桃野「『新造ライヴレーションズ・ツアー』ファイナルでございます! そして、5人でのラスト・ライブ! 『新造ライヴレーションズ』はここ新代田FEVERでレコーディングしたアルバムであり、それを引っ提げて帰ってきました!」
ヒダカ「今日も録るんでしょ?」
桃野「そんな感じがしてならないんだよねえ。前の方にもカメラあるし」
ヒダカ「や、これはあれでしょ、離婚裁判になった時の証拠として……」
桃野「みなさんも証言者としてね、できるだけMONOBRIGHTに肩入れしてね!(笑)」
……と、メンバー自ら「離婚」ネタMCで序盤からどかんどかんとフロアを沸かせまくるMONOBRIGHT。ex.BEAT CRUSADERS・ヒダカトオルとの「結婚(年の差婚?)」によってMONOBRIGHT が5人編成となったのが2010年11月。そして、「2012年内のツアーをもってヒダカ脱退」とアナウンスされたのが今年の10月。この日はまさにその2年間の「結婚生活」の最終日。この前日にも同じくここ新代田FEVERで、ヒダカ作曲のMONOBRIGHTナンバーを中心としたスペシャル企画「ヒダカトオルコレクション」が行われたばかりだが、この日のアクトはまさに、ここFEVERでオーディエンスとともにライブ・レコーディングされた最新アルバム『新造ライヴレーションズ』同様、「5人のMONOBRIGHT」の到達点をステージとフロアが一丸となって謳歌するような底抜けにエネルギッシュなものだったし、そこには「その先」のロックとポップへ向けてのさらなる冒険心もあふれていた。
“E.Z.O.”“感情GUN,薄情DIE”と冒頭から『新造ライヴレーションズ』の楽曲を畳み掛け、さらに“踊る脳”へ――という序盤の流れだけでもオーディエンスの歓喜瞬間沸騰ものの熱量を生み出していく5人。格段に図太く鍛え上がった桃野陽介/松下省伍/出口博之/瀧谷翼のアンサンブルとヒダカの鍵盤使いの衝突が生み出す途方もないポップ感、そして“踊る脳”での「ヒダカ&松下の爆裂ギター・サウンドでダンスしまくりのフロアにハンドマイクで挑みかかる桃野」というフォーメーションが生み出す爆発力を目の当たりにするだけでも、「この5人だからこそ表現できるもの」の大きさがびりびりと伝わってくる。が、それだけでなく、特に『ACME』『新造ライヴレーションズ』期の楽曲のリズムやアレンジの背景にロックンロール/パンクの系譜を濃密に感じさせるあたりからは、先輩・ヒダカトオルのDNAがこの2年間でしっかりと若い4人に引き継がれていることがわかる。
強靭なビートの推進力が心と身体をがっちり掴んでいく“SHOUT TO THE TOP”。オリエンタル・スカ・パンクとでも言うべき“アブラカダブラ”のミステリアスな高揚感。最新シングル曲“ムーンウォーク”のポップ炸裂サウンドにさらなる爽快さを与えるバンドのドライブ感……その1音1音が、どこまでもパワフルに、晴れやかに響く。そしてMCでの、ヒダカをして「桃氏より面白いこと言っちゃダメだよ!」「あたしと離婚してもお客さんがいじってくれるから大丈夫!」と言わしめるオーディエンスのボケ/ツッコミ/無茶振り何でもありの歓声が、そんな会場の温度をさらに上げていく。
後半の“ウォークウォークウォーク”では、ライブ・レコーディングにもゲスト・ヴォーカルとして参加したbloodthirsty butchers・田渕ひさ子が、さらに続く“ソシアル”では同じくブッ チャーズから吉村英樹が登場。「ブッチャーズに憧れて上京したと言っても過言ではない」(桃野)というMONOBRIGHTのステージで、ブッチャーズ吉村のギター・サウンドと田渕のコーラスが鳴り響くだけでなく、「近所の酔いどれオヤジ」から「秀子ママ」まで多彩なキャラの吉村MCが展開される――という夢の共演が実現できたのも、ビークル時代からブッチャーズにリスペクトを表明し共演を果たしていたヒダカトオルという名コーディネーターあればこそだろう。
ヒダカ「解散ですか、ついに!」
桃野「違いますよ! 離婚ですよ!」
出口「明日からは、MONOBRIGHTは4人で、ヒダカトオルはヒダカトオルで、別々の音楽の道を……」
ヒダカ「普通のサラリーマンに戻ります。普通のオジサンに(笑)」
終始全員サングラス姿だったのでその表情は完全には見えなかったのだが、「協議離婚」をクールに受け止めてベスト・パフォーマンスに徹している様子のヒダカに対し、桃野はといえば、ライブが後半に差し掛かるにつれて心に降り掛かる一抹の寂しさを渾身の絶唱で振り払おうとしているようにも見えた。そこへすかさずフロアから「泣け!」コールが沸き上がって照れ笑いする桃野。だが、終盤の“ハートビート”“この人、大丈夫ですか”“ACTION!”3連打の眩しいくらいのダイナミズムが、もはや感傷など入り込む隙間のない祝祭空間を作り出していた。そして、「我々MONOBRIGHTとヒダカトオルは、いつまでも音楽ができるように、そういう決断のもとに離婚しました! これから先も、ずっと一緒に、音楽を作っていこう!」とオーディエンスに呼びかけて叩きつけた“旅立ちと少年3”の揺るぎないヴォーカリゼーションと桃野/松下/ヒダカのトリプル・ギターの轟音が、本編を鮮烈に締め括った。
アンコールでは、ヒダカの歌を桃野がアコギで(ステージ袖から吉村が差し入れた焼酎らしき酒とともに)彩る“ゆあそう・びゅーちふる”をしっとりと披露、さらにそこから“アンチヴァイオレントセクシー”“COME TOGETHER”へ流れ 込んでクラップとシンガロングの嵐を巻き起こして大団円!……と思いきや、割れんばかりの手拍子に応えて再びステージに登場した5人。「ヒダカトオルと離婚して、次に結婚するのは、お前らだああああっ!」と声の限りに絶叫し、「結婚生活」最後の曲“DANCING BABE”でハンドマイクのままフロアに飛び込んでもみくちゃになりなが ら、情熱の最後の1滴まで燃え上がらせてみせた桃野。すべての音が止み、ヒダカを中心に手を取り合って一礼する5人に、いつまでも惜しみない拍手と歓声が送られた。1月30日にはMONOBRIGHT初のベスト・アルバム(新曲も収録)をリリース、さらに12/28の『COUNTDOWN JAPAN 12/13』など年末ライブだけでなく、3/3:下北沢CLUB QUE、4/3:渋谷クラブクアトロでのライブも決定。この2年間を糧に、再び4人になったMONOBRIGHTはどんな明日を描くのか? 今から楽しみで仕方がない。(高橋智樹)
[SET LIST]
01.E.Z.O.
02.感情GUN,薄情DIE
03.踊る脳
04.SHOUT TO THE TOP
05.アブラカダブラ
06.JOY JOYエクスペリエンス
07.ムーンウォーク
08.LET IT RIDE
09.アナタMAGIC
10.ウォークウォークウォーク
11.ソシアル
12.ココロニー
13.ハートビート
14.この人、大丈夫ですか
15.ACTION!
16.旅立ちと少年3
Encore1
17.ゆあそう・びゅーちふる
18.アンチヴァイオレントセクシー
19.COME TOGETHER
Encore2
20.DANCING BABE