SUPER BUTTER DOG“TOUR ザ グッバイ” @ 日比谷野外音楽堂

SUPER BUTTER DOG
変な言い方だけど、このバンドの解散ほど、「ええっなんで?」とはならなかったというか、「まあ、しょうがない」と思えた解散はなかった。いや、もちろん悲しいし寂しいし、せっかく復活したと思ったら解散なわけで「なんじゃそりゃ」とも言えるし、びっくりしたけど、理由が理由だけに、文句を言う気になれなかったのだ。

まず、メイン・コンポーザー永積タカシとバンドのやりたいことがずれてきたので、休止したと。数年後、集まる機会があってライブをやってみたらいい感じだったので、「これはやれるかも」ってことになって、復活したと。それでライブを何本かやったとこまではよかったんだけど、レコーディングに入ってみたら「あら? やっぱできない」ってなったから、解散すると。

どうよこの理由。正直すぎない? こんなかっこ悪い実情をそのまんま明かされてしまったら、「ああ、じゃあしょうがないね」と言うしかないじゃないか。無理やりにでも1枚ラスト・アルバムを作るとかすればいいのに、それもしなかったってことは、本当にできなかったんだろうな、と思うしかないじゃないか。だからしょうがない。最後を見届けよう、そして楽しもう。と思って足を運んだのだが。

開演予定時刻を15分ちょっとオーバーした17時過ぎ、『サザエさん』のエンディング曲(インストバージョン)に合わせてひとりずつメンバーが現れる。初期のメンバーだったコーラスMEGも登場し、永積の「解散っぽくないでしょ?(笑)」というひとことと共に、1stアルバムの曲3連発でライブがスタート。永積の爆笑MC(「メンバーにも10年近く黙ってたことがある」って、何を言うのかと思ったら「実は“真夜中のスーパー・フリーク”の歌詞は、8割方お母さんに書いてもらった」というとんでもない告白でした。メンバー愕然、野音大爆笑。家で歌詞を書いていて、お母さんに見せたら「こんなの全然スーパー・フリークじゃない、ただ自転車でウロウロしたいだけの人の歌よ」とダメ出しされたそうです)をはさんでゲスト・パーカッション田中慶一が加わり、“日々GO GO”。途中で、なんとライムスターMUMMY-D&宇多丸が登場、そのままSBDが参加したライムスターの曲“This Y’all,That Y’all”になだれこむ。

“外出中”“コード”“5秒前の午後”でしっとりと、かつサイケデリックに聴かせ、“FUNKYウーロン茶”“コミュニケーション・ブレイクダンス”“五十音”“マッケンLO”で野音のテンションをあっさりと沸点まで上げ、「明るく空虚、楽しく絶望、熱く諸行無常」なSBDの真骨頂“セ・ツ・ナ”で本編をしめくくる。なお、この曲の途中で永積は「この言葉がいちばんSUPER BUTTER DOGを言い表している」というような前置きをして、次のフレーズを歌った。
「『足りねー!!』って 放つメッセージ無くねー?」

正に。正にそういうバンドだったよなあ、と思いながらも、曲が進んでいけばいくほど、最初に書いた「しょうがない」という気持ちがどんどん薄れていくのを感じていた。
別に解散しなくていいじゃん。やればいいじゃん。今できないんだったら、活動休止にしてほっときゃいいじゃん。これまでもそうだったんだから。で、5年後でも10年後でも、やれそうになったらやりゃあいいじゃん。なんできっちり解散するかなあ、そんな律儀に。もっといいかげんでいいんだって、バンドの終わり方なんて。ほら、RCサクセションだって、休止からもう17年くらい経ってるけど、実はまだ正式に解散してないよ?

というようなことを、頭の中でグルグル考えながら観ていた。なんでかって、ライブがよすぎたのだ。すごいグルーヴとすばらしいメロディと最高のパフォーマンスだったのだ。はっきり言うけど、僕が知っているSBDは、こんなすばらしいライブをやれるバンドではなかった。「うっわあこのバンド、CDはいいけどライブ全然ダメだわ、どうしよう」と思った、初めての渋谷クアトロワンマン。初めて満員になった、新宿リキッドルーム。これも満員だった(ただし、確かFMラジオの無料招待イベントだった)赤坂BLITZ。青山CAYで夜中にやっていた主催イベント『FUNKY大百科』。朝いちで楽屋では眠そうだったけど、ステージに上がったらピッと空気が変わった、ロック・イン・ジャパンのレイク・ステージ。ここ日比谷野音で、雨の中トリを務めた、スペースシャワーのイベント『SWEET LOVE SHOWER』。復帰後の、同じくここ日比谷野音の『FUNKY大百科』。そして、昨年のロック・イン・ジャパン。

年月を経るほどに、だんだんライブはよくなっていったけど、どれも今日ほどではなかった。今日がいちばんよかった。最後ってことで、バンド側にも観る側にも特別な思いがあったからすばらしかった、ってだけじゃないと思う。もっと物理的に、人前に立って楽器を弾いて歌を歌う集団として、これまでで今日が最も優れていた、明らかに。ってことは今がいちばんいいんじゃん。なあんでやめるかなあ。

アンコールは3回。1回目はMEGと、同じく初期メンバーの栗原健(SAX)も加わって、初期の曲3連打。2回目は、“エ!? スネ毛”で最前列の女の子をステージに上げ、歌詞でセクハラしながら一緒にダンス。3回目のアンコールで、もしかしたらやらないかもと(僕は)思っていた“サヨナラCOLOR”を遂に歌う。永積、涙。スタッフやファンに対する感謝をのべたあと、デビューから現在まで連れ添った唯一のスタッフであるマネージャーをステージに呼び、5人からバラの花束を贈呈。本当の最後の曲は、こないだ出た「ベター盤」に収録の、復帰後唯一の新曲“あいのわ”だった。

と、いちばん新しい曲で終わったことと、ここまでさんざん書いたように、今日のライブがこれまででいちばんよかったという事実が、何を表しているか。このバンドが、まだ現在進行形のままだってことだ。おまけに、何度も何度も「解散っぽくないでしょ?」って口にしていた永積は、二度目のアンコールの時に「解散感、ないね。またやるよ?」と言った。
以上の理由から、僕はこれを解散と認めないことにしました。これは、つい解散という言葉を使ってしまった活動休止です。いつになるかわからないけど、次のアクションを待ってます。もちろん、それぞれの活動もひき続き追います。つまり、これまでと同じだってことです。(兵庫慎司)

1.犬にくわえさせろ
2.真夜中のスーパー・フリーク
3.ゆっくりまわっていくようだ
4.FUNKY労働者
5.YO! 兄弟
6.O.K.
7.日々Go Go
8.This Y’all,That Y’all
9.外出中
10.コード
11.5秒前の午後
12.FUNKYウーロン茶
13.コミュニケーション・ブレイクダンス
14.五十音
15.マッケンLO
16.セ・ツ・ナ
アンコール1
17.メロディーの毛布にくるまって
18.終電まぎわのバンヂージャンプ
19.かけひきのジャッヂメント
アンコール2
20.ヒマワリ
21.まわれダイヤル
22.エ!? スネ毛
アンコール3
23.サヨナラCOLOR
24.あいのわ