自己最長となる全16公演のツアー中、雨の日が2日、曇りの日が5日、晴れの日が9日と、晴れ男と呼ぶにはいささか微妙な配分ながら(笑)大方でお天道様を味方につけ、この日のツアーファイナル@中野サンプラザは見事なまでの快晴! 場内は冒頭から陽性ヴァイヴに包まれ、ツアータイトルに掲げた「高橋優 秋の全国ツアー ~高橋は雨男?晴れ男?はっきりさせようじゃないか2012」という問いにひとまず決着を着けたといって異論はないのではないでしょうか? 実際、ライブを見終えて会場を後にするころには、すっきりと晴れわたるような心地だったし、何しろ爽快なパフォーマンスに心躍るような2時間半だった。
特にこの日はツアーファイナルとあって、「一生歌えなくなってもいいくらいの覚悟で、1曲1曲を精いっぱい歌わせてもらいます!!」と本人も気合い十分。まさに“絶頂は今”というタイトル通りのテンションで熱唱し、5人のバックバンド(名付けて「高橋は雨男?晴れ男?はっきりさせ隊」!)と共にエレキギターを掻き毟り、<分かち合おうこのときを! 受け入れ合おう何もかも!!>と、いきなり熱量マックスの沸騰状態に持ち込んでみせる。素早くアコースティックギターに持ち替え、続く“雑踏の片隅で”では、ブルースハープも伸びやかにプレイ。さらに“旅路の途中”では、アップビートな演奏に合わせて誰もが跳び上がってハンドクラップ!と、一体感は右肩上がりに高まっていく。それがひとつのピークに達したのが、7曲目の代表曲“現実という名の怪物と戦う者たち”。作者自身の身体能力に挑むような、キーとテンションが一段アップする終盤では、必死で曲に食らいついて叫ぶように歌う姿が鬼気迫るほどで、その迫真のアクトに場内総立ちとなって沸き立ったのだった。
中盤ではオーディエンスに着席を促してじっくりと楽曲世界に耽溺させたり、MCではツアー中に各地で手に入れた戦利品でひとしきり笑わせたり(くまもんや金箔メガネ、そして「ONE PIECE」のロロノア・ゾロのフィギュアなど。くまもんは熊本のUFOキャッチャーでゲットしたそうで、意地で4,000円を投入・笑)、パフォーマンスの説得力はもちろんだが、そんなメリハリと緩急に富んだステージ運びからも、前回の初ホールツアーを経てずいぶんと成長を果たしたことが伝わってきた。
“誰が為に鐘は鳴る”“少年であれ”“福笑い”といった既存曲はもちろん、来る12月26日(高橋優29才の誕生日!)にリリースされる最新作『僕らの平成ロックンロール②』からも、“ボーリング”“昨日の涙と、今日のハミング”“微笑みのリズム”“夜明けを待っている”と惜しみなく披露。その歌唱はリスナーの脳裏に活字を刻みつけていくような明瞭なメッセージを放つゆえ、まだ馴染みのない楽曲にもたちまち惹き込まれていく。中でも「普段は目を向けないような気持ちに目を向けたら、どうなるか……。それを追求していったら、一曲できちゃった」と紹介された“ボーリング”での、<あぁ面倒臭ぇ!>と負の感情をスパークさせる絶唱は圧巻だったし、その思考とクリエイティビティがますます振り切れていることを感じさせた。
後半は、再び誰もが立ち上がってアゲアゲモードでスパート! “蓋”では歌詞にあわせてスターバックスの店員(に扮したスタッフ)が登場し、グランデのカップを受け取った高橋がそれをポンポン客席に投げ入れ、“想いよ、届け”ではオーディエンスがタオルをぐるぐる振り回し、高橋もステージ狭しと走り回って一路絶頂へ! エンターテイナーとしての気概とサービス精神を全開にすると共に、「2012年も一年間ありがとうございました! 見たこと、聴いたこと、感じたこと、ムカついたこと、楽しかったこと……自分の全部を届けられることを楽しみにしています。2013年も、高橋優をよろしくお願いします!!」と、ひと足早い新年の所信表明も。この所信表明しかり、幾度もオーディエンスに感謝を伝えていたのが印象的で、アンコールでは「僕がここにいるのは、僕を囲んでいる全ての人たちのおかげです!」とまで語っていたほど。どこに出しても恥ずかしくないような優等生的な振る舞いだが、それがまったくスノッブに響かないのは、高橋の根っこにある、生まれ持った健全さによるものだろう。そう、矛盾だらけで、ある部分では不健全でさえあるこの世界に、まっとうな健全性で対抗するのが高橋優の闘い方なのだ。何よりも不安が先に立つ今の時代にこそ実効性を発揮しうる彼の闘争を、この先も楽しみながら見届けていきたい。(奥村明裕)
高橋優 @ 中野サンプラザ
2012.12.12