電気グルーヴ@Zepp DiverCity Tokyo

とにかくもう、ニュー・アルバム『人間と動物』の曲をやってほしい。全曲やってほしい。1曲残らずやってほしい。なんなら、『人間と動物』の曲と、それに先んじて出たシングル何枚かのカップリング曲だけでライヴが終わったっていい。もし過去の代表曲たちとか、一切やらなくても、何の文句もありません。

と、ライヴの数週間前からひたすら願い続け(でも先に知っちゃうとつまんないのでネットとかtwitterとかの情報は極力排除し)、当日もその願いで頭の中をいっぱいにしながら渋谷から埼京線→りんかい線に乗って会場のZepp DiverCityに向かった。というのは僕だけではなかったようで、東京テレポート駅で電車を下りて会場まで歩いている途中にばったり出くわした大根仁監督も、同じようなことをおっしゃってました。「俺、プレツアーのリキッドも観たんだけど、新しいアルバムの曲、すごい。過去のあの名曲たちすら、かすむくらいの勢いだった」とまで、口走っておられました。

要は『人間と動物』があまりにもすばらしい、という話なんだけど、これ、電気くらい長いキャリアのアーティストとしては、通常あり得ないことだと思う。メジャー・デビューから22年、オリジナル・アルバムは13枚目、ヒット曲や有名曲もいっぱいある。なのに、いちばん新しいのがいちばん聴きたい。ローリング・ストーンズでもサザンオールスターズでもいいが、置き換えてみてほしい。ストーンズはもうきっぱりと「新しい曲とかやんなくていいっす!」だし、(活動してないけど)サザンは「いや、そりゃ新しいのも聴きたいけど、“シンドバッド”とかもやってほしいっす!」だ。これ、昔、桑田さんにインタヴューした時、ご本人もおっしゃってました。「俺が客でもそうですもん。新しいアルバムの曲はいいから、昔の曲やってくれよおって思うもん」と。

『人間と動物』の何がそんなにすばらしいのかについて、具体的に言及しはじめると、ライヴレポではなくディスクレビューになってしまうのでやめておくが、とにかくあれは、古くからの電気のファンにとって、もう最大限にうれしい、そしておそらくここで初めて電気に触れるという人にとってもすごくうれしいはずの、今、これ以上はないであろう作品だ、ということです。
「ベタ禁止を解除した」というようなことを、本人たちはジャパンなどのインタヴューで言っていた。確かにそういうアルバムでもあるけど、単に歌物で聴きやすいからすばらしい、と言っているんではない。『KARATEKA』だって『オレンジ』だって歌ものだったし。いや、どっちも大好きだけど、その比ではない、このアルバムは。
なんでこれまでこういうものを作らなかったのかという理由も、でもなんで今ならこういうものを作れたのかという理由も、なんかもう、ものすごくよくわかる。よくわかるのに、「期待どおり」でも「予想範囲」でもなく、そのはるか上をビューンと飛んでいくような曲しか入っていない。
そもそも電気は、天才トラックメーカーであると同時に天才日本語使いであり天才メロディメーカーでもあった。あったが、それらのすべてを一斉に出すことはしなかった。いや、出した時もあったけど、こっちを100出してるけどこっちは60とか、こっちは150までイッてるけどこっちはあえてゼロとか、そういう出し方をしていた、かつては。それが『J-POP』くらいから、「普通に全部出せばいいんじゃない?」という感じになってきて、それが極まったのがこの『人間と動物』だ、という考え方はどうでしょう。
違う気がする。『J-POP』『YELLOW』『20』って、3部作っぽい感じだったし。その3部作でいったん完結して、その次の一手に向かったのが『人間と動物』だ、というのが、正しい捉え方である気もするし。まあ、とにかく、なんにせよ、すばらしいのです。

で。この3月13日水曜日、Zepp DiverCity2デイズの2日目は、ツアーファイナルではあるけど、このツアー、本編とは別に「プレツアーパンダ」(LIQUIDROOM ebisu)、「でえれえスペシャル」(岡山CRAZYMAMA KINGDOM)、「しぞーかスペシャル」(静岡SOUND SHOWER ark)の3本も行われており、その3本目の静岡が17日なので、まだネタバレNGなのです。なので、セットリストはまだ書けないんだけど(その静岡が終わったら文末に貼ります)、結論から言うと、『人間と動物』の曲、9曲中8曲やってくれた。あと、最近のシングルのカップリング曲とかもやってくれた。最近のライヴではおなじみの代表曲も、意外な曲も、最近の曲も昔の曲も含めてもう完璧な選曲&曲順である上に、その中でもっとも重要なポジションを占めているのが『人間と動物』の曲たちである、というところが、やっぱり、ものすごくうれしいライヴでした。
MCも、ここ数年の傾向として長めは長めだったけど、客がくたびれるまでしゃべり倒して、ステージが終わっても誰もアンコールの手拍子をしない状態まで追い込んだような、かつてのライヴ(この時 http://ro69.jp/live/detail/22632)のような感じではなかったし。出音も映像も例によってすばらしい(欲を言うと、いつもよりもちょっとだけ音量が小さかった気がしたが)。とにかくもう、文句なしでした。
電気が活動してるっていいなあ。去年、ライヴを観るたびにそう思ったが、今日は「電気が活動してる、しかも新しいアルバムを出してそのツアーをやってるって、いいなあ」と、つくづく思った。という意味でも、これ以上はない至福の時でした。

あと、照明やレーザーや登場のしかたなどの演出とか、衣裳とか、瀧の使った小道具とかに関しても、書きたいこといっぱいあるけど、書いてしまうとネタバレだ。じゃあ、MCに関してだけ、ちょっと書きます。
札幌だったか、「客が3人だった」という嘘をtwitterで流せ、と、ふたりがフロアに指令を出したところ、何人ものお客さんがそれに従い、翌日結構信じてる奴がいっぱいいて大笑いだったので、昨日のZepp DiverCity1日目でも、「客が3人だった」「しかもそのうちのひとりは瀧の奥さんだった」とつぶやいてくれ、と言ったところ、やはりみんなつぶやき、そしてやはり一部で真に受けられ、卓球曰く、さっき見たら、LIVEDOORニュースにそれがアップされていたと( http://news.livedoor.com/article/detail/7494759/ )。
フロア、爆笑。で、今日はどんな嘘をツイートすればいいか、さんざん悩んだ挙句「瀧が2曲目でステージから落ちて死んだ。血まみれだった」に決定しました。翌日、twitterを見たら、これでも中には本気にしてる人もいたみたいで、「もし本当だったら大変だ」みたいに心配している人もいて、驚きました。悪趣味っちゃあ悪趣味だけど、電気に「悪趣味だ」と言うのは、安田大サーカスのHIROに「デブだ」と言うくらいセンスのないことだと思います。
ちなみに、電気の指示に従ったみなさんのツイートを見ると、嘘とわかるように書く人もいれば、「これ、知らなかったら俺でも信じるな」ってくらいリアルに書いている人もいて、さまざまでおもしろいです。ぜひご覧ください。

あとひとつだけ。「昇龍拳!」や「崎陽軒!」などの雄叫びに混じって、たまに卓球が叫ぶ「ビニール本!」というフレーズ。前からよく言ってるし、この日のライヴでも2回(本編で1回、アンコールで1回)出ましたが、あれ、元ネタはツービート全盛期の頃の、ビートたけしのギャグです。当時ツービート名義で出したシングル『俺は絶対テクニシャン』に入ってます。以上、ご存じない方のために、たけしチルドレンとして、ご報告しておきます。(兵庫慎司)

セットリスト

1.Intro
2.The Big Shirts
3.Missing Beatz
4.SHAME
5.SHAMEFUL 
6.ZooDesire
7.モノノケダンス
8.SlowMotion
9.アルペジ夫とオシ礼太
10.DISCO UNION
11.Hi-score
12.モンキーに警告
13.B.B.E(Bull Beam Express)
14.P
15.キラーポマト
16.Prof.Radio
17.Oyster (私は牡蠣になりたい)
18.UpsideDown
19.The Words
20.FLASHBACK DISCO
21.Shangri-La
22.少年ヤング
23.N.O.
24.あすなろサンシャイン
25.レアクティオーン

アンコール 1
26.電気ビリビリ

アンコール 2
27.カフェ・ド・鬼
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