all pics by 古溪一道ステージに現れるなり津野米咲(G)が告げた「みんな、ただいま!」の挨拶に、フロアから万感の拍手と歓声が送られる。米咲の体調不良により昨年10月から活動を休止していた赤い公園。その活動再開一発目のイベントとなる「赤い公園大復活祭“今更帰ってきた‼ 赤い公園!! ~タブーを犯したオンナたち~”」の初日=渋谷クラブクアトロ公演は、ここから再びア精力的な活動に打って出んとする4人の船出を盛大に祝うような、祝祭ムードに溢れた時間だった。と同時に、音楽性の高さを兼ね備えながら、自由で、生々しいエネルギーに溢れた赤い公園の音楽の凄みを改めて痛感させられる時間でもあった。
オープニングから“のぞき穴”“はてな”“ナンバーシックス”を叩きつけ、場内のボルテージを一気に上げた彼女たち。“のぞき穴”のアヴァンギャルドで赤黒い音塊の威力はハンパないが、ポコポコとしたパーカッションの音が冴える“ナンバーシックス”の愛らしいサウンドも心地いい。何より凄いのは、まるで両極端と言えるそれらの曲のどちらでも、フロアに巨大なハイジャンプを巻き起こしていたこと。ロック、ハードコア、ジャズ、昭和歌謡など多彩な要素を取り入れながら、決して頭でっかちにならずに身体が自然と反応してしまうようなポップでダンサブルな音楽に昇華してしまう。そんな、赤い公園の摩訶不思議な音楽性を象徴するような好演である。その後も“世紀末”“血の巡り”“TOKYO HARBOR”“よなよな”と連打して、いびつで、キュートで、切なくもある赤い公園ワールドを1曲ごとに押し広げていくのであった。
「皆さんのおかげで今日を迎えることができました。しかもソールドアウトで嬉しいです! 本当にありがとうございます‼ 今日からまた活動再開していくので宜しくお願いします」という佐藤千明(Vo)のMCから「ここからは暗い曲やります」とスタートしたのは“塊”。真っ赤なライトに照らされて、何かにとり憑かれたように絶唱する千明の姿から目が離せなくなる。さらに圧巻だったのが“透明”“副流煙”の⒉連打。静寂と爆発が交互に訪れ、テンポチェンジを繰り返しながら徐々に熱量を増していくサウンドは、気分の乱高下が激しい女子の支離滅裂な心情をそのまま描き出しているよう。分かりやすさやキャッチーさとはかけ離れているけれど、それ故に生々しくて、観ているこちらの魂がグワっと持っていかれてしまうような得体の知れないエネルギーが、それらの曲には宿っていた。
さらに“ランドリー”“くい”“何を言う”と披露してステージを去る4人。開演からまだ1時間弱しか経っておらず、「もう終わり⁉」感が漂うフロアからアンコールを求める拍手が沸き起こる。……と、ステージ前方に降りた白幕に映し出されたのは、「赤い公園の復活を祝うメッセージがゲストから届いています」との文字。実はこの日のライヴは2部構成になっていて、その中休みとなるこの時間には、the★米騒動、The SALOVERS、ハナエ、ピエール中野(凛として時雨)らのコメント映像が流された。しまいには千明の祖母(!)からのコメント映像も飛び出しフロアを笑いで包んだところで、新曲“今更”のPV映像が。白幕が切って落とされステージに舞い戻った4人の姿が露わになってスタートした第2部は、まさに赤い公園の復活を祝うにふさわしい祝祭ムード溢れる時間となった。
「いやー、8か月ぶりですね。なんだけど、実は謝らなきゃいけないことがあって」と、第2部の中盤で唐突に口にする米咲。「去年シングルを3つ出すと言ってたんだけど、『のぞき穴』を出した後に休止したため3つ出せなくなっちゃって。その代わりと言ってはなんですが、7月3日に両A面シングル出します!」という嬉しい告知が行われる。その内容はというと、“今更”“交信”の2曲の新曲に加え、小田和正の“さよならは言わない”のカヴァーが収録されるとのこと。さらにフルアルバムを作成中であることも告げられ、ここからは新曲のお披露目セクションとなる。赤い公園史上最高にスローで肩の力が抜ける曲と言ってもいい“つぶ”。千明の透明な歌声が心地よく響きわたった“さよならは言わない”、そしてフロアの盛り上がりに欠けるとの理由から2回連続で演奏されたアップ・チューン“カウンター”で強引にサークルモッシュを引き起こして大団円。本編ラストは活動休止前からライヴお決まりのラスト・チューンである“ふやける”をダイナミックに叩きつけ、この日最大の凶暴なノイズを場内に満たして90分強のアクトは幕を閉じた。
アンコールでは、「もう今更やる曲ないよねー」という前振りから“今更”をプレイ。リリース前であるものの、すでにライヴで何度か披露されている楽曲だけにオーディエンスとの一体感はばっちり。ザクザクと突き進むビートに乗って、フロアにハイジャンプとスウェイの波が沸き起こる。何より、楽しそうにプレイする米咲の姿に胸が熱くなった、痛快で感動的な幕切れだった。(齋藤美穂)
セットリスト
1部
1. のぞき穴
2. はてな
3. ナンバーシックス
4. 世紀末
5. 血の巡り
6. TOKYO HARBOR
7. よなよな
8. 塊
9. ずっと
10. 透明
11. 副流煙
12. 娘
13. ランドリー
14. くい
15. 何を言う
2部
16. 公園
17. 急げ
18. もんだな
19. つぶ
20. さよならは言わない
21. カウンター
22. ふやける
アンコール
23. 今更