the band apart @ Shibuya O-EAST

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6th album"街の14景"release live SMOOTH LIKE BUTTER TOUR

4月にリリースした6thアルバム『街の14景』を引っ提げたツアーの終盤戦の東京公演。ソールドアウトとあって、会場のShibuya O-Eastは2階までビッシリ埋め尽くされていた。そして薄暗くなると、大歓声の中、淡々と4人が登場。薄暗いままで、『街の14景』でもオープニングを飾っていた“いつかの”を鳴らし出す。優しい歌声と音色だけが響き、オーディエンスはさっきまでの大歓声を熱い視線に代えて、じっと聴き入る。バンアパは、本当にいいオーディエンスに恵まれているなあ、としみじみ。演奏が盛り上がっていくと同時に明るくなっていき、ピカッ!と眩しくなると“ノード”へ突入。特別な演出はないのに、音と照明というシンプルな要素だけで、十二分にドラマティックだ。川崎はギターを刀みたいに激しく振り下ろし、会場の温度を上げていく。続く“coral reef”は聴き馴染んできたナンバーということで、フロア前方の密集度は俄然アップ。2階にいても、汗が噴き出してくるほどの熱気だ。原は「……凄い人ですね。不思議な気分です。学校行事で言うと晒し者ですよ」という彼らしい感想から、卒業ライヴでメガデスを演奏した時に、ザッカザッカ刻んでるのに優しさの拍手が返ってきたという、複雑な青春の1ページを吐露していた(笑)。

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かなり懐かしいはずなのに新鮮に聴こえる“Fool Proof”で、やっぱりオリジナリティがある曲は古びないんだなと感心しているうちに、“higher”、”“12月の”という絶妙な曲順で、オーディエンスはさらにヒートアップ。ライヴで聴くのが楽しみだった“仇になっても”と“ARENNYAで待ってる”も立て続けに披露され、原が手掛けたエグさもある歌詞を口ずさみながら、手を挙げて盛り上がっているオーディエンスを見て、このバンド、改めて面白いことになってる!とワクワクしてしまった。さらに、生の醍醐味に痺れた“black”、ミラーボールが回りハンドクラップが起きた“light in the city”と、ライヴ映えする楽曲が続く。

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ここで、まさかの展開が。今まであまりMCをしてこなかった木暮がおもむろに語り出したのだ。「我々30代ですよ」という言葉を皮切りに、15歳の時に友達が東京ドームで行われた巨大ジュリアナ東京に行っていたこと、その入場券が封入されていたCD(ちなみに、『エイベックス・レイブ’93』です)を自分も持っていたことを明かし、ジョン・ロビンソン(「ジュ~リ~ア~ナ~、トーキーオー!」という叫びで世を席巻したDJですね)風のイントロから、そのCDに収録されていた唯一の日本人アーティストであるtrfの“ez do dance”を熱唱するという、弾け過ぎた状況に! しかも、オーディエンスも完全に付いていく。みんな30代越えしているのか!?(笑)。荒井は「ギターを扇子にしそうになった(笑)」と言っていたが、バブル期に少年時代を過ごした30代の世代感が赤裸々になった時間だった(笑)。
いきなり真面目なモードに入るけれど、この木暮の弾けっぷりも、『街の14景』に繋がっていなくはないと思う。というのも、『街の14景』は、全員が作詞作曲を手掛け、しかも日本語詞で、それぞれの個性を露わにした作品だったからだ。今まで伝わっていたメンバーも、伝わりづらかったメンバーもいると思うけれど、基本的にバンアパは4人ともずば抜けたキャラクターの持ち主。それが今作のリリースツアーで炸裂するのも、必然なのかもしれない。

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意外にもバンドにとって初のインスト曲“師走”でもしっかり踊らせると、そろそろライヴはクライマックスへ。荒井は「また秋になったらツアーします!」と嬉しい告知をし(そう、今回のツアーは、名古屋や大阪といった大都市が入っていなかったのだ)、彼もまた「メタリカのコピーバンドをやっていた」と振り返って、一瞬だけ“Enter Sandman”を弾いていた。期せずして、今日は人に歴史ありと感じる場面が多い(笑)。あとはもう、盛り上がるだけ。“photograph”まで畳み掛けて、荒井の「みんな、次に会う時まで元気で」という言葉から、温かく染み入る“8月”でライヴを締め括った。

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客電が点き、BGMが流れても、止まないアンコール。再び4人が現れ、荒井が「このツアーに何回も来てくれている人はわかると思うけれど」と、東北ライブハウス大作戦のブースがあることを説明。「TOSHI-LOWさんみたいに、飛び込んで話せたらいいけど」なんて言っていたけれど、不器用だけど真っ直ぐな言葉からは、彼らが如何に被災地のことを思っているかが伝わってきた。そして、“明日を知らない”、“Eric.W”と演奏し、完璧なフィナーレを迎えた。

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……かと思いきや! まだ帰りたくないオーディエンスの前で、木暮がマイクを握る。ドラムを荒井に託し、「mouse on the keysがWアンコールでいいカバーをしていて、それをやりたい。出来ればみなさんも参加して欲しい」と呼び掛け「声出せない人はパン(手を叩く)。声出せる人は、ソイ!」と言い、「1、2、1234!」というカウントのもと、「ソイ(パン)!」という一瞬の演奏を披露し、嵐のように去っていった(笑)。信頼と安心の聴き応えの中に、不意打ちで刺激をぶっ込む。それこそがバンアパなのかもしれない。心の底から楽しませてもらった!(高橋美穂)
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