BRAHMAN @ 幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール

BRAHMAN @ 幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール - all pics by Tsukasa Miyoshi(Showcase Management)※写真は上からステージ全景を撮影したもの。all pics by Tsukasa Miyoshi(Showcase Management)※写真は上からステージ全景を撮影したもの。
「対バンもいねえ! 袖から支える仲間もいねえ! 疲れた顔を隠す逃げ場所もねえ! 自分対己、勝つのは、どっち……『Tour 相克 FINAL』、幕張メッセ。超克するのは俺たち、BRAHMANはじめます!」というTOSHI-LOWの言葉に、ステージを四方八方ぐるりと取り囲むオーディエンスから轟々と沸き上がる雄叫び! 最新アルバム『超克』を引っ提げて、3月12日・SHIBUYA-AX公演を皮切りに日本中を駆け巡ってきたBRAHMANの全国ツアー『Tour 相克』のファイナルにして、約1年半ぶりとなる幕張メッセ公演=『Tour 相克 FINAL 「超克」 the OCTAGON』は、観る者すべての心と身体を震わせるどこまでも壮絶な装置であると同時に、「今」と、現実と、そして己と向き合い闘うことの大切さを身をもって体現する、感動的なステージだった。

この日は単に「BRAHMANのツアー・ファイナル」であるだけでなく、会場となった幕張メッセ9・10・11ホールのうち「11ホール」には、BRAHMANも参加する「東北ライブハウス大作戦」や「幡ヶ谷再生大学」、「NBC作戦(物資支援活動)本部」など震災復興支援のブースなどが設置され、その傍らには「東北ライブハウス大作戦STAGE」が設けられている。このステージに出演するアーティストのライブはすべて「投げ銭」制で、集まったお金は「東北ライブハウス大作戦」へ100%寄付されるーーというシステムも含めて、「ステージ対オーディエンス」の関係性を越えた、観客も一丸となって「作り上げる」ライブの空気感が、「東北ライブハウス大作戦STAGE」スタート間もない時間からごく自然と生まれていたのが印象的だった。

15時の開場からほどなくして、MOBSTYLES・田原104洋のMCのもと開演を迎えた「東北ライブハウス大作戦STAGE」。ステージ背後に先月急逝したbloodthirsty butchers・吉村秀樹の写真が掲げられた舞台に、同じく北海道の雄=outside yoshinoこと吉野寿(eastern youth)の“ナニクソ節”の熱唱と爆裂ギター・サウンドが鳴り響いて、いきなり胸が熱くなる。一組あたり20分程度のアクトではあるものの、渡辺俊美(TOKYO No.1 SOUL SET/THE ZOOT 16/猪苗代湖ズ)が“予定~富岡に帰ったら”“I love you & I need you ふくしま”といった楽曲のアコギ弾き語り越しに自らの故郷=福島県双葉郡富岡町への想いを圧巻のスケールで響かせたり、村松拓(Nothing's Carved In Stone)が“Sleepless Youth”“Red Light”といったNCIS曲からオアシスの“I'm Outta Time”までアコースティックでじっくり聴かせたり……といった名場面が凝縮されたような演奏が次々と展開されていく。

事前にアナウンスされていた出演者は、outside yoshino/渡辺俊美/村松拓/菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)/細美武士(the HIATUS)だったが、ここで飛び入りで高橋優が登場。「『ただ観に来るなら歌え!』とヴォーカルの人(TOSHI-LOW)から言われまして(笑)」と言いつつ、アレンジ&レコーディングにBRAHMANも参加した自らのシングル曲“(Where's)THE SILENT MAJORITY?”で熱いクラップを巻き起こしていた。そしてもう一組ーーSPC peak performance代表にして「東北ライブハウス大作戦」作戦本部長=西片明人氏の「飛び入りでもうひとり友達が駆けつけてくれました!」という紹介とともに登場したのはあの難波章浩! 彼が披露したのはたった1曲。でも誰もが愛した1曲。「東北に光を! もっともっと光を!」というメッセージとともに歌った“STAY GOLD”で、満場のフロアに高らかなシンガロングを巻き起こしていた。菅原卓郎は“カモメ”の麗しの旋律で会場を魅了しつつ、吉村秀樹の思い出とともに「酒が飲みたくなる曲・世界認定No.1」こと“ボラーレ”(田島貴男の日本語詞バージョン)を歌い上げてあたり一面クラップで包んでみせた。「東北ライブハウス大作戦STAGE」のラスト、「東北ライブハウス大作戦」の前掛けをつけて登場したのは細美武士。ビートルズ“Let It Be”から、ELLEGARDENの“金星”、さらにthe HIATUSの“Silver Birch”と曲を重ねていくうちに、会場には静かな熱気が満ちあふれていく。最後はなんと“Make A Wish”! 驚きと感激の声とともに、オーディエンスがシンガロングでひとつの輪を描き出していった。

「東北ライブハウス大作戦STAGE」終演後、メイン・ステージのエリアに入った瞬間に目にしたのは、おそらく誰も目撃したことのないようなライブ空間だった。『超克』のジャケットにも描かれた八角形のアートワークがプリントされた八角形の舞台を、スタンディング・エリアが取り囲む形の場内レイアウト。加えて、そのスタンディング・エリアを背後から見守るように、あるいはこれからステージに立つ4人に「己との対峙」を常に迫るかのように、8つの巨大ビジョンが用意されている。異様な存在感を放つ会場の雰囲気に、幕張メッセのざわめきと熱気は高まる一方だ。

BRAHMAN @ 幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール
そして18:19、暗転した会場で、8つのビジョンに浮かび上がる「相克」「2013.6.8」「幕張メッセ国際展示場」「超克 the OCTAGON」の文字! 怒号の如き大歓声の中、四方の通路から、あたかも格闘技のリングに上がるかのようにRONZIが、KOHKIが、MAKOTOが、そしてTOSHI-LOWがオン・ステージすると、その歓声はSEをかき消さんばかりに高まりーー1曲目の“初期衝動”のエクストリームなサウンドと、空をも突き破るほどのパワフルな絶唱で、メッセに渦巻くエモーションはあっという間に沸点を超えていく。冒頭に記したTOSHI-LOWのMCを挟んで、そのまま“賽の河原”“今際の際”と『超克』の楽曲を畳み掛けていく。“賽の河原”の歌詞と呼応して、オーデェンスの脳裏に焼きつけるようにビジョンに映し出される「鳴り響く」「ここに立つ」という言葉の数々。“Speculation”の4人の演奏風景を、素粒子のブリザードが覆い尽くしていくような映像効果。演奏とステージ・デザインと映像が一体となって、BRAHMANの真摯で凄絶な音楽世界をリアルに具現化していく。

誰にでもより強く、より深く届く音をーーカバー曲以外は全曲日本語詞で綴った『超克』を名盤にしていたのは何より、震災を経て己の在り方を根源から問い直したTOSHI-LOWの、そしてBRAHMANというバンドの、音楽家として/人間としての進化そのものだった。それがこの日の“遠国”など『超克』の楽曲からも滲んでいたし、“DEEP”“BASIS”といったこれまでの曲にもさらなる爆発力を与えていた。今なお命懸けで避難区域で任務に就く人たちの言葉をビジョンに映し出した“鼎の問”を、慟哭の如き切実な表情でTOSHI-LOWが歌った瞬間。ハードコアでエスニックでメロディアスなBRAHMANの高純度結晶体のような“露命”がメッセの空気もろとも僕らの頭と心を揺さぶった瞬間。“ANSWER FOR…”で舞台を降りたTOSHI-LOWが柵によじ昇って、オーディエンスに支えられて幾度も仁王立ちをしてみせた瞬間……それらすべてが強烈な思い出となって、観る者すべての胸に刻まれていく。

“PLACEBO”までほぼノンストップで披露したところで、「(ビジョンが)後ろから横から、観づらいっしょ? 『武道館でやればいいんじゃねえの?』とか『(ステージ)回んねえの?』とか言われんだけど……2000円で回るわけねえんだ! お前ら回れよ!」とスタンディング・エリア内で仁王立ち状態のままMCしてフロアを沸かせるTOSHI-LOW。その声を聞いて驚いた。あの絶唱は一体どこから出ていたんだ?と思うくらいにガラガラなのだ。ツアー終盤:札幌公演の後に体調を崩し、その後の中国~九州地方の公演の時から声がガラガラになってしまったらしい。「だけど俺は、その中で気づいたことがあって。今まで声が出るとか、歌が上手く歌えるとか、そんな手先口先ばっかでやってたことが、声が出なくなったことで、身体を振り絞って歌って、それでも声が出ねえ時は、身体じゃねえんだよ、心で歌うんだよって。ピンチの後にチャンスがあるんじゃねえ、ピンチを乗り越えていく中に、何か次の希望が来るんじゃねえかって」……観客はじっと聞き入っている。さらにTOSHI-LOWが語る。福岡公演の後、一足先に東京の病院に行ったTOSHI-LOWのもとに「機材車とメンバー車が事故にあった」と連絡があったこと。機材車が横転する大事故があったのが、この公演のたった5日前の出来事だったこと。「機材車もメンバー車も使い物にならないけど、乗ってた機材は今日、大きい音で鳴ってる。乗ってた3人は、ちょっとケガしたけど、無事で、生きていました」という話に、熱い拍手喝采が湧き起こる。

2011年11月、『2011 TOUR 「霹靂」 FINAL』の2,980円に続き、今回も「チケット代:2,999円+ドリンク代1000円(2ドリンク)」という破格の価格設定で開催された今回の『the OCTAGON』。「2年前、幕張に立たしてもらった時に、ガラにもねえことを俺は言っちまったんだ。今年ぐらいいいじゃねえ?って、利潤とか利益なんてどうでもいいじゃねえかって。ケンカしてるその手を止めて握手したっていいじゃねえかって。今年ぐらい、その悲しみに寄り添ったっていいじゃねえかって言ったの。で、『今年できるなら、来年もできんじゃねえ?』って。で、その次が問題だった。『その次の年もできんじゃねえ?』って言っちまって……大赤字をもう一回こきました」。場内がどっと沸く。そんなメッセの熱気が、「後悔なんか一個もねえ。持てるすべてのものを失って、その空いた手で俺は、ツアーで、幕張で、たくさんのお土産を持って、今から岩手県宮古市に行ってきます!」というTOSHI-LOWの言葉とともに、割れんばかりの大歓声に変わっていく。

「すべての同志、本日、晴天の……」というコールから“霹靂”へ流れ込み、全編クライマックスのようなライブがさらなる絶頂へと昇り詰めていく。スネアを叩き割る勢いで獰猛なビートを轟かせるRONZI。メッセの高揚感にでっかいうねりを与えていくMAKOTOのベース。しなやかに、鋭利に、美しく巨大な空間を彩っていくKOHKIのギター。そして、身体の熱量の最後の一滴まで振り絞りながら、超絶の剛性とエネルギーに満ちた歌でメッセを震わせていくTOSHI-LOW。「勝ったのか、負けたのかわかんねえ! でも、100回負けても、101回立ち上がるのが俺たち! BRAHMANはじめます!」という絶叫に導かれて叩きつけられたラスト・ナンバーは“The only way”。4人が舞台を去った後、暗転した会場で、ツアー中の写真とともにエンドロールがビジョンに流れてーー終了。およそバンドが表現し得る極限レベルにハードで、シリアスで、かつエモーショナルな場所が、そこには確かにあった。

「普通ツアー終わったら、打ち上げやって朝まで騒ぐんだけど、俺らは着替えて、そのまま行くから。俺たちの代わりに打ち上げ、一杯やっといてよ」とTOSHI-LOWも言っていた通り、休む間もなく翌日:9日に岩手県・宮古市魚市場隣接特設会場で開催される『POWER STOCK in 宮古 2013 ~三陸 NOT DEAD!! 宮古訛りは癖になる。~』へ向かったBRAHMAN。時代と向き合い、時代と闘い、己と対峙する闘士の姿に触れた約2時間。その姿を目の当たりにした自分はこの後どうするのか、傍観者でいるのか、手を差し伸べるのかーー幕張からの帰り道、そんな想いがひとりひとりの胸の中で抑え難く渦巻いていたに違いない。そんな力強いヴァイブに満ちた、最高の一夜だった。(高橋智樹)


[SET LIST]
01.初期衝動
02.賽の河原
03.今際の際
04.Speculation
05.Jesus Was a Cross Maker
06.遠国
07.THE VOID
08.BEYOND THE MOUNTAIN
09.DEEP
10.GREAT HELP
11.BASIS
12.SHADOW PLAY
13.空谷の跫音
14.鼎の問
15.ARRIVAL TIME
16.俤
17.露命
18.SEE OFF
19.GOIN' DOWN
20.最終章
21.ANSWER FOR…
22.警醒
23.PLACEBO
24.霹靂
25.虚空ヲ掴ム
26.The only way
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