時点で既に圧巻なんだけど、さらに圧巻だったのが、2曲目をくるり岸田&佐藤&田中&フジファブリック山内総一郎&BoBoからなるバンドが登場して演奏したあと、お互い長いキャリアなのに初めて会ったのは2008年のこのフェスだったという細野晴臣が加わって歌われた、3曲目“風をあつめて”でした。オリジナルもカヴァーもしょっちゅうCMとかで使われているのでご存知でしょうが、はっぴいえんどの超大名曲です。この曲をこのふたりが歌っている、というのは、ちょっと、歴史的な画でした。そして、4曲目はひとりでアコギ弾き語りでシメ。シメはひとり、というのも、なんか、らしいなあ、と思いました。


京都音楽博覧会@京都梅小路公園・芝生広場
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10-FEET
1. SHOES
2. RIVER
3. LOODY(w/つじあやの)
4. recollection(w/つじあやの)
5. 1.sec

自分たちでも言っていたけど、本来、はっきり言って、アウェイ。言うまでもなく、ラウド・ミュージック/ミクスチャー/パンク系のバンドであって、つまりくるりともこのフェスとも違うフィールドで活動している人たちなので。でもなんで出てきたのかというと、今年の3月12日、つまり震災の翌日に京都磔磔にてくるりと2マンが組まれており、電力のことなどを考えて急遽アコースティックでライヴを行ったのが、きっかけになったのでは、と思います。
しかし。TAKUMA、1曲目をやる前に「最初に言っておきます。アコースティック、まったくできません」と宣言。1曲やり終えたと思ったら、「小田和正さんと石川さゆりさんにはさまれてて。このタイムテーブルを知った時は、『お、処刑か』と」と言ってみたり、シークレット・ゲストのつじあやのを迎えての”LOODY”の間奏では「いいねえ、好きだよ、サビのところで3人ぐらいしかタオル回してない感じ、好きだよ」と叫んでみたり(なので間奏後のサビではみんなぐるんぐるんタオル回してました)、「(緊張で)昨日全然眠れへんかった。眠れたの1時間だけ。しかもその1時間で悪夢見た」と告白したり、と、もはや卑怯なまでの自虐ネタ連発で笑いを巻き起こして、場をつかむ。中でも、KOUICHIにMCを振ってぐだぐだなしゃべりを披露させたのと、リハーサルの時いつもつじあやのにめちゃめちゃ怒られている、という話は、爆笑もんでした。つじさんに、演奏についてではなく、「TAKUMAくん、もっと元気に!」「KOUICHIくん背中が丸まってる!」「NAOKI君なんでそんな悲しそうな顔でベース弾くの!」と、態度・姿勢に対してダメ出しされるそうです。つじさん、「これはマジです」とダメ押ししておられました。
ただ、フォローするわけではないですが、5曲いずれも、無理矢理アコースティック・バージョンにしたことによって、このバンドの楽曲のメロディの強靭さが浮き彫りになっていて、とてもよかった。
それから、2曲目からは「京都で飲み屋やってる友達」という紹介で、トランペット:ドクターハセガワが加わりました。ツアーの時にも登場する人ですね。


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石川さゆり
1. ウイスキーがお好きでしょ
2. 津軽海峡・冬景色
3. 緑のふるさと
4. 転がる石
5. 天城越え
6. 朝花

前回の出演は2009年。いっきなりあの“津軽海峡・冬景色”の超ドラマチックなイントロが、10人編成のバンドによるごっつい演奏で鳴り響く、というインパクトに満ちたスタートで、参加者全員「おおおおっ!!」とどよめき、前方へと駆け出したものです。
で。今回は、まず、ジャズっぽいミニマムな編成のバンドが出てきて、セッティングしたりサウンドチェックしたりしているので、客席みんなすっかり油断していたら、ステージにまだ石川さゆりいないのに曲が始まり、「え? あれっ?」とか思っていたら姿がないまま“ウィスキーが、お好きでしょ”のボーカルがきこえはじめ、歌いながら石川さゆりがオンステージ、客席ドカーン! という、そういう始まり方でした。またもや、インパクト満点。
というオープニングからして象徴的だけど、とにかく、本当にエンターテイナーだと思った、この方。って2009年の時も書いた気がするが、今回も改めてそう痛感しました。歌がバケモノレベルであるとか、メロディも歌詞もものすごいとか(特に歌詞。情念まみれにもほどがあるというか、はっきりと「こええ」次元だと思う)、そういうのは置いといても、「音楽・しゃべり・演出・構成」という、パフォーマーとしての総体が、もう、とんでもない。総勢数十名のオーケストラも、営業年間100本やってるドサ回り芸人も、アリーナ・ツアーやってる大物ミュージシャンも、みんなまとめて鼻息で吹き飛ばしそう、そんなすさまじさがありました。満喫。
なお、5曲目“天城越え”は、当初セットリストには入っていませんでした。お客さんのリクエストに応えて、その場でぶっつけ本番で追加。見事でした。


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フジファブリック
1. MUSIC
2. STAR
3. 水飴と綿飴
4. 虹
5. ECHO

メンバー3人プラス、パーカッションでBoBo、という編成。ヴォーカルはもちろん山内総一郎。フジファブリックとしては初出演だけど、自分は去年も出ていること(くるりのサポート・メンバーとしてですね)などをMCで話したりする。で、「BoBoさんは?」「5回目」と、彼がくるり岸田&佐藤以外唯一の皆勤賞であることを知らせたりもする。僕はROCK IN JAPAN FES.でのステージは観れなかったので(そういう業務なんです、現場で)、とにかくもう、山内総一郎が、ごく普通に、ごくあたりまえに、「ボーカル&ギター」としてそこに存在している、そしてそのとおりな歌を歌っている、という事実に、なんともこう、くるものがあります。特に、“MUSIC”“虹”あたりの、かつて志村が歌っていた曲が歌われた時、その自分内「くるもの」、最高数値を記録しました。
あと、石川さゆりが「私はくるりのふたり(オリジナル・メンバーのふたりね)のことを『シゲ』と『マサ』と呼んでいるんですけど」と言ったのにのっかって、メンバーみんな「シゲさん」とか「マサさん」とか言ってました。なお、最後にやった曲は、くるりのツアーに山内総一郎がサポートで参加した時、そのファイナルで「総一郎、なんか歌え」って言われて急遽やった、思い出の曲だそうです。


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細野晴臣
1. 恋は桃色
2. Ramama
3. Radio Activity
4. Lonesome Road Movie
5. Hong Kong Blues
6. Roochoo Gumbo(w/くるり)

前回の出演は2008年。その時のライヴで、すんごく強く憶えていることがあります。細野さん、バンド:ワールドシャイネスを引き連れての出演だったんだけど、それまでさんざんぼやいたり愚痴ったりしながらライヴが進んでいっていたのに、途中、とある曲のイントロの演奏が始まった時、「ダメダメ、速いよ」と演奏を止めた、ということがあった。逆かも、テンポが遅すぎて、「もっと速く」だったかもしれないが、とにかく、イントロの演奏を止めたのでした。その時の、えー、なんというか、はっきり言いましょう、その「ダメダメ、速いよ(あるいは遅いよ)」と言った時の声と表情の「怖さ」が、ハンパなかったのです。近所のにこやかなおじさん、実はヤクザの大親分、みたいなそんな凄みが漏れ、客席みんな「うっわあ、やっぱすごい人なんだ……」と、凍りついたものです。
今回は、ギターやマンドリンやスチール・ギター(のようにヒザ上でアコースティック・ギターを弾く)の、高田漣とふたりによるステージ。ブログにも書いたけど、「こないだ転んで胸をしたたか打ってアバラ骨を2本折った」「なので咳をすると激痛が走る」「さっき楽屋で原田知世に肩をもんでもらって(ってことは観に来たんですね)、わーいって思って、そのまま帰ろうと思ったけど出番の時間がきてしまった」とか、そういうゆるい話を織り交ぜつつ、楽しくライヴは進行していくんだけど、その人間性と歌の「ドス効きまくった感じ」は、最後まで隠せないままでした。だって、1曲目からして“恋は桃色”だし。
あと、震災後、くるりと石巻にライヴをやりに行ったそうで、その時ライヴを観ていた若い子が、「無限の可能性を感じる!」と叫んでいた、というMC、特によかったです。
なお、ほんとは6曲目に“しんしんしん”をやる予定だったんだけど、「1曲カットしちゃった」そうです。で、ラスト“Roochoo Gumbo”には、くるりの5人とBoBoが参加、にぎやかにシメられました。


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マイア ヒラサワ
1. The Wrong Way
2. HUSH NOW
3. 太陽
4. It Doesn’t Stop
5. Fragile
6. 丘の上で
7. Star Again
8. Boom!

初出場。で、今年は海外アーティスト、ほかにいないし、彼女が唯一の海外アーティスト、と、言えなくもない。
今、ツアー中で、そのためにスウェーデンから来ているというメンバーふたり(ピアノとサックス)と3人で、「これ、リハ? それとも本番?」と判断に迷うような、かなり本気のサウンドチェックをしたあと、本人の
「ハアー、京都、初めてですね、ライヴ。たのしみ」
というひとことで、ステージがスタート。
で、驚くべきことに、ほんと、その言葉通りのライヴだった。歌うという行為に、本当に「解放」しかなさそう、この人。つまり、ストレスがなさそう。で、それがそのまんま聴き手に正面からぶつかって、だからこっちもそのまんま楽しくなっていって、それがまた本人に波及して……みたいな、そういうライヴでした。
特に、ヒット曲である2曲目と7曲目が、そうだった。音楽の発信者と受け手の間で、いいヴァイブが行き交っているのが目に見えるようだった。ファンじゃなくても知ってるキラーチューン持ってる人は、強いよなあ。と、フェスとかで思うこと、よくあるけど、まさにそれでした。


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斉藤和義
1. アゲハ
2. 空に星が綺麗
3. ウサギとカメ(新曲)
4. ずっと好きだった
5. ずっとウソだった
歌うたいのバラッド」

意外なことにこれが初登場、ひとりでアコギ弾き語りで登場。一般的なハイライトは、4曲目に“ずっと好きだった”をやって、続けてその替え歌である反原発ソング“ずっとウソだった”をやったところ、ということになると思います。客席「おおおおー!」って、盛り上がりました。これ、私は、フジロックでも観たけど、フジだけじゃなくて、この夏、全国各地でやっておられたようです。この日、NHKの収録が入っていたので、斉藤さん、「NHKさん、放送してくださいねー」っておっしゃってました。
ただ、私的にはそこではなくて、1曲目と3曲目がピークでした。1曲目は、ただ単に、個人的に好きな曲だから。11年前のシングルです。で、3曲目は新曲なんだけど、これ、すごい。いわゆる社会的な、怒りをぶちまけるようなメッセージソングなんだけど、その言葉のストレートさと、メロディのすばらしさ、めちゃめちゃ高いレベル。マジでこれ、“歩いて帰ろう”や“歌うたいのバラッド”レベルの、この人の代表曲だと思う。「斉藤和義で一番好きな曲、何?」と問われれば「“ジレンマ”!」と即答する人生を、私、長年送ってきましたが、それ、揺らいだかも。


京都音楽博覧会@京都梅小路公園・芝生広場
くるり
1. 奇跡
2. 旅の途中
3. 砂の星
4. BABY I LOVE YOU
5. 京都の大学生
6. いっぽ
7. バンドワゴン
8. 鹿児島おはら節
9. ブレーメン
10. 宿はなし
11. リバー
(w/TAKUMA(10-FEET)、フジファブリック、細野晴臣、マイア ヒラサワ、斉藤和義)

1から5までは、くるりの5人にペダル・スティールなどの高田漣とパーカッションのBoBoが加わった7人編成、6曲目と7曲目はメンバー5人、そしてまた7人になり、最後は上記の出演者たちも加わって、岸田「10-FEETに“リバー”って曲がありますが、そのカヴァーです」TAKUMA「ウソつけいっ!!」というわけで、くるりの方の“リバー”でシメ。なお、TAKUMAさん、でっかい蝶ネクタイを装着し髪を七三分けにするという卑怯なスタイリングでまた笑いをとっておられました。それから、5曲目“京都の大学生”では、岸田、楽器を置いてスタンドマイクで絶唱、そのあとステージを左右に踊りながらねり歩く、という、ちょっとレアな光景を観ることができました。
で、まーあ、これが、よかった。すごいねこのバンド。って、大学生だった頃からライヴ観てるのに今さら何言ってんだと自分でも思うが、いや、ほんとに。
このメンツを集めてこんなフェスをやれてしまう、という時点で、まず存在として、ほかに絶対いないんだけど、それ以上に、とにかくこんな音楽集団、あからさまに、ほかにいない。どこにもない、誰もやらない音、言葉、メロディに、とうにたどり着いて、しかもそれをどんどん更新し続けている。後続の若いバンドにとって、いろんな意味で理想的な存在。そんな、それこそ奥田民生のような立ち位置に、今のくるりは来ているんだなあ。ということに、今さらですが、気づきました。ただ、奥田民生は(実際はどうあれ)「飄々とそうなった」感じだけど、くるりは「必死で戦って、試行錯誤をくり返してそこに来た」みたいに見えるところが、違うところですが。どちらであれ、すばらしいことだと思う。

今年の『京都音楽博覧会』、過去の大物ゲストたちが勢ぞろいしたので、もしかして今年でいったん終わるつもりなのかなあ、と、開催前は思ったりしたんだけど、終わってみれば「たまたまそうなった」だけで、そんなつもりないんだな、ということが、特に何の説明もなかったけど、わかった。確かに豪華だったけど、「今年は豪華だったけど、去年はなあ……」みたいなものじゃなかったからだ。ある意味去年までと同じく、今年もすばらしかったからだ。

「今年で5周年になりますが、今年はいろいろ大変な年ですが、『音博』もどうしよかなと思ったんですけど、やってよかったです」
と、MCで岸田は言った。次のMCでは、
「5年、この『京都音博』やってるんですけど、今日はもう、ずっと感動しっぱなし、っていうと言葉が安いんですけど、ああ、音楽好きでよかったなあ、と思いました」
と、言った。こっちのセリフだ。と、13,000人、みんな、思ったと思う。
まだ何のアナウンスもないけど、来年も、楽しみにしています。(兵庫慎司)
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