ロックンロールへの夢と憧れを原動力に、ワルノリ気味に暴走してきたSISTER JETがいよいよ覚醒した。ふとそんなことを呟きたくなるような、充実したアクトだった。SISTER JETのワンマン・ツアー「Too Much Too Young Pretender Tour」の初日となる渋谷クアトロ公演。と言っても本ツアーは残すところ29日の梅田シャングリラ公演のみ、全2公演で構成されるミニ・ツアーである。これまで入場料前売り1000円(!)の日比谷野音ワンマンを敢行したり、日本青年館でライブを行ったりと、彼らのキャリアから考えると半ば無謀とも思える企画にガムシャラに挑んできたJETS。それに比べれば小じんまりとした印象の今回のツアーだが、だからこそSISTER JETの本気と地に足のついた信念が、ありありと透けて見える一夜だった。
スペースシャワーTVのSNSサイト「mob」との連動企画「PARTYはじまるまで、PARTYしようぜ! SISTER JET プレDJパーティー!」で幕を明けた今夜のアクト。mob DJのほか、サカベ(B)&ケンスケ(Dr)によるDJユニット・チキチキBROTHERSがお客さんのリクエストに基づいた楽曲をプレイして、開場時刻の17:00から開演までの1時間を盛り上げる。そして18:00過ぎ、Tシャツにパンツというラフな格好のワタルS(Vo/G)を先頭にメンバー3人が登場。挨拶なしでいきなり“恋してクレイジー”へ突入し、すでに1時間のDJタイムで温まっているフロアの空気をさらに加熱させていく。
“hello goodbye days”“ラブコメ”と間髪入れずに投下したところで、「ツアー1本目にしてセミ・ファイナル。ワンマンライブ20本分ぐらい楽しもうと思っているんで、よろしく!」とワタルS。確かに、この日のJETSは妙に気合が入ってる。時折ステージ中央に躍り出てぶっといギター・リフを弾き鳴らすワタルS。随所でコーラスやシャウトを挟み込みながら安定感あるビートを鳴らすサカベ(B)。そして一心不乱にタイトなリズムを叩き出すケンスケ。ワタルSの甘い歌声がカラフルな彩りを添えているものの、この3人が前のめり気味に奏でるアンサンブルの、ゴツゴツとした攻撃性がよく伝わってくる。なかでも“Pirates R.O.C.K”“わらえないぜ”を経て“マギーメイブルース”で場内をハンドクラップで満たした高揚感は、格別なものがあった。8月には「ロックンロールで発電せよ!」という大義名分のもとにシングル「ロックンロール発電所」をリリースした彼らだが、まさしくギターやドラムの鳴りひとつで場内の空気をスパークさせていくような凄まじい覚醒感が、今夜の演奏には宿っていたように思う。
“I know”で幕を開けた中盤は、ワタルSいわく「噛みしめゾーン」。“I my ガール Romantic ボーイ”“LOVE SONG(ON THE AIR)”と、トキメキと切なさが交錯する「あの娘」への想いを綴った楽曲で、センチメンタルな情景を広げていく。途中には、「高校生のときに読んでまったく共感できなかった村上春樹の『ノルウェイの森』を改めて読んだら、ものすごく感動した」とワタルSが熱弁するシーンも。さらに「家でジョジョっていうコーギー犬を飼っているんだけど、コイツは食べ物が目の前にあると、食べ物に向かってまっしぐらに走っていくのね。それを見て、動物は本能に忠実でほんとカッコいいなと思って。それに比べて人間はいかに中途半端か。でも人間には心があるから。だから中途半端になっちゃうし、そんな中でも何か大きな選択をできる人ってすごいと思う。次にやるのは、そんなことを考えながら作った曲です」という紹介から披露された、新曲“セブンティーン”がとても良かった。光の粒を思わせるような清冽なギター・サウンドに乗せて、「終わりが始まりなんだ」と歌われるこの曲。その後に鳴らされた“SAY YES”の爆発力や“ナミダあふれても”の豊潤なエモーションに比べると派手さはないが、温もりに溢れた音のひとつひとつに、絶望を希望の色に変えていこうとする静かな決意が宿っている気がして、胸が熱くなった。
その後は、ラストへ向けてノンストップのダンスタイム! “8ビートはパンク少年のもの”で再びフロアを沸点へ押し上げると、“さよならポケット”“Young Pretender”と畳み掛ける。さらに曲のつなぎで3人が躍動的なセッションを繰り広げれば、フロアのあちこちから沸き起こるハンドクラップの嵐! そのまま “MR.LONELY”へ雪崩れ込むと、「ときどき思います。なんで俺はこんなに独りなんだろうとか、幸せって何だろうとか。でも俺らは動物じゃねえし、中途半端でいいと思う。心があるから俺はロックンロールが好きだし、それでいいと思います!」と終盤の間奏でワタルSが告げた言葉とともに、90分弱のアクトは熱狂と感傷が入り混じる壮烈なラストを迎えた。
アンコールでは、“キャラメルフレーバー”“to you”を連打。さらにダブルアンコールでは、アコギを抱えたワタルSひとりが登場。ルイ・アームストロングの“What a Wonderful World”の一節を奏でたかと思いきや、「俺の美学として、SISTER JETはこの3人だと思っているから。誰かが辞めてサポートを入れるのは絶対イヤだし、ひとり辞めたら解散だと思っている」と、やけに真剣な口調で語り始める。そして、メンバー同士の喧嘩が絶えなかったバンド結成初期に作ったという“BAND ON THE RUN”を弾き語りで披露。演奏直後にSISTER JETフラッグを手にしたサカベとケンスケがステージに登場すると「俺、弾き語りでも全然いけるわ。うるさいドラムとミスるベースがいない方が全然いい!」と照れ隠しで悪態をついたりしていたが、最後は3人で仲良く“La La Dance”をプレイして華々しいパーティーの幕切れとなった。
青春の輝きに満ちた、SISTER JETのパーティー・ロックンロール・ショウ。しかし今夜のライブで印象的だったのは、煌びやかなパーティーとは対を成すような、切実なムードだった。凄まじい気迫に満ちた三位一体のアンサンブルしかり、新曲“セブンティーン”のシリアスな響きしかり。もちろんキラー・チューン乱れ打ちの、最高に踊れて楽しい2時間だったけれど、彼らの「伝えたい」という思いが今まで以上に外に向いたアクトだったように思えた。それは何故か。名曲揃いの最新フル・アルバム『LONELY PLANET BOY』を発表した自信がそうさせたのかもしれないし、はたまた震災を経て改めてロックンロールの力に目覚めた3人の、熱き思いがそうさせたのかもしれない。どちらにせよ、今のSISTER JETが今まで以上に強い信念を持って、夢と希望にあふれたロックンロールを鳴らしているのは明らかだ。今夜のアクトには、そんな彼らの漲るエネルギーと説得力が確かに宿っていたように思う。そういう意味でも、今回のツアーは僅か2公演というアクト数以上の大きな意味を持った、充実のツアーだったのではないか。(齋藤美穂)
セットリスト
1. 恋してクレイジー
2. hello goodbye days
3. ラブコメ
4. Pirates R.O.C.K.
5. わらえないぜ
6. マギーメイブルース
7. I know
8. I my ガール Romantic ボーイ
9. LOVE SONG(ON THE AIR)
10. アディオス・アミーゴ
11. セブンティーン
12. SAY YES
13. ナミダあふれても
14. 8ビートはパンク少年のもの
15. さよならポケット
16. Young Pretender
17. MR.LONELY
アンコール
18. キャラメルフレーバー
19. to you
ダブルアンコール
20. BAND ON THE RUN
21. La La Dance
SISTER JET @ 渋谷クラブクアトロ
2011.10.23