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    阿部真央 @ Zepp Tokyo

    阿部真央 @ Zepp Tokyo
    阿部真央 @ Zepp Tokyo
    阿部真央 @ Zepp Tokyo - pics by 古渓一道pics by 古渓一道
    「ちょうど1年前くらい前にここでライヴをさせていただいた時、必ず阿部真央は来年パワーアップして帰ってきますと約束したんですけど、今日はみんなにパワーアップした阿部真央を見てもらって、もう年の瀬だけど、来年も頑張ろうかなと思ってもらえるライヴをしようとやってきました!」

    昨年末以降声帯の治療により一時活動を休止していた阿部真央の、復帰後初の本格的な全国ツアー「阿部真央らいぶNO.3〜ZEPPとQUATTROだけでごめんねTOUR〜」のファイナル。定刻ぴったりに照明が落ち、大歓声に沸く満場のZEPP TOKYO。しばらくの後、バンドメンバーを引き連れて阿部が登場。右手を振り上げ、打ち鳴らされたオープニング・ナンバーは“ふりぃ”。トリプル・ギター+リズム隊の5人編成で届けられる重層的なアンサンブルに、すかさずフロアに拳が乱立。そして「一緒にZEPP TOKYO揺らしませんかー!」と飛び込んでいった“I wanna see you”では「歌ってー!」と巨大なシンガロングを巻き起こし、続く“give me your love”ではステージ前方を練り歩き、ハンドマイクで太くしなやかなボーカルを高らかに響かせる。その後も“未だ”“走れ”とアグレッシヴなアップ・ナンバーを掃射して、ロック・モードでエネルギッシュに転がっていく阿部は、弱冠21歳ながらも思わず「姐さん!」と呼びたくなるような、実に堂々とした佇まいである。

    その後は怒濤の攻勢で突き抜けた序盤の狂騒を“15の言葉”の透き通ったハイトーン・ボイスで優しく鎮めてから、“じゃあ、何故”を挟んでアコギ弾き語りで“貴方の恋人になりたいのです”へ。極めてシンプルなコード・ストロークで紡がれる阿部の弾き語り曲は、非常に「歌が立つ」作りになっている分、「切実な感情を歌に込めること」に関する彼女の破格のポテンシャルを必然的に浮かび上がらせる。そんな桁違いの感情量が込められた阿部の歌が、ZEPPを瞬く間に感動で包んでいく様は圧巻であった。続いては、「自分が後悔しないように、『ちゃんと自分の気持ちを伝えよう!』とみんなに思ってほしくて書いた曲です」と、友人の恋愛体験を基に作ったバラード・ナンバー“側にいて”を披露。キーボーディストを迎え、繊細なピアノを中心に据えたバンド・アンサンブルにのせて狂おしい想いを歌い上げる阿部の表情は、内省に満ちた哀しみを強く宿していた。

    しっとりとした楽曲が並んだ中盤のブロックを“光”で締めくくり、“19歳の唄”で再びフロアのテンションを上昇させた後、阿部は声帯の治療から始まった2011年を振り返り語った。1月に声帯手術を行い、術後のリハビリで小さい頃から当たり前のようにやってきた「声を出す」という行為ができずに戸惑ったこと。夏に行われた東京と大阪でのライヴでも、喉を痛めないための歌い方が練習通りにできずにジレンマを感じていたこと。そんなことがあって落ち込んでいる時期に、ファンから届いた「待ってるからね」という手紙やメールに大いに勇気づけられたこと。そしてこの時の経験から、「今の落ち込んでる時間は無駄じゃないし、必ず自分にとって財産になって戻ってくる。乗り越えた自分はその分強くなってるし、絶対にそれは価値のある時間だっていうことを伝えたい」と思えるようになったことを語り、最後に改めてファンに向けて感謝を口にしてから、「もうね、大好きなの。みんなのことが。だから次の歌は、みんなへの愛を込めて歌いたいと思います」と“いつの日も”へと流れ込む。《私、今日まで貴方に何度も恋して/何度も泣いたけど 今、とても幸せよ》。《ずっとその手に抱き留めて/もう何も見ないで 私だけを見つめて》。《次に生まれ変わっても 貴方を探すから/もう一度見つけて》。この曲で歌われている「貴方」への想いはこの日、言うまでもなくここにいるオーディエンスひとりひとりに向けられていた。そしてオーディエンスも同じくらい強い気持ちで、ステージに立つ「貴方」を想った。この一連の「人と人が繋がっていく」美しい光景に、涙腺が緩んで仕方なかった。

    “いつの日も”で最高潮まで高まった会場の一体感をそのままに、阿部のアコギ・イントロから突入した“伝えたいこと”、「夜へ夜へ」のコールアンドレスポンスがバッチリ決まった“loving DARLING”が発射されると、ライヴの勢いは急加速。フロア中にタオルが回った“YURALI forever”、阿部とサポート・ギタリスト和田健一郎が背中合わせでギターをかき鳴らした“モットー。”と駆け抜けていき、「みなさん楽しんでますかー! まだまだ歌いたいですかー!」と本編ラストの“ポーカーフェイス”を投下。フロアに巻き起こる盛大なシンガロングにのって、クライマックスまで一気呵成に上り詰めた。

    黒いドレスから白いツアーTシャツに着替えて行われた1回目のアンコールでは、キュートなテクノ・ポップ・ナンバー“モンロー”、フロアのジャンプで会場を揺らした“ロンリー”を立て続けに披露して、ツアーファイナルの祝祭感を爆発させる。そしてダブルアンコールでは、「最後は私のデビューのきっかけとなった歌を歌います」と“母の唄”を弾き語り、「阿部真央らいぶNO.3〜ZEPPとQUATTROだけでごめんねTOUR〜」は大団円を迎えた。困難を乗り越え完全復活を遂げた阿部真央は、これから更に多くの「貴方」の心にぴったりと寄り添う歌を届けてくれるはず。そんな期待を当たり前のように抱かせてくれるほど、この日のステージは素晴らしかった。今こそ声を大にして言いたい。あべま、おかえり!(前島耕)


    [セットリスト]

    1. ふりぃ
    2. I wanna see you
    3. give me your love
    4. 未だ
    5. 走れ
    6. 15の言葉
    7. じゃあ、何故
    8. 貴方の恋人になりたいのです
    9. 側にいて
    10. TA
    11. 光
    12. 19歳の唄
    13. いつの日も
    14. 伝えたいこと
    15. loving DARLING
    16. YURALI forever
    17. モットー。
    18. ポーカーフェイス

    アンコール
    1. モンロー
    2. ロンリー

    ダブルアンコール
    1. 母の唄
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