『9mm Parabellum Bullet Tour 桜前線ブッタ斬り2013』
のんびり優雅に花見を楽しむというよりも、一陣の風の中で桜吹雪に包まれるような、刹那的で、それゆえに鮮烈な感動がもたらされるステージ。3/19の新潟LOTSで幕を開け、全国9会場13公演を駆け抜ける春のツアー。その6公演目にあたる、Zepp DiverCity初日である。菅原卓郎(Vo./G.)は、「花見、してないなあ、俺。『桜前線ブッタ斬り』と言っても、桜が咲くのを止めたいわけじゃないってことですよ」と説明していたけれど、9mm Parabellum Bulletのライヴ・パフォーマンスにはぴったりとフィットした公演タイトルではないだろうか。
バンド結成「9」周年ということで、これまでステージの背後にどんと翼を広げていた双頭/二丁拳銃のトリのバックドロップも、一挙に九つ頭の、もはやトリというかなんというか、怪物的な何かにグレードアップ(オフィシャルHPのトップにいます)して繰り広げられるステージ。序盤から“Psychopolis”〜“Discommunication”〜“Lying Dying Message”〜“R.I.N.O.”というキャリアを見渡すキラー・チューンの連打で、いきなりハイライト級の凄まじい轟音にオーディエンスが波打つ。クリアで鮮やかな旋律にまた旋律を重ねる滝善充(G.)と、ステージの淵にまで身を乗り出して大股を広げながらハンド・クラップを誘う中村和彦(Ba.)。骨の随まで感電しそうなサウンドとスピードに比例して、両翼の2人のアクションが激しくなってゆくが、広がりのあるハーモニー・パートもぶれずに歌われてゆく。ステージ上のこの4人は、常人と異なるスピード感の中を生きているのではないかとさえ思う。
「今日はもう、湿気がすごくてね。頭がでけえ。仕方ねえ。同じ気持ちのボーイズ&ガールズ、レディース&ジェントルメンがね、足元の悪い中、お越し下さいましてありがとうございます!」と卓郎。そしてここからは、新曲群を披露してゆく時間帯に突入していった。まずは、「インスト、インストゥルメンタルの曲なんで、滝くんのギターがヴォーカルです」と紹介された“Wild West Mustang”だ。まさにタイトルが意味するような、西部開拓時代の荒野を荒馬が駆けてゆく印象の、力強く情熱的な爆走チューンになっている。「情熱的」の部分を担うのは滝のギターのメロディである。そして、美しいイントロから転がり出す“黒い森の旅人”は、ひんやりとした濃い空気に包まれながら、聴く者に休息を促す歌詞が伝うという1曲。これらの新曲群はどちらもアップリフティングな上に、情景喚起力がすこぶる高い。この後に披露された“Wanderland”までひっくるめて、バンドとオーディエンスが人生の旅路をずっと共にしているような、物語が繋がっているような、そんな感覚がもたらされる時間帯であった。
“Vampiregirl”の後には、滝と卓郎が向き合っておもむろにthe telephonesの“Monkey Discooooooo”のフレーズを弾き始める。「さっき、楽屋にテレフォンズのメンバーが来てくれたんだよね。フジテレビで撮影してるんだっつって。新しいアルバム聴かせてもらったんだけど、すげえ良かった。買ってください」と、滝&和彦がテレフォンズ曲でBGMを付けている中、エールを送る卓郎である。自分たちのニュー・リリース話の前にテレフォンズの宣伝をしてしまった形だが、「5月にシングルが出ます。『Answer And Answer』。Q&AじゃなくてA&Aね。セブンアンドアイ。Love & DISCO(笑)。ジョンソン&ジョンソンみたいな感じで呼んでください」と、いきあたりばったりな感じで喋ってる割に上手いことオチもつけながら、そのニュー・シングル曲“Answer And Answer”へと向かっていった。いざ演奏となれば驚異的な瞬発力と集中力を発揮するわけで、ストイックでシリアスなそのメッセージ・ソングをきっちり届けてくる。かみじょうちひろ(Dr.)のタイコの煽りっぷりが凄まじい。
ステージ後半の、和彦のベースが激しくのたうちまわる“次の駅まで”や、透明感溢れるギター・サウンドの絡み合いが美しい“Monday”あたりまでは、ずっとタテノリで弾け飛ぶナンバーが連発されていたわけだが、かみじょうは一貫して上体の重心をブレさせることなく、ほとんど頭も振らず、パワフルなプレイを続けていた。その姿はまるでクラシック畑のピアニストのようで美しい。猛スピードのプレイの合間にスティックをくるくると回してみせる姿ももちろん楽しいけれど、しゃにむにひた走るような今回のセット・リストに安定感をもたらしていたかみじょうは、改めて素晴らしいドラマーだと感じられた。
桜前線の北上に引っ掛けてオーディエンスに出身地を尋ねる卓郎は、沖縄県出身のオーディエンスを確認して「でも待って。出身地だからね。今日、沖縄から来たって人は? それはさすがにいないか。でもみんな、俺たちに会うために上京してくれてありがとう(笑)。故郷を思い浮かべながら聴いてください(笑)。この冷たい東京でね、どうなるか分からないけど、撥ね除けて行こうじゃないか!」と“Scream For The Future”に向かっていく。そこから“ハートに火をつけて”でがっつりと歌を預け、和彦の渾身のスクリームがぶち撒けられる“sector”、そして“新しい光”のフィナーレへと連なってゆく。ありとあらゆる感情を抱え込んだ上での、狂騒の祭宴だった。「楽しい」というシンプルな結論に人々をきっちりと導く、そのためにバンドの、蓄積された技術とアイデアが機能していた。
今回のツアーでは、もちろん新曲群には注目だけれども、「新曲のお披露目会」ではない。卓郎曰く「まんべんなく、節操無くやっているわけだ」という選曲・曲順も一期一会。そのときのステージで何を受け止められるかは、参加した人次第である。翌4/3のZepp DiverCity2日目以降も、「9」周年の春『桜前線ブッタ斬り2013』は、札幌(4/7・8)、仙台(4/11・12)、名古屋(4/16)、大阪(4/17)と、まだまだ続いていく。(小池宏和)
01. Psychopolis
02. Discommunication
03. Lying Dying Message
04. R.I.N.O.
05. Wild West Mustang
06. 黒い森の旅人
07. Wanderland
08. Vampiregirl
09. Answer And Answer
10. Heat-Island
11. エレヴェーターに乗って
12. 悪いクスリ
13. 次の駅まで
14. Monday
15. The World
16. Scream For The Future
17. ハートに火をつけて
18. Cold Edge
19. sector
20. 新しい光