キューン20イヤーズ&デイズ 真心ブラザ―ズ/ゴスペラーズ@LIQUIDROOM EBISU

4月7日(土)から30日(月・祝)にかけての20日間、キューンミュージック所属のアーティスト達が入れ替わり立ち替わりでLIQUIDROOM EBISUに登場するという大イベント、その初日。これは、この4月1日を以て設立20周年を迎えた同レーベルがその記念として、そして社名をキューンレコードからキューンミュージックへと変更したこともアピールする趣旨で企画したもの。

キューンといえばすでにロックファンには説明不要の、ひと癖もふた癖もあるキャラの濃いアーティストがズラリと揃ったレーべルであり、革新性雑食性ともにメジャーという立ち位置にあっては日本でも独自のカラ―を持ったレーベル。その一大イベントともなれば何が起きるかわからないスリルも加味され、こちらとしても時間さえあれば全日駆けつけたいくらいの興味がふつふつと沸く20日間。そんな期待の中、先陣を切って初日に登場するのが真心ブラザ―ズとゴスペラーズという一見相容れなさそうな組合せだ。

しかしながら20年前を思い起こすに、こういう意表を突いたアイデアに躊躇の無いところこそがこのレーベルの出発点であり、リスナーである当時の自分も好奇心を掻き立てられていた部分でもあるわけで、そんな気概を今また思い起こさせるという意味で実に”してやったり”のブッキングという気も。実際、2者とも同レーベル生え抜きのアーティストであり、ましてやライヴの巧さという点で”任せて安心”な存在感は群を抜いている。

キューン20イヤーズ&デイズ 真心ブラザ―ズ/ゴスペラーズ@LIQUIDROOM EBISU
予定開演時刻19時を5分ほど過ぎたところで、BGMがフェイドアウトし場内が暗転。満杯となっているオーディエンスが一斉に歓声を上げるや、ゆっくりとステージ上の幕が左右に開ききらないうちからイントロも無いまま”愛してる~”と村上テツヤの力強い声が響き、すぐさま4人の折り重なった“ウ~”というコーラスが場内に深く染み渡る。そう、初日のトップ、20日間という大イベントのオープニング・ナンバーとなったのはゴスペラーズの代表曲「ひとり」。多くのアカペラ・グループがそうであるように、まずは互いの声を確認するためステージ中央に半円を描くように集まり、演奏は無くとも声の結集力だけで多くのエネルギーを放出できることをアピールする姿勢が、まずは美しくも逞しい。
1曲目を完全アカペラで歌い切り、まずは場内を一度思い切りゴスペラーズ色に染めた後、そこからはイベントらしく一気にエンターテイメントの時間に突入する。続いての曲はテレビ番組のテーマ曲として有名になった「靴は履いたまま」。ここからバンド演奏が入り、グルーヴィーなリズムが入るや5人が一斉に軽やかな足取りとともにステージ左右に広がり、お揃いのステップとハンドクラップでめくるめく一夜に華を添えていく展開に。こういうソウル・レビュー・ショーをルーツとするショーアップ性も彼等の大きな魅力で、リード・ヴォーカルを短いパッセージで入れ替えながら、時にオーディエンスにマイクを向け場内を一気に盛り上げていくのだが、今やこういう手法も実に手慣れたものに。もちろん「真心さんのお客さんもご一緒に!」の一言を欠かさない心遣いも憎く、そのままアッパーな空気をリレーする「一筋の奇跡」、そしてソウルフルなフェイクが狂おしい「ミモザ」と、ゴスペラーズの何たるかを凝縮したストレートなメニューで完全に場の空気を作っていく。

ここでようやくMCタイムとなるのだが、彼等の場合、全員がやたら口達者でなおかつ話の展開がめまぐるしいので、以下、要点をまとめます。
・キューンという耳慣れない言葉は「気運」をもじったもの。素晴らしいアイデア。
・厳しいグローバル経済の下、レーベルの統廃合も激しい中、20年続いているなんて凄いことだと思う。本当におめでとうございます。
・それはなにより、キューンというレーベルのファンの方々がいてくれたおかげ。
・それはつまり、ここにお集まりいただいた皆さんということです。ありがとう。
といったコメントをひとしきり述べ、場内を一瞬しんみりさせたかと思いきや、いきなり村上が「さあ、これだけ言えば今日の仕事は終わりだ!」と叫んで次にいく流れに、今日は演る側も聴く側も”大人”な場内は大爆笑。こういうパンキッシュなところもゴスペラーズ。

中盤は彼等初のNo.1ヒットになったアルバム『Love Notes』からの曲を中心に、今一度コーラス・グループとしての本懐を示しながら、終盤2曲は怒涛のファンク・ナンバーで一気に盛り上げる、忙しくも的を得た展開。「いろは2010」では村上がサックスを吹くコーナーが定番なのだが、今日はスポットがあたるもサックスを手にしたまま全く吹き始めない。そこで予告なしに真心ブラザ―ズのホーン隊”マウンテン・ホーンズ”の4人が登場し、一気にファンク風味をアップグレードしていくという粋な演出も、まさにこの日ならではのサプライズ(実は村上とマウンテン・ホーンズは旧知の仲)。最後はグループ内のお祭り男・酒井がステージ中央に躍り出るや「おめでとう!」「ありがとう!」をしつこく連呼。そして「”とう”と”とう”で20だ!最後、みんなで一本締め!」と、アメリカ的ファンキーネスと日本の宴会をごちゃ混ぜにしたような叫びで強引に締め括る嵐のような展開に。通常3時間は下らないライヴを1時間に濃縮したメニューは、イベント初っ端としては濃すぎる内容ながら、こういう破天荒さこそがゴスペラーズ、そしてキューンの本懐。

キューン20イヤーズ&デイズ 真心ブラザ―ズ/ゴスペラーズ@LIQUIDROOM EBISU
続いて約15分のインターバルを挟み、真心ブラザ―ズが登場。YO-KINGを筆頭にいつものMB'sを引き連れた総勢10人によるフル編成がLIQUIDROOM EBISUのステージにずらり並ぶ絵はなかなかに壮観。まずは桜井のギターのフィードバック・ノイズが会場に轟き、彼が一歩前に出、スポットを浴びる中で弾き始めたギター・リフは「新しい夜明け」。通常のライヴでは後半に登場し、場内一体となったハンド・クラッピングで幸福感を促すナンバーだが、今日はイベントの趣旨に沿った流れで冒頭から祝賀ムードを醸し出す。そのまま「BABY BABY BAY」~「空にまいあがれ」と陽性ナンバーを連発しながら、うつみようこのコーラスやマウンテン・ホーンズのひとりひとりをフィーチャー。ファンキーな中にもおおらかな情緒を持った各人の声・演奏も、今日の趣旨を踏まえつつ同時に今の真心ブラザ―ズのモードを的確に表現したもので、20年の奮闘の歳月をしっかりと感じさせる頼もしさがいい。しきりに「イエ~イ」を連発するYO-KINGも、この日は景気付けというよりはライヴハウスらしい親近感を重視していたフシも。

最初のMCでYO-KINGは「今日は、こんなにお集まりいただいてありがとうございます。本来ならね、20周年なんてレーベルとアーティストだけで祝っていればいい話なんですが、みなさんにこうしてお金まで出していただいて(笑)。正直、いろいろ業界大変なんで…。僕等はもういいんです。ただ若い人はこれからなので。この地位になると若い人達のことを心配しなきゃならないんです。だから、お金ちょうだい!」と余裕なんだか真面目なんだかよく分からない話をかましていたが、それがゴスペラーズの時と同様にOKになってしまうのも、20年音楽ファンでいてくれた今日のオーディエンスあらばこその話。ひとしきり祝賀コメントを述べ落ち着いた後は、その流れを汲んで珍しくも彼等のキューン最初のアルバム『善意の第3者』からの哀愁ナンバー「旅の夢」を披露する流れに(真心ブラザ―ズはキューン設立以前にエピックからデビューしていて、キューン設立と同時に社内移籍したのです)。”さまよう””ただよう”という言葉が何度も登場する、当時の彼等の心許なさを表現したナンバーを組み込むあたりにも、静かに20年の歳月の重さを感じさせる。

そのしみじみモードに乗ってセットリストにも入っていない予定外の出来事が。実はこの20周年イベント、翌日はアマチュアのニュー・フェイスによるオーディションが行われるのだが、そこからいち早く注目アクトを桜井が「“真心賞”として本日お呼びしました」として紹介。そこで登場したのは、眼鏡と白シャツそしてアコ―スティック・ギターというたたずまいが実に純朴な19歳の青年で場内がちょっとどよめく。しかし、彼、増子周作くんは先月北海道から上京してきたばかりというのに、真心&JB’sの演奏に全然ひけをとらない熱っぽい歌声で存在感をアピール。“コンビニの灯りを目指しながらブルーのトンネルを抜ける。蛍光灯、太陽の光よりもやさしい”と語りかける歌は確かに21世紀の視線を携えた新しい詩情で、言ってしまえば20数年昔にまさに真心ブラザ―ズが登場してきた瞬間を思わせるフシも。ご興味の湧いた方は、本日のLIQUIDROOM EBISUに出向かれてみてはいかがでしょう。本日は無料で17時スタート。

彼が歌い終えた後、「10代の瞳って、こんなに澄んでいるんだ」というYO-KINGの台詞もしみじみと、ここからさらに往年のフォーク時代の楽曲に突入か?と思いきや、YO-KINGがいきなり大声で「さぁ、ここからは濁ったベテランの時間です。みんな、濁ってるか~い!」と無理矢理場内の色を当初の状態に引き戻す。桜井も「空気、戻しますか?」と笑っていたが、ここで登場したのは今月リリースのニューアルバム『Keep on traveling』の楽曲「Keep on smilimg」。ミディアムのシャッフル・ビートに乗って“楽しい気持ちを信じる”という大意を持ったこの曲は、YO-KINGの「濁るほど、笑顔の大切さが分かります!」という叫びとも相俟って、今の真心ブラザ―ズのモードだけでなくともに成長してきたオーディエンスへの激励ともいえるポジティブさを放つ。
そして締めは「拝啓、ジョン・レノン」「EVERYBODY SINGIN’ LOVE SONG」という代表曲の強力セット。それぞれ、彼等のストイック面とシンガロング面を象徴するナンバーだが、これらの曲もすでに10年上歌われ続けているという事実、そしてフェスやイベントでの浸透度の高かさもあり、ゴスペラーズのファンをも巻き込んでの手拍子やコーラスは、20周年イベントの初日大団円として、見事な一体感そして高揚感を持ったものになった。

キューン20イヤーズ&デイズ 真心ブラザ―ズ/ゴスペラーズ@LIQUIDROOM EBISU
そしてアンコ―ルでは、2組の共演コーナーが実現。真心ブラザ―ズの2人、そしてゴスペラーズの5人が、黒地に白でレーベルのロゴをプリントしたTシャツに着替えて登場。
共演するのは初めてという両者だったが、年齢的にも近く、しかも大学も同じならレーベルも同じという不思議な縁に、お互い驚きながらもすっかり打ち解けている様子が面白い。「ENDLESS SUMMER NUDE」が始まるや、桜井の「それでは、カラオケでモテようとしている6人の男たちのつもりでご覧ください!」という気の置けないMCも最早全然OKな雰囲気で喧騒の時間の幕が切って落とされる。入れかわり立ち替わりのめまぐるしいヴォーカル・リレーであっという間に曲が終わってしまうも、「いやー、俺が俺が!でしたね」「こんなギラギラしたのも久しぶり」「こんなにモテたいのか、俺たちは?」と初共演とは思えないぶっちゃけ感にYO-KINGも「コントやってるみたいで面白い!」と場は予想外の盛り上がりを見せていく。

そんな場を締めるのは最早この曲しかなく、最後の最後は「どか~ん」を増子くん含む全員で合唱するという、ほとんど無理矢理なオチでイベントは幕。それでも、全員ステージ上からすぐにははけようとせず「何でまだいようとするの?」「そろそろ帰りませんか」という話になってようやくステージの幕が閉じるという饗宴となったのが、イベント初日のこの夜。
今後も、不思議な対バンや企画が続々と予定されているこの「キューン20イヤーズ&デイズ」だが、こういう予想外のケミストリーがまだまだ頻繁に発生することと思われるので、何かカンの虫がうずく方は是非ともご覧になった方がいいと思います。(小池清彦)

セットリスト

ゴスペラーズ
1:ひとり
2:靴は履いたまま
3:一筋の軌跡
4:ミモザ
5:あたらしい世界~U’ll Be Mine
6:永遠に
7:Promise
8:いろは 2010
9:FIVE KEYS

真心ブラザ―ズ
1:新しい夜明け
2:BABY BABY BABY
3:空にまいあがれ
4:旅の夢
5:Keep on smiling
6:Song of You
7:拝啓、ジョン・レノン
8:EVERYBODY SINGIN’ LOVE SONG

アンコール
1:ENDLESS SUMMER NUDE
2:どか~ん

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