BOOM BOOM SATELLITES ゲスト:サカナクション@新木場スタジオコースト

BOOM BOOM SATELLITES   ゲスト:サカナクション@新木場スタジオコースト
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3月から行われてきたBOOM BOOM SATELLITESにとって初となる日本のバンド(3組)との2マンツアー「BRANDNEW CHAPTER ーGARDEN OF DELIGHTー」。その、9mm parabellum bullet、マキシマム ザ ホルモンとのライヴを経たツアーファイナルとしてサカナクションを迎え4月1日に行われるはずだったライヴの振替公演となったのが本日だ。自身の急性肺炎が原因でライヴが延期になった事実を重く受け止め、本編の終わりやアンコールの始めと終わり、つまりライヴが途切れる節目の度に何度となく「ありがとう」と言い、ステージの端から端まで深くお辞儀をする川島の姿は非常に真摯で、かつエモーショナルであったが、今日のブンブンはそんなドラマさえ飲み込むほどにただただ圧倒的な音楽が会場を包み込む、最高のライヴを見せてくれた。

 主催者側のスタッフによる延期の謝罪と今日改めて開催できたことに対する感謝が述べられたのち(こういう場面、初めて見た)、先攻・サカナクションが登場。ステージ前方に5人が横並びでMacBookを操作し始め、ビートが編まれていく。このDJ風の演出や、ほぼMCなし、曲間もほぼ全てシームレスというライヴ構成は、19日にファイナルを迎えた自身のツアーの内容を凝縮したものであったことは確かだが、それにしても「ツアーの勢いそのままに」という以上の気迫が今日のサカナクションからは感じられた。「アンダーグラウンドとエンターテインメントを繋ぐ存在になりたい」という発言を山口はよく口にしているが、そこに留まらず、海外と国内、前衛とポップ、クラブ・ミュージックとロックンロールなど、様々な垣根に穴を開けてきた無二のフロンティアにしてトップランナーこそがBOOM BOOM SATELLITESであるのだから、言わば直系の先輩である彼らとの対バンに気合が入るのは想像に難くない。その熱の籠った演奏と、代表曲の連打によって、充分すぎるほどにフロアを温めた50分間だった。
BOOM BOOM SATELLITES   ゲスト:サカナクション@新木場スタジオコースト
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 セットチェンジ中ステージに張られていた暗幕が静かに開くと、左にサポートドラムの福田洋子、真ん中に中野、右に川島という立ち位置で、BOOM BOOM SATELLITESが現れる。1曲目は、映画主題歌(映画『アップルシード』の荒牧監督との再タッグとのこと)として7月18日に配信シングルとしてリリースが予定されている新曲“ANOTHER PERFECT DAY”。これが、滅茶苦茶に良い曲。1曲の中で静から動へ大胆に転換する、ポスト・ロック以降の言わば王道の「型」を、ブンブン流にやるとここまでピカピカの真新しいフォルムになり極上のカタルシスが宿るのかと、聴いている間興奮しきりだった。2曲目“MOMENT I COUNT”ではまず、福田洋子のスネアの音の大きさと硬さに耳を奪われる。複雑にビートを組むことよりもビートの強度を上げることに主眼を置く近年のブンブンにとって、彼女のハードなドラムはもはや欠かせないファクターになっていると思う。また、曲の中で音数が増していくにつれ感心したのが、1つ1つの音の良さ。今日のライヴ全編を通じてのことでもあるが、鳴らされるのは全て強く、大きい音でありながら、耳に痛い音は1つもなかった。壁のような分厚いサウンドを構築しながらも、細心の注意を持って音の配置と音色を選んでいるがためのことだろう。

 今日のブンブンのモードを一言で表現するならば、それは「格好良い」に尽きる。見ながら取っていたメモを読み返すと、自分でも呆れるほど何箇所も「カッコイイ」と書き殴っているのだが、それも仕方がない。それだけ格好良かったのだから。例えば、 “BACK ON MY FEET”での、川島と中野がそれぞれステージの左右に立ち、ギターを振り下ろす仕草をシンクロさせるアクションだったり、あるいは“FOGBOUND”で中野と福田が向かい合い一騎打ちのような趣でビートの応酬をしたりといった演出が、いちいち溜息が出るほどに格好良く、気が付くと見惚れてしまっていたのだ。では、何故今の彼らはこんなにも格好良いのか。それは、彼らの思考や概念を肉体が上回っているからだと思う。理性と知性を意図的に野生と本能で覆いこむことでロックのフィールドに接近し世界を広げたのが『FULL OF ELEVATING PLEASURES』以降の彼らのトライアルだったとしたら、その結果としてどれだけ知性を駆使して音楽を作り奏でても、そこに決して消えることのない野生が染み込んだのが今の彼らなのである。あの緻密な楽曲を演奏するにあたって、音楽に彼らが引っ張られるのではなく、彼らが音楽を引き上げているように見えるというのは、本当に驚くべきことだと思う。
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 人気曲を数多く抱える彼らのレパートリーの中でも頭一つ抜けた特大のアンセム“KICK IT OUT”でフロアの温度と湿度をもう一段階上げて本編を締めくくった後、ほとんど間を空けずに再登場してのアンコール1曲目は本日最速BPMとなるこれまたブチ上げチューン“MORNING AFTER”。容赦なしである。最後の最後に演奏された、エレクトリック・マイルス(ジャズの巨人マイルス・デイヴィスがロックやファンクに接近した時期を指す)の影響が香るダークでファンキーな“DRESS LIKE AN ANGEL”も含め、サウンド的にはなかなかに距離のあるはずの3曲だが、「格好良い」という絶対のルールを共通項とし違和感なしに彼らは繋いでしまう。こうなると、どんなセトリでどんなライヴをやろうと、成功しない画を思い浮かべることはちょっと難しい。それどころか、出演が決まっている今年のフジ・ロックにおいて、同日のヘッドライナーであるストーン・ローゼズやジェイムス・ブレイクさえ食ってしまうのではないか。終演後、今日のライヴの素晴らしさを物語るようにできた物販の異常な長蛇の列に並びながら、そんな期待と興奮を抑えることができなかった。(長瀬昇)
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≪セットリスト≫
1.ANOTHER PERFECT DAY
2.MOMENT I COUNT
3.BACK ON MY FEET
4.BROKEN MIRROR
5.STAY
6.FOGBOUND
7.EASY ACTION
8.KICK IT OUT

アンコール
1.MORNING AFTER
2.DRESS LIKE AN ANGEL
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