先行するのはねごと。ダンサブルなバンド・グルーヴとコズミックな音響によってオーディエンスを一息に呑み込んでゆく“ループ”からスタートだ。澤村小夜子(Dr./Cho.)は「きのう、打ち上げで焼き肉に行って、ずっとあたしがトング係で、左手がつった」と嘆いていたけれど、ダイナミックに響き渡るグルーヴのボトムを担うそのドラム・プレイに不調は微塵も感じられない。ザ・クリブスのナンバーを完全に自分たちのものにしてしまっている“Tonight”では、「ベイビ、ベイビ」とチャーミングなシンガロングが広がっていった。
「『宇宙大決戦』ということで、1曲目とか聴いてもらったら分かると思うんですけど、宇宙っぽいですよね。それでさっき、浜野さんに、ねごとは宇宙っぽいから呼んでくれたんですかって訊いたら、ん!?って(笑)」。「でもねごとは、メンバー全員、在日ファンクが好きなので、呼んで頂いて本当に嬉しいです」。そんなやりとりの中で、沙田瑞紀(G./Cho.)は在日ファンク“京都”のギター・イントロを、さわりだけ軽やかに弾きこなしてフロアにはどよめきが走るのだった。エモーショナルな詩情の爆発と、巨大な高揚感に一瞬で到達する推進力とを行き来しながら、8/8リリース予定の両A面シングル『Lightdentity / Re:myend!』のナンバーも共に披露される。見た目の愛くるしさとはまったく裏腹に思えてしまうような、サウンドのスケール感と表現世界の奥深さが更に増しているねごとのステージであった。
歴史的に、とりわけブラック・ミュージック直系の、強力なライヴ・パフォーマンスを売り物にする音楽グループはどちらかというと関東よりも関西シーンで支持され易いという傾向があって、それは優れたライヴ・アクトにダイレクトに反応する客層のノリの違いとか、だからこそ優れたライヴ・アクトが育ち易いとか、もっと突っ込むと言葉のグルーヴのフィット感とか、いろいろな理由が考えられる。だから在日ファンクにも関西出身のメンバーがいるのかもしれないけれど、“環八ファンク”に触れたりすると、関東の生活圏にファンクをフィットさせようとするハマケンの意図が見えるようでおもしろい。そこにはハマケンなりの反骨精神というか「好きなんだからやってみる」というチャレンジ精神が横たわっている気がするのだ。
「いやー、良かった! あのプレッシャーがかかる終わり方ね! 〈在日ファンクに繋ぎたいと思います!(と人差し指を掲げながらねごと/蒼山幸子のモノマネをする)〉 おれら、ねごとと繋がってる」。くそ、ヘラヘラすんなハマケン。更にここから、ゴセッキーこと後関好宏(Sax.)、ジェントル久保田(Tb.)、村上基(Tp.)のホーン・セクションによる音色が妖艶なムードを描き出す“嘘”が披露される。この曲が収録されるミニ・アルバム『連絡』は10/3リリースで、仰木や村上も作曲に参加しているのだそうだ。
仰木:「リハのときから、ねごとが観てくれてたから、フルパワーだよね」
久保田:「口には出さなかったけど張り切ってるオッサンって、気持ち悪いよね」
浜野:「そこの柵のとこで足をブラブラさせながら観てて、かわいいの。だからこっちも観るかと思ったら、イカツイのなんの! 凄かったよねあの音! 中身はオッサンだよ」
『連絡』の告知をしながらメンバーの作曲のエピソードに触れ、「こんなのファンクじゃねえ!!」とキレる素振りを再現していたハマケン。そこに絶妙のタイミングで響き渡る、客席からの赤ちゃんの泣き声。「あ……ごめん……うん、でも、やってみたら凄いファンキーだったんだよね……」。場内爆笑である。赤ちゃん、超グッジョブ。このあとには、ライヴ初公開となる新曲“不思議なもんでさ”を披露する。これまた在日ファンクの世界を強く押し広げるようなナンバーだ。《今の日本の状況、かなりやばーい》とフレーズを詰め込む“はやりやまい”、更に“マルマルファンク”と、スキャットの応酬や熱いインプロヴィゼーションのリレーを交えながら上昇線を描き出してゆく。
仰木:「始まる前に、ハマケンが一人でねごとに挨拶に行ってて」
久保田:「抜け駆けだ」
仰木:「ハマケンの背中が見えたから、おれも行ったの」
久保田:「果敢だね」
仰木:「行ったところで挨拶が終わっちゃって、こいつはいいですみたいになっちゃって」
久保田:「そういうところあるよねハマケン。シュートばっかりでパスしない。ゴールすら見ないでシュートするからね」
アンコールではそんな糾弾も飛び出したところで、衣装替えしたハマケンが登場。チェック柄のスーツの襟元に真紅のド派手なフリルシャツが目立つ。なるほど、シュートばっかりだ。その赤、似合うねと久保田が切り出し、赤いトートバッグの話に繋げる物販紹介コーナーへ。そしてハマケンが語る。「今日はね、本当はカヴァーをしようと思ったの。おれが好きな“カロン”って曲が、確かに宇宙っぽくて、あの最初のキーボードをホーン隊にやってもらおうと思って。ファンキーでしょ? でも、やってみたらカッコ良くなかった(笑)。挫折した。まあ後で、カヴァーしてやるよみたいな態度も失礼だと思って、在日ファンクは在日ファンクで、正面からぶつかってやるよ」。そこで仰木、「でも、さっきリクエスト頂いたでしょ……ホンモノ、見せてやるよ」と涼しげで軽やかな“京都”のギター・カッティングが響かせながら歌い出す。おお、かっこいい。コール&レスポンスを巻き起こしながら盛大に沸き上がるフロアである。
どちらのバンドもオーディエンスの好反応を受けて素晴らしいパフォーマンスを見せる、一貫して暖かいヴァイブに包まれた対バンであった。両バンドは共に8/5(日)、ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2012に(在日ファンクはSEASIDE STAGEのトリ)出演する予定となっている。(小池宏和)
SET LIST
■ねごと
01: ループ
02: メルシールー
03: Tonight
04: Re:myend!
05: week…end
06: ビーサイド
07: drop
08: AO
09: サイダーの海
10: カロン
11: Lightdentity
12: sharp♯
■在日ファンク
01:イントロの才能
02: むくみ(短)→ダンボール肉まん
03: 環八ファンク
04: 嘘
05: 不思議なもんでさ(新曲)
06: はやりやまい
07: マルマルファンク
08: 肝心なもんか
09: 爆弾こわい
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