ザ・ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン VS ギターウルフ @ 下北沢シェルター

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ザ・ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン VS ギターウルフ @ 下北沢シェルター
ザ・ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン VS ギターウルフ @ 下北沢シェルター
90年代にそれぞれ独自にロックンロールを再定義し、海外でのジョイント・ツアーを初め10年以上に及ぶ盟友であるザ・ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンとギターウルフ。JSBXデビュー20周年を刻む新作『ミート・アンド・ボーン』のジャパン・ツアーというタイミングで、この両者の対バンが実現した。今回は東京と大阪で行われるJSBX公演の追加公演でありながら、それに先行してキャパ250ほどの東京・下北沢シェルターで繰り広げられるという、余りにも胸熱なロックンロールの一夜だ。僕がこの両者の共演を観るのは、実に15年ぶりくらいだろうか。

まずはギターウルフ。トオル(Dr.)とUG(Vo./Ba.)が大音量の音出しを一発かましたところにセイジ(Vo./G.)が姿を見せ、フロアからはウルフ・サインが繰り出される中、缶ビール1本を一息に流し込み“イナズマのメロディ”を放つ。ゴロゴロと身を投げ出すように8ビート・ロックンロールを転がし、さっそく背面ギターを披露してヴォルテージのピークに到達してしまうセイジさんである。「よく来てくれたぜ、シェルター! ロックンロールベイベー!!」とシャウトするさまもずいぶんご機嫌に見える。UGは“ドーベルマンナイト”でそのベース音に負けず劣らずの野太いヴォーカルを届け、“オールナイトでぶっとばせ!!”やカウントダウンの声が焦燥感にまみれる“ワイルドゼロ”といった鉄板ナンバーも畳み掛けられていった。

ステージ自体は40分ほどのごく短いものだったけれど、上半身裸のトオルさんが踊るように太鼓をしばきまくるクライマックスで、今回もセイジさんがオーディエンスに魂のギター・プレイを預けるお馴染みの「儀式」をきっちり敢行する。念を込めたピックを手渡し、マイク・スタンドごとダイヴしたセイジさんがステージに戻り、何度か男性オーディエンスのギター・プレイを制止したあとに訪れる爆発的な開放感がヤバい。儀式はマンネリになってしまってはダメだ。ロックンロールはいつでもスリルと興奮に満ちていなければならない。今回の対バンでも、見事にそれを示してくれたギターウルフであった。

さて、後攻はJSBX。歓声を浴びて姿を見せるラッセル(Dr.)、ジュダ(G.)、そしてジョン(Vo./G.)の3人である。昨年のサマソニで観たときよりも、少し見た目が若返っている気がするのだがどうだろう。まさにJSBXの登場を告げるかのようなオープニングは、『ミート・アンド・ボーン』が活動休止期間を経て初の、8年ぶりのアルバムだったこともあって余計にJSBXとの再会の興奮を煽り立ててくれる。ジョンはさっそくマイクを口に銜え込み、ブルースをこねくり回していた。

「サンキュー、レディース・アンド・ジェントルメン!、ジス・イズ・ブルゥ〜ス・エクスプロージョン〜ヌ。ギターウルフはどうだった?」と告げながら自ら拍手をリードするジョン。そして改めて『ミート・アンド・ボーン』のリリースに際しての喜びと感謝の言葉を投げ掛け、“Black Mold”で最新型JSBX流ロックンロールの興奮を呼び込んでくれる。テクニカルなギター・フレーズを繰り出してゆくジュダもこの辺りから本領発揮だ。新作曲の合間には、なんとビースティ・ボーイズの“She’s On It”のカヴァーも披露される。この不意打ちにはびっくりした。5月に亡くなったMCAことアダム・ヤウクへの、ニューヨーカーとしてのトリビュートの意味合いもあるだろう。ラッセルは、自身の名義やバター08として、ビースティーズが運営していたレーベル=グランド・ロイヤルに作品を残している。

それにしても、この3人の、いとも容易くロックンロールの最先端をゆくようなサウンドとアンサンブルの鮮やかさはどうだろう。その点では、僕がこれまでに観たJSBXの中でもぶっちぎりであった。どう表現すれば良いだろうか、「ザ・ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンをやるのが上手い」という感じなのだ。当の本人たちなのだから当たり前だろう、と思われるかも知れないが、そうではない。ブルースの根源的な感情の爆発力をヒントに、時代性と照らし合わせながら現代的なロックンロールの熱狂を掴み取ろうとしてきたJSBX本来のアプローチは、一時は手詰まりになっていた。だから活動を休止したのだと思う。メンバーそれぞれの活動の中でそれぞれの経験値の蓄積があり、そして本格的に再始動したわけだが、昨年のサマソニでもここまで鮮やかなJSBXではなかった。やはり『ミート・アンド・ボーン』を形にしたことの影響が大きいということなのだろうか。とにかく、凄い。

思い切り叩きまくるというよりも、ソリッドな8ビートからファンキーに踊らせる16ビートまでの一発一発を狙撃手のように正確に打ち込んで来るラッセル。明らかに上機嫌で、雄弁なギターを弾きまくるジュダ。そして深く腰を沈めるお得意のクールなポーズを見せ、テルミンを操り、ハンド・クラップを誘っては何度も感謝の言葉を投げ掛けるジョン。途中、ジョンが機材の不調を気にかける一幕もあったけれど、後半は“Sweat”や“Blues X Man”、“Soul Typecast”といった曲群をほとんどノンストップで駆け抜け、本編ラストはジュダによる泣きのギター・フレーズでドラマティックにフィニッシュした。アンコールではなんと、ジョンがセイジさんの名前を何度もコールして呼び込み、トリプル・ギター/ベースレス編成の“Bellbottoms”だ。ただでさえロックンロールを特別なものとして描き続けるJSBXとギターウルフの、この上ない共演であった。

JSBXは翌11/18に東京・恵比寿リキッドルーム(サポート・アクトは女王蜂)で、11/19には大阪MUSE(サポート・アクトはKING BROTHERS)で、それぞれ公演を行う。また、2013年1月23日には、今回の対バンを収めた『ザ・ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン VS ギターウルフ』もリリースされる予定なので、ぜひお楽しみに。(小池宏和)
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